表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/42

5話 我が剣は聖女ではなくて、無垢なる民を守るために

「レオンさん!!!」

「シェフィ? どうしたんだ、そんなに慌てて……」


 冒険者ギルドにいるはずのシェフィが、なぜこんなところに?


 シェフィは肩で息をしつつ、必死で呼吸を整えて、言葉を紡ぐ。


「す、すみませんっ……緊急で、依頼を……お願いできないでしょうか!?」

「緊急依頼? いったい、なにがあったんだ?」

「村の子供達が外に出てしまったみたいで……」

「なんだって?」


 村の外は危険だ。

 ティカが襲われたように、その村の子供達も魔物に襲われるかもしれない。


「今、村の大人達で探しに……」

「いや、ダメだ。すぐに引き返してほしい」

「え? ですが……」

「大人達は、ちゃんと戦うことができるか?」

「……いえ、難しいと思います。戦闘経験者は、ほとんどおらず……」

「なら、やめた方がいい。二重遭難に近い状態になりかねない。気持ちはわかるが、ここは俺に任せて、待っていてくれないか? 子供達は、必ず無事に連れて帰る」

「レオンさん……はい、わかりました! みなさんには、そう伝えておきますね」

「子供達が向かった方向はわからないか? 大体でいい」

「南の方に行ったらしいです。珍しい虫を見かけた、って」

「わかった、南だな?」


 すぐに南に向かおうとして、


「レオンおじさん!」


 ティカが、どこか必死な様子で言う。


「……無茶しないでね? 気をつけてね?」

「ああ、大丈夫だ。心配してくれて、ありがとう」


 ティカの頭を優しく撫でる。

 それから、改めて俺は村の南へ急いだ。




――――――――――




 村の南は森が広がっていた。

 その中を駆けつつ、周囲の気配を探る。


 動物や魔物の気配はいくらかするが……子供はいないな。

 さらに奥か?

 それとも、別の場所に移動したか?


 一度、足を止めた。

 無闇に探し回るよりも、少し時間がかかったとしても、まずは場所を特定するべきだ。


「探知<サーチ>」


 全方位に魔力を飛ばして、その反応を探る。


 動物や魔物だけではなくて、虫や鳥など、さらに小さな生き物の反応も把握することができた。

 そして、その中に子供らしき反応が。


「あちらか!」


 少し進路を変えて、西寄りの南に駆けていく。


 全力疾走だ。

 行く手を塞ぐ大岩などがあるが、


「邪魔だ」


 抜剣して、粉々に砕いだ。

 斬るだけではなくて、こういう芸当も可能だ。


 姿勢を前に低く、さらに速度を上げた。

 駆けて。

 駆けて。

 駆けて。


「いた!」


 三人の子供達を発見した。

 男の子が二人と、女の子が一人。


 ウルフの群れに囲まれて、抱き合うようにして震えている。


 一匹のウルフが牙を剥き出しにして子供に襲いかかり……

 ちっ、迎撃は間に合わないな。


 俺は、一度剣を鞘に戻した。

 とにかく、子供達のところに辿り着くことだけを考えて、全力の中の全力で駆ける。


 そして……


「……間に合ったか」

「グルルルゥ……!!」


 子供達とウルフの間に割り込み、腕を盾にすることで守る。

 ウルフの牙が腕に食い込み、肉が裂けて血が流れた。


「えっ……あ、あれ……?」

「お、おじさん、誰……?」

「やぁ……ち、血が流れて……」

「キミ達、大丈夫か?」


 ウルフのことは気にせず、できるだけ平静に子供達に声をかけた。


「う、うん……おじさんが助けてくれたから……」

「あぁ、で、でも、おじさんが……」

「俺なら問題ない」


 空いている手で、噛みついてくるウルフを殴りつけた。

 キャンと悲鳴をあげて、ウルフが吹き飛んでいく。


「ほら、この通りだ」

「でも、血が……」

「それに、こんなにたくさんの魔物……うぅ、私達、死んじゃうの……?」

「死なないさ」


 強く言い、俺は剣を抜いた。


「キミ達は、俺が守る」


 ……思えば。


 俺の剣は、聖女を……リュシアを守るために捧げてきた。

 娘のために剣を振り、この体を盾とて血を流してきた。


 あの子をお願い。


 亡き妻との約束を果たすためでもあるが……

 それ以上に、リュシアは娘だ。

 聖女とか聖騎士とか関係なく、親として守ることは当たり前だった。


 しかし、その娘から拒絶されて、関係を絶たれて。

 誰かを守るはずの騎士である俺は、目的を見失い、道に迷う。


 ただ。


 迷うのはここまでだ。

 俺は騎士として、子供達を守るために戦おう。


「さあ、来い」

「グルァッ!!!」


 俺は、子供達を背中に守りつつ、襲い来るウルフに向けて剣を振る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