正体を見破られ
外で騎士たちがざわついている……。
一体なにがあったのだろう?
様子を見ている限り、相当慌てている事は分かる。
アズールポートの時の様に魔物でも出たのだろうか?
今回は騎士団の人達もいるし、出しゃばるのは止めておこう。
―――コンコンコンッ!
と、扉をノックする音がし、その音でカレンは目を覚ます。
その後、扉の外から声がする。
「失礼致します。ルクセリア騎士団師団長のカレン・エルヴァイン殿御一行のご宿泊されていらっしゃるお部屋はこちらでしょうか?」
「そうだが、何用だ?」
「我々は神聖騎士団の者です。実はご報告したい事がございまして……」
僕とカレンは視線で意思疎通をする。
「分かった。入って貰って構わない」
「はっ!失礼致します!」
室内に2名の神聖騎士団のメンバーが入ってくる。
「お休みの所突然伺いまして大変申し訳ございません。私はエインシェントの守護を仰せつかっている神聖騎士団隊長のリヴァインと申します」
「で、その隊長殿直々のご報告というのは?」
「はっ!それがこの町においてトラブルが発生いたしまして、お伝えせねばならないと思い、参った次第でございます」
「トラブル?」
「はい。エインシェントは我々神聖騎士団、騎士修道会の庇護下にある町だという事はご存じの事だと思います」
「うむ」
「その影響もあり、この町には通常魔物が町に侵入したりせぬ様、結界が張られているのですが……」
「その結界が破られた、と」
「はい……」
「そうか……」
「それでですが、一つ気になる事がございまして……」
「気になる事?」
「はい……その結界が破られた時間帯が、ちょうどカレン殿一行がこの町に到着された頃と同時刻なのです。あの結界はこの辺りに存在する魔物であれば一瞬で消し飛ばすほど強力なもので、魔物の仕業である可能性は低いのです」
「……つまり?」
「……大変申し上げにくいのですが、今回の件。皆様に何かしらの関係があるのではないか、と」
「なるほど。確かに我々が到着した時間にその様な事が起きたというのであればそう捉えられるのは自然だな。分かった。協力しよう」
「ご協力感謝いたします。では先にカレン様とそちらのお嬢さんから先に調べさせて頂きますので。そちらの彼は一時部屋の外へ宜しいですか?」
「分かりました」
僕はそう答え、部屋から出る。
部屋の中に残されたカレンとマーシャは女性騎士団員のチェックを受ける。
当然何事も無く終了し、次は僕の番となった。
「では、上着を脱いで貰って良いかな?」
「はい……」
言われるがまま上着を脱ぐと、団員の人達はまじまじと僕の身体を確認する。
「ふむ……特に異常はなさそうだな」
「そうですね」
「もう良いですか?」
「ん?もう少しだけ待ってくれ。あと一つ最後に大事なことが残っているんだ」
そういうと隊長さんは小さな宝石の様なものを取り出す。
「それは何ですか?」
「これは純聖石と言うものでな。何も無ければ特に変化はしないんだが……」
と、彼は僕の身体に純聖石を近づける。
「魔物に近づけるとこの石に濁りが生まれるんだが……ん?」
彼の手に持った純聖石は瞬く間に黒い濁りが発生した。
「こ、これは……!?」
隊長らの表情は一変し、僕の方を睨み付けた。
「少年……いや、貴様!魔物の類か!」
そう言うと隊長は素早く剣を抜き、思いっきり切りかかってきた。
僕は咄嗟にその剣を指で受け止める。
「なっ!?……我が剣をそんなにも容易く摘まむだと……!?」
「ちょ、ちょっと待ってください!僕の話を……!」
「問答無用!ここでその首打ち取ってくれるわ!」
神聖騎士団の人達は話を聞く様子は無い。
仕方ない。
ここは一旦離れた方が良さそうだ。
そう考えた僕は宿屋の窓から外へと飛び降りた。
「逃げただと!?追えっ!神聖騎士団の威厳にかけて決して奴を逃がすな!」
そのまま、僕はひたすらにどこを目指すわけでもなく、宿から離れた。




