アズールポート
「皆さん、着きましたよ」
御者の方がこちらに合図をくれるとマーシャは真っ先に身を乗り出す。
「うわぁー!ここがアズールポートですか」
活気あふれる人々の声。
ルクセリアとはまた違う活気が感じられ、馬車の外に出ると涼しい潮風が流れる。
「うむ。潮風が気持ちいいな」
「港町ってもっと漁村のような所をイメージしてたよ」
「ノクスはアズールポートへ来るのは初めてだったか?ルクセリア程ではないが、ここも中々発展した街だからな。交易所もあるし、貿易も行っている。ルクセリアへ流れてくる魚介もほとんどはここから仕入れていると聞くぞ」
「へぇ~」
「さて、雑談はこのくらいにして宿を探さなければな」
宿を探しに町の中へ入って行く。
あちらこちらで新鮮な魚介や交易品が売られている。
色々と目移りしてしまいそうだ。
特にマーシャは年相応の子供らしく、目に映るもの全てが珍しい様子だ。
カレンはそんなマーシャの様子を見て声をかける。
「どうした、マーシャ?落ち着かない様子で。気になるものでもあったか?」
「はい!気になるものばっかり目移りしちゃいます」
「ははは。そうかそうか。先に宿を取ったらゆっくり見て回ろう」
「はい!」
宿へ到着するとカレンが手続きを済ませてくれた。
「……では、三名様で一部屋ですね。2階の奥の部屋をご利用ください」
ん?
三人一部屋?
「あの、カレン……三人同部屋で部屋を取ったの?」
「あぁ、そうだぞ。なんだ、別部屋の方が良かったのか?」
「いやだって、男女で相部屋なんて……」
「ははは。おませさんめ。そういうのはもう少し大人になってから気にすると良い」
「いや、それはそうかもしれないけど……」
……カレンには伝えておくべきだったかな。
僕は外見10歳に見えても、実年齢18歳だって。
宿に荷物を置くと僕たちは町へと繰り出した。
「さて、まずは腹ごしらえでもするとしようか」
「あたしもお腹ペコペコですー!」
「うむ。アズールポートには私の一押しの店がある。そこへ行くとしよう」
「わーい!楽しみですー!」
「では早速向かうとするか」
僕らはカレンのおすすめの店へと向かい、そこで腹ごしらえを済ませる。
「んー!ここのお料理本当に美味しいですー!」
「だろう?特にここの魚介料理は絶品なんだ」
「カレンはアズールポートに最後に来たのっていつ頃なの?」
「私か?私が最後に来たのは半年ほど前だったかな。その時は漁港で起きたトラブルの解決をしに軍で出向いたんだ」
「へぇ?でも師団長が出向くって事は結構大きな事件だったんじゃないの?」
「あぁ、結構難解な事件だったな。犯人は捕まったが動機も目的も不明な事件だったからな」
「こんな活気あふれる街でもそんな事件が起きるんだね」
「まぁもうすでに終わった事件だ。今更気にする事でもない。さ、まだまだ料理は残っている。せっかくの上手い料理が冷めてしまうぞ」




