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RE:GEN  作者: pochi.


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Stufe 5: Axt

カクヨム掲載作品です。




 ミゲルは月光の下に鎮座する山小屋と、そのポーチに立つレーゲンを見上げながらゆっくりと立ち上がった。膝や肘、頬についた擦り傷、額や服についた砂を払うことなく、そのままレーゲンの次の言葉を待った。


 彼が手にしているのはペーパーナイフだが、そう表現するにはいささか心許ない小ぶりな物だ。レリーフのはめ込まれた柄は短く、優雅な曲線を描く刃の部分は丸みを帯びている。ほとんどレターオープナーとしての役割しか果たせないのは明白で、素手のレーゲンに対して武器として使ったとしても勝てる見込みはない。そんな物を握りしめ、怯えながらもしっかりと瞳を向けてくるミゲルに、レーゲンは妖しく微笑んだ。


「威勢が良くて結構なことだ、ミゲル。──それならこの先の恐怖にも立ち向かえるんじゃないか?」


 そう言ってポーチの段差を上がり、ノブを見せ付けるようにしてドア脇に立つ。ミゲルはライトを拾い上げると、その箇所を照らした。


 小屋は先刻の家とは違い、単純な木製の小屋だ。分厚い木の板を横に積み上げたような壁と、木の支柱にトタンを被せたような三角屋根。ドア枠やドアも全て木製だ。奇妙なのは窓が見当たらないことと、木板を縦に並べた造りのドアが、さらに木の棒でクロス状に補強されていること。見るからに閉鎖空間でしかない状態は、資材置き場として使われているのだとすれば問題無いが、部屋があるのだとすれば異常だ。ドアには錆びた金具の掛金が取り付けられていたが錠前は無く、ノブを通す形で紐が結ばれ、施錠されていた。


「この小屋にはな、いくつか部屋があるんだが──一番奥が作業場になってるんだ」


 レーゲンは紐を弄びながら呟くように言った。


「お前にはその作業場に行ってもらう。……そこで、お前が俺の仲間にふさわしいかどうか判断する。お前が俺に強さを誇示出来たなら、俺はお前という存在を認めてやる」


 紐を手放し、今度はポーチの手すりに両手をついてミゲルを見下ろす。そんなレーゲンを見上げるミゲルは、まるで挑戦者のようだった。


「ただ、作業場の鍵は部屋のどこかに隠されてる。だからお前はまずそれを手に入れなきゃならない」


 レーゲンが段差をゆっくりと降りる。そして柱に寄りかかると、腕を組んだ。


「──だが、気を付けろよ。さっきも言ったが、コイツは本物の”ゴーストハウス”だ。俺なんかよりずっと恐ろしいゴーストどもが昼夜出歩き、意味不明な呻き声を上げてる。それこそ──気が滅入るほどの、な」


 ミゲルのライトを持つ手が一瞬震える。ブレた光を一瞥し、レーゲンは更に続けた。


「お前がその恐怖に打ち勝って鍵を手に入れ、作業場に行ってからが本番だ。──俺は秘密の入り口を知ってるから、作業場で待ってるよ。……もちろん俺が消えた後逃げてもいい。そうしたいならそうすればいい。出来るもんならな」


 そう言って、じっとミゲルを見据える。その瞳をゆっくりとドアに向け、ミゲルを促す。まるで操られるかのように、ミゲルはレーゲンの脇を通り過ぎ、ポーチの段差を上がった。


「紐は、そのナイフがあれば切れるだろ。──それと、鍵の隠し場所も……そのナイフで開けられるはずだ」


 背後にレーゲンの声を聞きながら、ミゲルは紐にナイフの刃をかけた。それを強く何度か行き来させると、古びた紐が解けて床に落ちる。ミゲルはゆっくりと掛金を回した。


「幸運を、ミゲル。──奥で待ってるぜ」


 施錠を解き、ドアノブに手をかける。力を込めて握り、ゆっくりと手前に引く。建て付けが悪いのか蝶番が震え、ひどく軋んだ。思い扉の向こうには、光など一切ない深淵がぽっかりと口を開けていた。


 ミゲルは固唾を飲んでライトを構え、ゆっくりと内部へと身体を滑り込ませる。──中に入ると、重い音を立ててドアは閉じられた。





 ミゲルがライトを前方に向けると、真っ直ぐに伸びる細い廊下と、その先のドアが白い光に照らされた。ドアノブの下には錠前のようなものも見える。これからミゲルはその鍵を探すのだ。


 その他、右手の壁には一枚、左手の壁には二枚の扉がある。床も天井も壁も、飾り気の一切無い木製だ。木板の向きだけが異なる景色が、意図せず閉鎖感を演出していた。


 背後で小さな音がして振り向くと、ドアには真鍮の枠に嵌め込まれた楕円形の壁掛け鏡がライトの光を反射させる。ドアノブに触れて扉を押そうとするも、動きが阻まれる。どうやらレーゲンが外の掛金を回したらしい。ミゲルは小屋の中に閉じ込められたのだと悟った。


