第11話 不和
「ギガースゴブリン?」
「あ、あぁ。ゴブリンの変異種で、神に逆らいし巨人族の尖兵言われているモンスターだ。なんでこんな浅い所に…」
「おい!ビビってんじゃねえ!くるぞ!ヘイトをとれ!」
ハルトがディミトリに叫んで指示を出すもディミトリの動きが遅い。そもそも、ギガースゴブリンが手に持つ丸太のような巨大な棍棒は、大剣を持つ丸太でさえ無傷で受けられるとは思えなかった。
「い、いや、アリストとハルトで隙を作ってくれ!」
ディミトリがようやく指示を出すも、のそのそと近づいてきたギガースゴブリンが、先頭に立っていたハルトに向かって棍棒を振り下ろす。
左に転がりながら何とか回避し、振り下ろされた腕を神剣で斬りつける。しかし、ギガースゴブリンは一瞬体を震わせただけで、動きを止めることはなかった。
(麻痺が効かない!?い、いや剣に込めたプラーナが弱すぎたか!もう一度集中しないと!だがそんな隙は…。こ、こうなったら魔法を使うか?だが音に反応して他のモンスターが集まってくるかもしれない。あいつらは使い物にならんし、どうする・・・こうなったら!)
ハルトはギガースゴブリンが次の攻撃を繰り出す前に、ディミトリに向かって駆け出す。それを追いかけるようにしてギガースゴブリンも前に出て棍棒を横薙ぎにはらう。
「ハ、ハルト!なにを!?」
困惑するディミトリをよそに、ハルトは走る速度を上げて棍棒の射程から逃れるが、棍棒が届く位置にいたディミトリは、とっさに大剣を盾にするものの、威力を殺しきれずに吹き飛ばされる。
「ディミトリぃ!」
ヒーラーのイアソンが慌ててディミトリに駆け寄り回復魔法で傷を癒す。
だが、ディミトリとイアソンを次の標的に定めたギガースゴブリンは2人に向かって更に棍棒を振り下ろした。
左右に転がりながら何とか棍棒を回避する2人だったが、無理な動きをしたイアソンは足をくじいたようだった。
アリストがギガースゴブリンの気をそらそうと、ナイフを投げつけるが、わずかに傷を付けるのみで、ナイフは刺さらずに弾かれた。
アリストを無視し、動けないイアソンに向かって棍棒を振るうギガースゴブリン。
ディミトリがかろうじて大剣を盾に間に入り込み、棍棒の軌道を逸らすも、衝撃を殺しきれなかったのか、叫び声を上げてうずくまる。腕が折れたようだ。
イアソンは自分の足を魔法で癒し、ディミトリの腕にも魔法をかける。しかし、そんな隙を許さないギガースゴブリンが続けて棍棒を振るわんとしている。
アリストは奇声を上げながらギガースゴブリンの背後から飛びつきナイフで頭部を攻撃しようとしたが、左腕を振るったギガースゴブリンに弾き飛ばされる。
「アリスト!!イアソン、アリストの回復を!」
ディミトリは大声を上げてギガースゴブリンを威嚇し、ヘイトを取ろうと大剣を振り回す。しかし、アリストを回復すると、イアソンの魔法は打ち切りとなり、次に誰かが怪我をすると即座の回復は不可能になる。
ディミトリの瞳に絶望が宿映った。
その時、神剣にプラーナを込め直し背後に回っていたハルトがギガースゴブリンの背中を斬りつけた。ギガースゴブリンはビクッと体を震わせて膝を付く。下がった首に向かってハルトが神剣を振り下ろし、ギガースゴブリンの首を落とした。
光の粒になって霧散していくギガースゴブリンの傍らで、ハルトも膝をついて息を整え、ギガースゴブリンがいた場所に落ちている、ゴブリンのものより二回りほど大きく赤い魔石を拾った。
ハルトは魔石を革袋に入れ、ディミトリに声をかける。
「無事か?」
「あ、あぁ。助かった。」
「あっちも大丈夫だったようだな。」
イアソンの回復が間に合い一命を取り留めたアリストが、イアソンに肩を借りながら近づいてくる。
「ハルトくん、た、助かったよぅ。」
イアソンは弱々しくも微笑みを浮かべながらハルトにお礼を言う。しかしアリストは、怒りの表情を隠さずにハルトを非難し始める。
「助かったのは事実だが、コイツが最初に攻撃をディミトリになすりつけたから後手に回ったんだろうが!」
アリストはハルトがディミトリの方に攻撃を誘導し、自分がフリーになるよう動いたことを見逃していなかった。アリストはディミトリの最初の指示通りハルトと自分がヘイトを取り、攻撃を回避しながら隙を作ればディミトリの攻撃でギガースゴブリンを討伐できると考えていた。
しかしそれを無視したハルトがディミトリにヘイトを押し付け、攻撃を受けたディミトリをイアソンが回復するという流れになったことで、ジリ貧になってしまった。
「まぁまてアリスト。ここで口論するのは危険だ。急いで引き揚げてギルドにギガースゴブリンのことを報告しなくてはならん。」
ディミトリが怒るアリストを諌め、森から撤退する4人。その後、誰一人として言葉を発さず、コリンへと帰り着くのであった。
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