カレンの心境
清純石がノクスに反応した事、逃げる様にこの場を去った事に対して、私は正直困惑してしまった。
だが、内心納得してしまった自分も居た。
彼の年齢離れした身体能力や剣や魔法の技術。到底普通の人間であるとは思えない所業を見て来た身としては、彼は人外であると考えた方が自然なのかもしれない、と。
「……カレン殿」
騎士団長のリヴァインが重い口を開いた。
「カレン殿は彼が人外の者であるとご存じだったので…?」
「……いや、知らなかった。私も正直驚いているところだ」
そう答えるとリヴァインは意外にも「…でしょうな」と答えた。
「……そんなに簡単に私の言葉を信じても良いのか?」
「えぇ。貴女だけは特別です。何せかの有名なルクセリア軍のカレン師団長ですから。武芸に携わる者であれば知らぬ者の方が少ないでしょう」
しばし、沈黙を挟んで私はリヴァインに問うた。
「この後、私やマーシャ、それにノクスはどうなる?」
「カレン殿とそちらの少女に関しては何もありません。このままこの街に滞在して頂いて構いません」
「……ノクスは?」
「……彼に関しては無事に、とはお約束できません。魔物の類はこの街への立ち入りは固く禁じておりますので。こちらとしてはそのルールに沿って対応するのみです」
「……」
「……では我々はこれにて失礼致します」
そういうと騎士団の連中は早々に宿から去って行った。
ノクスに関しては先の唐突に切りかかった対応を見ても、恐らくこの街にいる限り追われる事になるだろう。出来る事ならこの街からうまく逃げて欲しいところだが。
「……カレンさん」
マーシャがこちらに寄り添ってくる。
「……ノクスさんは、大丈夫ですよね?」
そういう彼女の瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。
彼女も相当ノクスの事を心配しているんだろう。
「……あぁ、きっと大丈夫だ。きっとまたすぐに会えるはずさ」
そうだ。きっと彼にも事情があるはずだ。
疑いが晴れれば、きっと。