 壁を手で伝いながら慎重に足を進める。乾いた泥の跡が残った床がひどく軋み、恐怖を助長する。ミゲルはまず右のドアに手をかけ、ゆっくりと扉を押した。


 中に入ると、そこはダイニングチェアが二脚と、丸テーブルが中央に置かれただけのリビングらしき部屋だった。左手には簡易的なキッチンもある。小さな冷蔵庫もあるが稼働していないのか、室内は無音だ。コンロはカセットコンロで、中のガス缶は抜かれたままとなっていた。


 テーブルの上には、古く蝋燭の溶けきったランタンと、色褪せた新聞が無造作に乗せられていた。恐る恐る近づき、音に注意を払いながら古びた紙を開く。レーゲンが追ってこないことは分かっているはずなのに、ミゲルは布擦れの音にすら気を遣っていた。


 光にかざすと、それがサンクレスト・クルーズの地方紙であることが分かる。派手な見出しや写真付きで掲載されている特集記事など、何の変哲もない過去の新聞だ。日付は一年以上前となっている。しかしミゲルは不自然に折り込まれたページを発見し、次にそこを開いてみた。


 折れ目の入ったページには広告の文字や写真が並べられていた。片隅の、赤いペンで囲まれている部分が目に留まる。顔を近づけて目を凝らせば、それは小さな文字で記された”行方不明者リスト”だった。



 ジョセフ・マイヤーズ(51) ボードライン・パーク

 カレン・ベネット(21) セントラル広場裏手

 トミー・グリーン(18) ローワン通り

 メリッサ・サンダース(27) ハリソン地区

 デイヴィット・ハンソン(40) サンドキャッスル・ビーチ付近

 テオドール・ロペス(18) クリフサイド・ネスト付近



 名前と年齢、最終目撃地だけが淡々とリストアップされた小さな記事だ。その文字を目で追いながら、ミゲルは脳内にある記憶を呼び起こしていた。──書斎で見つけた手帳の名簿だ。しかし、新聞に載っているリストより手帳の名簿の方が人数は多かった。何より、手帳ではヒントとして印のつけられた数字がこのリストには無い。


 ミゲルは思わずその文字を凝視した。意識に靄がかかり、視界が不自然に揺らぎ始める。息を止めた瞬間、耳鳴りが鋭く鳴り響く。──ガタンと大きな音。感覚が一気に現実に引き戻され、肩が大きく跳ね上がる。音の方を振り返ったミゲルは、その目を見開いた。


 白い靄の塊が、キッチンの片隅に佇んでいた。煙のように輪郭が曖昧だが、それが人の形をしているのは分かる。壁にもたれるでもなく直立し、首だけを垂れた姿。その静止した姿を見た瞬間、ミゲルの背に氷のようなものが走った。


 震える手がライトを落とす。床で鈍い音が鳴るとともに光が跳ね動き、拾い上げて再び靄を照らそうとするも、そこにはもう何もいない。ミゲルは荒くなる息を押さえ、ゆっくりとキッチンの方へ歩を進めた。


 乾ききったシンクには汚れたままの皿とカトラリーがいくつか放置され、虫がその表面を這っている。コンロを通り過ぎ、冷蔵庫のドアを開くと、鼻を突く異臭が広がった。


 食べかけのポテトサラダ、半分残ったローストチキン、開封済みのマスタード瓶、切りかけのパン、ラップで包まれたチーズ──どれも時間を経て白く曇り、腐敗の色を帯びている。最下段にはケーキの箱があった。開けると、チョコレートケーキが黒ずんで崩れ、甘さと腐臭が混ざり合った匂いを放つ。


 異臭に顔を顰めながら、ミゲルはドアポケットに目を向けた。下段には、気の抜けた炭酸飲料のボトルが二本。風邪薬や胃薬の瓶も乱雑に押し込まれている。上段には腐った果物の欠片。白く膨れた表面に、どこからか湧いた虫が群がっていた。


 異臭が限界となったミゲルは、そっと冷蔵庫の扉を閉じる。その背後から、木の軋む音が微かに鳴る。無意識に振り返れば、今度は椅子に座って向かい合う、白い靄の人型が見えた。


 ──じっと座って動かない靄は、顔だけはミゲルを見ていた。判然としない輪郭に、何故か二つの目だけが浮いているのが分かる。こちらに背を向けて座っている靄も首だけはぐるりとミゲルを向いていて、その瞳は真正面に彼を捉えている。


 ミゲルは痛いほど粟立つ肌を感じながら、咄嗟にライトを向けた。すると、靄は煙のようにすっと姿を消していく。──あれが、レーゲンの言っていた”ゴースト”なのだ。ミゲルは理解し、身震いする。


 殺風景なリビングも、薄汚れたキッチンにも目ぼしいものは無い。ミゲルは恐怖も手伝って、早々にそう判断した。テーブルを警戒しながら視線を外さないように、ゆっくりとその部屋を後にした。




 廊下に出た瞬間、奥から脳に反響するような叫び声が響いた。驚いて振り向くと、奥から靄がこちらに向かってくる。まるで手を伸ばし、襲いかかるような輪郭に、ミゲルは咄嗟にポケットから取り出したナイフを振る。


 ミゲルのナイフは靄に対して空を切った。しかし確実に煙は拡散し、甲高い金属音のような絶叫を響かせて闇に溶けていく。慄きながらも向かいのドアに飛びつくと、制御の効かない震える手でドアノブを押し下げた。


 そこは、どうやら寝室のようだった。奥の壁に、シングルベッドが一台。シーツは乱れたまま、放置されている。側にはベッドサイドチェストと、薄汚れたシェードのランプ。どれも埃を被り、白い衣を纏っているようだった。ベッドの足元にはシンプルなハンガーラックが置かれ、作業着やジャケットがハンガーに掛けられている。ジーンズなどはそのまま無造作に引っ掛けられているだけで、どの服も色あせて見えた。


 白い靄に怯えながら、ミゲルは慎重に中へと足を踏み入れる。いちいち軋む床が彼の恐怖を助長する。まるでこの小屋には彼以外の人物が存在していると、家自体が囁いているような気分だった。


 ミゲルはチェストに歩み寄り、三つの引き出しを慎重に開いていく。木の擦れる重い音とともに埃が舞う。咳き込むことを恐れ、ミゲルは息を止めながら探索を進めた。


 ふと、閉じたドアの向こう──廊下を歩く重い足音が聞こえた。近づいてくるそれを警戒し、ミゲルは慌ててハンガーラックに掛けられた服の下に潜り込む。だが、いくら待てども足音は消えない。まるで廊下が永遠に続いているかのように一定に、足音は床板を鳴らし続けているだけだ。ライトを消し、暗闇の中で膝を抱えていたミゲルはベッドに手をついて立ち上がり、身を乗り出してドアの様子を見ようとした。


 ──その時、不意にベッドに着いた手を急激に引かれ、ミゲルはシーツの上に倒れ込んだ。埃と古びた布の匂いが鼻を刺激する。掴まれた手首の感触は明らかに人だ。動転しつつも暗闇の中辺りを見渡すと、二つの目だけが浮かび上がり、ミゲルを見ていた。──息を呑み、そして止める。その瞳は布擦れの音とともに、ぼんやりと浮かびながらミゲルに近づき始めた。


 同時に何か音が聞こえる。それは声のような音だ。女性のものにも聞こえる。唸るような、空気のように喉からただ漏れ出すような、そんな……声のような音だ。ミゲルは叫びたくとも、喉を引きつらせることしか出来ない。なけなしの力でライトを点けて瞳に照らすと、そこには乱れたシーツの乗ったベッドだけが映され、瞳は忽然と存在を消していた。


 ここにはあらゆる場所にゴーストが潜んでいる──ミゲルはそう、確信した。唐突に現れ、まるで悪戯のようにミゲルにその存在を告げている。闇に潜んだ残留思念なのか、それとも通りすがりの魂なのか、ミゲルには想像もつかない。だが亡霊を感じるたび、ミゲルの心の奥底には何かしらの罪悪感が湧き上がった。


 ベッドから足を下ろし、シーツの上を警戒しながら距離を取る。足が無意識のうちにどんどん遠ざかり、部屋の壁に背中が当たる。すると、今度はリビングの方から楽しげな旋律が、空気を震わせて部屋の壁をすり抜けてきた。音が皮膚に触れた瞬間、ミゲルの体は無意識に硬直した。


 ミゲルも聴いたことのある歌だ。雨の中ステップを踏むように、幸福を紡ぐ歌──痛んだレコードが奏でる少し歪んだ、陽気なメロディ。ミゲルは驚きつつもドアに耳を付け、その音に聴き入った。


 歌とともに、グラス同士が当たる音、カトラリーが擦れる音、歌とは違って判然としない、篭った話し声──まるで扉の先で、小さなパーティが開かれているかのような音がする。ミゲルは恐る恐る寝室のドアを開けた。


 リビングのドアの隙間から、暖かい光が漏れていた。ランタンの炎の灯火が揺れているのか、オレンジ色の光はゆらゆらと揺れている。それを時折影が遮り、中に誰かがいることを物語る。


 歌が終わると雑音が入り、また始めから同じ歌が繰り返される。その間、性別も年齢も分からない老若男女入り混じった笑い声が響く。暗く冷たい廊下とは相反した世界を想像し、惹かれ、ミゲルは思わずドアノブに手を掛けた。


「来るな」


 地響きのような音だった。人の声とは言い難いが、人の言葉を喋っている──そんな、悪魔のような音。突然明確に下された命令に、ミゲルの手がピタリと止まる。途端に湧き出す冷や汗と激しい動悸に、ミゲルは困惑した。


「そこから出るなと言ったはずだ」


 悪魔の声は尚も言った。部屋から聞こえるのではない。それは直接頭の中に響いていた。その証拠に、リビングの声は止んでいない。ミゲルは楽しげなパーティから後退り、胸を押さえて廊下の奥に目をやった。


 廊下が視界の中でぐにゃりと曲がる。そしてミシミシと音を立てながら奥の扉が瞬く間に遠ざかる。──錯覚だ。明らかに現実ではない。そう、頭の片隅では理解しているものの、ミゲルの足は曲線に沿って進む。不思議なことに、たった数歩歩けば辿り着けるはずだった寝室の隣の部屋すら遠ざかっている。


 床が波打ち、ミゲルの歩を阻む。壁に手をつき、ライトを必死に前方へ向けながら不安定な床を一歩一歩踏みしめる。遠ざかっているはずのリビングの歌は廊下中に反響し、ミゲルはまるで、自分が雨の中スキップでもしているかのような錯覚を覚えた。


 ざあざあと鳴るのは雑音なのか雨なのか──歌と混じり合っていた異音は進むごとに酷くなり、ミゲルの意識を霞ませていく。それでも進まなければならない──葉を食いしばって足を前に出す。しかし、唐突にその足首を誰かが掴んだ。


 つんのめりながら振り返ると、またあの白い靄だった。煙のように空気に揺蕩っていたそれが、次第にシルエットを象っていく。うつ伏せに倒れ込み、地面を這うようにして片手を伸ばし、ミゲルの足を掴んでいる。思わず足を上げようとするも、縫い付けられたように動かない。ミゲルは痛いほど心臓が跳ね動き、喉を削りながら激しく呼吸するのをどこか遠く感じていた。


「……ど うして……待っ て……」


 リビングから聞こえたものと同じ不自然な音程の音が、ミゲルを引き止める。ミゲルは弱々しく首を横に振り、ひたすらに声に争った。


「……お は、……すて ……か……」


 足を引き、首を横に振り続ければ、声は段々と雑音に変わる。ついには靄が煙のように消え、ミゲルは解放される。すると突然すべての音が消えた。雨のような雑音も、レコードの歌や笑い声も、──息の音さえも。空気が一変し、乾いた木の香りが漂う。顔を上げればそこは寝室を過ぎたあたりの廊下で、リビングから漏れる光は幻のように消えていた。

 

 今のは何だったのか……? ミゲルは呆然と辺りを見回すも、そこには元より存在した暗い廊下しか見ることが出来なかった。変わったのは、ミゲル自身なのだ。屋内を進むにつれ幻覚や幻聴が増してゆき、それとともに恐怖や罪悪感も増していく。それゆえに、同じ廊下であるはずなのに、時間が経つほど恐ろしい場所に変化しているのだ。


 ミゲルは逃げるように次のドアへと飛びついた。錠前の付いていない最後のドアだ。震える手でノブを引こうとするも、その手が硬直する。まるでノブが氷で出来ているかのように冷たく感じ、そこから指を伝って全身に冷気が行き渡る。身震いすると、再び脳内にあの声が響いた。


「何をしてる」


「どうして言いつけを守らない」


「お前もああなりたいのか?」


 反響する悪魔の声。背中や額に汗が滲み、それが冷えてさらにミゲルを震わせる。声は壁に反射して形を変え、どこから響くのか分からない。まるで小屋そのものが喋っているかのようだ。ミゲルは脳内で、「嫌だ」と悪魔の声に何度も抵抗した。代わりに必死に首を横に振る。水中で酸素を求めるように、口だけが虚しく開閉する。耐えきれなくなったミゲルはノブから手を離す。──すると、その苦しみは嘘のように消え去った。


 いつの間にか落としていたライトを拾う。ドアを照らすも、そこにはただ、他の部屋と同じ木製扉があるだけだ。息を整え、ミゲルはポケットからペーパーナイフを取り出して右手に握りしめる。そしてその手で、もう一度──ドアノブに触れた。


 ドアノブは硬く、金属の耳障りな音が空間を刺激する。それに加えてドアも他より一層建て付けが悪いのか、まるで叫び声にも似た音を立てる。少しでも音が響かぬよう、ミゲルは殊更ゆっくりとドアを開く。隙間から籠った匂いが漏れ出る。今まで薫っていた木の匂いではない。明らかにそれを覆い隠すような、”人の匂い”だった。


 息を止め、意を決して更に扉を押し、まず部屋の内部にライトを入れる。白いライトが当てられた先にあったのは、壁を多い尽くす”物”だ。奥の壁に向かって設置された木製のデスクセット、別の壁に沿って置かれた本棚。デスクの前には大きな地図の貼られたボード。その他、空いている壁は古びた上着やバッグ、帽子、ベルトなどの小物で埋め尽くされている。


 恐る恐る足を踏み入れる。無人であるはずなのに人の気配を感じる、不気味な部屋だった。デスクにはランタンが置かれているが、中身は空だ。自分の持つライトしか光源が無いことに今更ながら絶望を感じつつ、ミゲルは周囲にゆっくりと光を回した。


 まずドア付近の壁を眺める。フックに吊るされた皮のジャケット、ブルゾン、カーディガンなどの衣類、数々の帽子やバッグ、そしてベルト──それらは整頓され、展示のように並べられている。どれも着古されたり、使い込まれた物だ。そのひとつひとつから体温の抜けた布の匂いが漂い、それが入り混じってこの部屋の籠った空気を作っているのだ。物が吊るされた壁はペンキで彩られ、カテゴリーごとに色分けされている。そのペンキの匂いまで漂ってくるようで、ミゲルはナイフを持つ手の甲で鼻を押さえながらデスク周りへと光を移した。


 デスクには年季の入ったペンが一本と何枚かの新聞。ランプの傍には瓶に入ったピン。デスク前の壁に貼られた地図はサンクレスト・クルーズの地図で、瓶に入っているものと同じピンがいくつかの場所に刺さっている。椅子の背もたれには埃を被ったハンティングジャケットが掛けられていた。


 ミゲルは何故か逸る思いで本棚へライトを定める。本棚には色とりどりの背表紙のノートとスクラップブックが整然と並んでいる。それに紛れてろくに触れられていないような古いポラロイドと、現像に失敗した写真が黒、白、赤、と無造作に放られていた。


 手作りの家具に収まっている物以外の全ては、デザインもサイズも異なっている。まるでデスクに座っていた部屋の主が、すべての物を支配している──そんな場所だった。同時にこの部屋には、今まで訪れたどの部屋よりも”人間”を感じる──異空間のようにも見える。


 壁を埋め尽くす服や小物のせいか、あらゆる場所から視線を感じる。まるで部屋中の物に見張られているような圧迫感がミゲルを襲う。冷気が背中を通り過ぎていく。──それは、誰かがすぐ後ろを通り過ぎたような気配にも似ていた。


 また重く音を立て始める心臓から気を逸らし、ミゲルはデスクへと歩み寄る。だが突然、耳元に生暖かい気配を感じてその足をすぐに止めた。


「何しに来た」


 耳元で囁くのが誰なのかわからない。そして振り向けない。何故なら、肩の上に顎を乗せられているような近さなのだ。息が耳にかかるはずなのにそれはなく、声だけが、耳の奥に直接落とされた。少しでも動けば何かに触れてしまいそうだと恐れつつも、「それは不可能だ」とどこかで認識している……ミゲルの脳は矛盾を抱え、身体への命令を停止していた。


「裏切り者」


「全て見捨てたのに」


「今更何しに来た」


 次々に耳元で囁かれる静かな糾弾に、ミゲルの手が震え始める。ライトがブレて、目眩でも起こしているような錯覚に苛まれる。するとまた、視界の端から靄が発生し始める。今度は人を象るでもなく、ただ部屋に漂う冷気のように、ミゲルの視界を徐々に白く染めていく。部屋の角からじわじわと形が失われ始める。


「──お前だけ逃げたくせに」


 そう囁かれた循環、ミゲルは前に足を踏み出して振り返り、目をきつく閉じたままナイフを振った。肩の気配は霧散し、声は空気に溶けていく。視界に映る異常は壁や床、天井を這う白い靄だけのはずなのに、ミゲルは確実に幾人もの視線を感じた。それは監視の目では無く、蔑みや非難の目だと、直感する。


 ミゲルは踵を返すと、デスクに飛びついた。焦って手を滑らせながらも引き出しを乱暴に開けていく。衝撃でデスクの上の新聞が何枚か床に落ちるが気にも留めず、ミゲルは一心不乱に引き出しを漁った。


 整然と並べられた財布やポーチなどが入った引き出し、指輪やネックレス、時を刻むのを止めた腕時計などがそれぞれ収められたジュエリーケースが入った引き出し──勢いよく開けても乱れひとつなく収まったそれらは、ミゲルの目的の物ではない。レーゲンはナイフを使って鍵を手に入れるのだと言った。今見た物は当て嵌まらない。


 一番上段の引き出しを開けた時、ミゲルの目は見開き、動きがピタリと停止した。流れるように手前に飛び出してきたのはスティックのりとレターセットだった。女性物のような花柄のデザインの便箋と、シンプルな単色の封筒。白を基調としているが、色づけされた部分は全てロータスピンクだ。使われないまま色褪せたようなそれらに、一枚の閉じられた封筒が混ざっていた。ミゲルの瞳はその封筒に吸い込まれ、操られるかのようにそっと手に取る。紙の厚みと、何か堅い物の感触が手に伝わり、固唾を飲んだ。


 圧迫感や視線が一気に遠ざかる。ミゲルはデスクにその封筒を乗せると、そこに光が向くようにライトもデスクの上に置く。そして、まるで儀式でも開始するかのようにナイフを構えた。


 のり付けされた、乾き切った封筒の隙間に薄いナイフを入れ込み、徐々に剥がしていく。それが終わると、薄くなって縒れた縁を摘み、封筒を開く。中には一枚の便箋と──小さなシリンダーキーが入っていた。ミゲルがそれらを取り出すと、微かな花の香りが彼の鼻腔を控えめにくすぐった。


 便箋を開くとそこには、とある場所のアドレスが書かれているだけだった。美しくは無いが、一文字ずつ丁寧に書かれたようなアルファベットが並んでいる。同封されたシリンダーキーは所々変色していて、小さく短い凹凸部分は心許なく見えた。


 ミゲルは鍵だけをポケットに押し込むと、ライトとナイフを手に取った。ゆっくりと背後を振り返るが、靄も視線も圧迫感も、いつの間にか消えている。部屋の匂いがさらに濃くなり、思い出したように手の甲で鼻を塞ぐ。夜の静けさと冷えた空気が肌に蘇り、ミゲルの足は床板を軋ませながら部屋の出口へと向かった。


 再び廊下に出るが、今度は怪しげな音も……幻覚や錯覚も現れない。ただ殺風景で暗い廊下が左右に伸びているだけだ。埃が揺蕩う中で深呼吸をし、ミゲルはとうとう最後の扉──レーゲンが待つと言っていた”作業場”へと一歩を踏み出した。


 廊下の奥、待ち構えるようにも立ち塞がっているようにも見える、錠前の付けられた木製扉。一見何の変哲もない境界の先にあるのは、果たして聖域なのか奈落なのか──ミゲルにはまだ分からない。


 ふと、扉まであと数歩というところで、玄関扉の開閉音が鳴った。驚いて振り向くも、そこには誰もいない。ライトを向けながら安堵の溜息を吐きかけたミゲルは、扉に取り付けられた鏡の中を見ると瞠目した。


 薄い、半透明のシルエット。人の背中だ。ゆっくりと、奥へ──歩いている。ミゲルの視界には彼に向かってくる影はない。だが、鏡の中の”それ”がミゲルの横を通り過ぎるとすれ違いざまに空気が揺らめき、ミゲルの体に緊張が走る。振り向くことも出来ないまま鏡を凝視していると、”それ”は作業場の扉へと吸い込まれるように姿を消した。


 そこでようやく四肢の感覚を取り戻したミゲルは振り向き、頭を振り、後ずさろうとする足を叱咤して踏みとどまる。奥の扉まで駆け寄ると焦ったようにポケットにナイフを収め、代わりにシリンダーキーを取り出して乱暴に鍵穴に差し込んだ。


 掛金から外れた錠前が床に落ちて鈍い音を立てる。ゆっくりとそれを回し、繋ぎ目を解除する。遮るものの無くなった扉は難なく開くはずだったが、ミゲルは一際重く感じるノブを引き、自らの心臓の鼓動に合わせ、慎重に扉を押した。





「──待ちくたびれたぜ、ミゲル」


 床だけがコンクリートで固められた作業場の中心に、深い色味の木製ダイニングチェアがぽつんと置かれている。そこに足を組んで座り、レーゲンはミゲルを迎えた。


 そこは”作業場”に相応しく、様々な道具が置かれていた。壁のフックには、柄の黒ずんだハケやローラー、釘打ち用のハンマー、大小の鋸、ドリル、ボルトカッター、レンチ──どれも乾いた汚れと、指の形に沈んだ摩耗の跡を纏っている。それらが整然と掛けられているほどに、混じり気のない異様な秩序があった。


 壁に寄せて設置された作業台には太い鎖やロープ、クランプなどが置かれ、中央の方眼シートを侵食しており、その傍には無造作に並んだサンドウエイトと数枚重なったバケツ。バケツはどれも何色ものペンキがこびり付いて固まっている。床にも黒や灰の薄膜が重なり、吐き潰された靴跡が塗り込められていた。


 作業台や床には隙間を縫うようにいくつかランタンが置かれ、中で小さな灯火が揺れている。それらは壁や天井の木目の陰影を優しく際立たせ、影を生み出していた。


 ミゲルはライトを消し、ナイフを構えてレーゲンに対峙した。


「そんな物じゃ何の役にも立たないぜ」


 レーゲンは震える手でナイフを構えるミゲルを冷笑した。腿の上で組んだ指を解くこともせず、余裕の表情で背もたれに身を預けている。気怠そうに頭を傾け、その頬を伸びた頭が流れる。そうして口元が隠れると感情の無い瞳だけが残り、ミゲルを射抜く。


「……なあ、まあ……落ち着けよ。事を始める前にひとつ、世間話でもしてやるからさ」


 不敵に口角を上げ、髪を掻き上げる。声はどこか慈悲深く、その場から立ち上がる様子もない。それでも肩の力を抜かないミゲルに軽く笑って、レーゲンは話を続けた。


「──知ってるか。ここの親父、塗装屋だったんだ。街のあちこち回って、孤独そうな奴見つけちゃあ声をかける。”仕事の手伝いをしないか”とか、”一晩だけなら食事付きの宿を貸してやってもいい”とか、そんな感じでな。親切な慈善家だって、誰もがそう思った。──俺もそうだ。だから、誘いに乗ってやった」


 ミゲルは唐突に始まった文字通りの世間話に戸惑った。胸の奥底がざわつき始め、脳にノイズが走る。緊張を解そうとするレーゲンの声が逆に精神を震わせ、ミゲルは目の前の少年の口を塞ぎたい衝動に駆られた。


「けどな、それが──”運の尽き”ってヤツだった。さぞ、後悔したことだろうよ」


 レーゲンはミゲルを通し、どこか遠くを見つめているようだった。扉のその先を見透かしているのか、じっと前方に視線を据えている。ミゲルはその視線の先が気になりつつも、束の間の落ち着いた時間に鼓動と息を整えた。


 しばしの沈黙。──ミゲルの表情に戸惑いだけが残されたのを一瞥すると、レーゲンは気を取り直すかのように小さく手を叩いた。肩を跳ねさせて一歩後ずさるミゲルに対し、両手を広げる。その仕草を合図とするかのように、部屋中の空気が震えた。


「さて、じゃあ……始めるか。お前がどこまでやれるのか──俺に見せてみろ」


 低い声に誘引され、レーゲンの足元に液体のような黒ずみが広がり始める。コンクリートを凍りつかせるように広がったそれはやがて立体化し、染み付いた中心から人型に変化し始める。息を呑んで壁に向かって後ずさるミゲルの手からナイフが滑り落ちる。小さな金属音を立てて床に跳ねた時、目の前の黒ずみは半ば溶け腐った──ゾンビのような姿となっていた。


 眼球は落ち窪み、鼻や口ももはやただの穴でしかない。骨さえ覗くような状態の体は、かろうじてシャツとボトムスを纏っている。背は高く、ひどい前傾姿勢のままふらふらとミゲルに向かって手を伸ばし、まるで覆うように接近する。四方八方に反響する唸り声は腐った喉から発されているのか──ミゲルの混乱した脳では全てを詳細に把握することは不可能だった。


 両足の力が抜け、冷えたコンクリートに尻餅をつく。ミゲルはそのまま何とか踵を使って化け物から距離を稼ぐ。呼吸や鼓動は堰を切ったように激しさを増しているが、ミゲルはもはや、その息苦しさや胸の痛みすら感じていなかった。


「おいおい、そんな腰抜け野郎じゃ話にならないぜ。──抵抗しろ。抗ってみろ。……そして、そいつを倒すんだ」


 優雅に座したまま、レーゲンはミゲルを焚きつける。しかしミゲルは歯を食いしばることすら出来ず、ひたすら開いた口から息を吸って吐き出すのみだ。黒い滲み跡を残しながら、化け物は後ずさるミゲルをひたすら追跡する。叫びたくとも声の出せないミゲルは、声の代わりに肩を揺らし、必死に酸素を吸い込む。


「何してんだ」


「怖気付くな」


「抵抗しろ」


「やれ」


 化け物の唸り声に、レーゲンの命令が交差する。同時に反響する音にミゲルの脳は掻き回され、半狂乱に陥りそうなほど表情が歪む。


「やれ」


「抵抗しろ」


「やれ」


 レーゲンは座したままだ。化け物は彼を狙わず、正確にミゲルだけを追っている。後ずさる足が床に置かれたバケツを跳ね除け、大きな音が鳴り響く。そうして作業場を半周しかけた時、ミゲルの指先に何かが当たった。


 無我夢中でそれを手に取り、牽制のために前に翳す。ミゲルが拾い上げたのは、──斧だ。大人であれば片手で扱える程度の。ミゲルは手斧を両手で持って立ち上がり、前に翳したまま距離を取った。


「やれ」


 あの命令が頭に響く。声と唸りが重なり、ミゲルの頭の奥で世界が白く爆ぜる。


 一瞬、音が消えた。


 ──斧が振り下ろされる。無意識のうちにミゲルは大きく息を吸い込み、伸ばされた腕に向かって斧を振るっていた。化物の腕が切り落とされ、湿った重い音を立ててコンクリートの上に潰れる。鼓膜を破らんとする咆哮が響き、不思議とそれがミゲルをさらに奮い立たせる。


「やれ」


「抵抗してみせろ」


「ずっとそのままでいいのか」


 レーゲンの声がミゲルの奮起をかき立てる。すると、恐怖や萎縮は怒りにも似た激情に昇華され、ミゲルの瞳に炎が宿る。


「やれ」


 その命令を耳が拾うたびに、ミゲルは手斧を振った。腐った腕や肩、頭部に刃が突き刺さるたび、破片が飛び散って床に染みを作る。レーゲンの座したダイニングチェアを中心に回るように、後退りながらもミゲルは必死に抵抗した。


 化け物が形を失うにつれ、室内に腐臭が漂い始める。コンクリートには黒いものが飛び散り、壁や作業台、工具にも黒い点が付着した。ミゲルは眉を釣り上げ、目を剥き、赤い視界のなか、使命のように化け物に刃を沈め続け──そうしているうちに唐突に、静寂は降り立った。


 もはや黒い塊と成り果てた化け物は、生まれ出た場所に蹲り、動きを止めた。足元に倒れ込んだそれを冷えた瞳で見下ろし、レーゲンはしばらく沈黙する。


 ミゲルは肩で息をしながらその姿を見つめた。顔や服には黒いものが飛び散り、黒ずんだ斧を持ったその姿は幽鬼にも似ている。やがてそんな彼に視線を流したレーゲンは、座したまま組んだ足を解く。そして姿勢を正すと、顔だけをミゲルに向けて微かに口角を上げた。


「──よくやった」


 掠れた声だった。抑揚のない端的な称賛が、ミゲルの心臓を躍らせる。たち込める腐臭など忘れるほどに、胸の奥底が高揚し始める。ただ、やり切ったミゲルはそこから一歩も動くことが出来なかった。あとはレーゲンの言葉を待つのみだ。


「お前の勝ちだ、ミゲル」


 だが、その言葉を耳に受けた瞬間──ミゲルの視界が大きくブレた。同時に、砂嵐のような雑音が耳の奥でざあざあと鳴り始める。二つの光景が同時に入り乱れ、呼応するようにミゲルの脳が攪拌される。


「それで……お前についてやるって話だったか」


 まるで、水中に沈んでいるかのようだった。レーゲンの声が遠く篭った状態でミゲルの耳に届く。雑音とともに、瞬間的に切り替わる映像の感覚が狭まる。ミゲルは斧を取り落とし、両手で頭を抱えた。


「──お前の望みは、それでいいか?」


 かろうじてそれを聞き取り、ミゲルは頷こうとした。しかし抵抗するかのように心臓や脳が痛みを発し、耐えきれずに膝が崩折れる。力を込めて目を閉じるも、一向に治まる気配はない。


 ミゲルは片目を薄く開き、激しい痛みの中でレーゲンを見上げた。レーゲンは姿勢を変えず、ただ顔だけでミゲルを見下ろしている。その顔からは感情が削ぎ落とされ、初めて邂逅した時と同じ表情をしていた。


 その地球を模したような静かなアース・アイが、これまで味わったどんな恐怖よりも恐ろしく感じ始める。じわじわと身体中が抵抗を始め、それが脳に伝達される。ミゲルは両目を開き、吸い込まれるような瞳を見据え、本能で首を横に振った。


「そうか」


 レーゲンはそう呟くと、ゆっくりと項垂れた。両手をだらりと下げ、両足の力を抜いていく。


「……だろうと思ったよ」


 ──それが、レーゲンの最後の言葉となった。彼の体はみるみるうちに腐敗し始め、かろうじて人型を留めている状態で止まる。その間も入り乱れていた映像は次第に焦点を定め始め──やがて、停止する。そして一度、視界が暗転した。


 思い出したかのように、それまでとは比べ物にならない腐臭がミゲルの鼻に飛び込んだ。思わずえずく喉を抑え、口を塞いで空気を飲み込むようにして耐える。ランタンの明かりはいつの間にか消え、ドア付近の床に落ちたライトだけが部屋の中心を照らしている。現実が鼻先から戻ってきたかのように、乾いた光景がミゲルの目前に転がっていた。





 白い光の先にあったのは、椅子に縛られたまま腐敗した遺体。そしてその足元には、──同じく腐敗した人影のようなものが転がっていた。





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