2人の仲間
「お母さんに会いに来たって、こういう事だったんだね」
「はい。今日はお母さんの命日なんです」
「そっか。それでわざわざルクセリアまで……」
ここへ来る途中に買った花を活け、墓石の前で手を合わせ、黙祷する。
瞼を開き彼女の表情を見ると、それはどこか凛々しく見えた。
涙など見せる素振りもなく、しっかりと未来を見据えた顔だ。
「君は、この後はどうするの?」
「ルクセリアに移住して何か仕事を探すつもりでした。けど、魔獣に襲われた際に色んな荷物も捨ててきてしまったので、正直生活が整うまでに少し時間はかかるかもしれません」
「そうか。それは災難だったね」
「ノクスさんは、この後はどうされるんですか?」
「僕?僕はまたしばらくしたら旅に出るつもりだよ」
「そうですか……そう言えばノクスさんは何故旅をされているんですか?」
「僕が旅をしている理由は……自分がこの世界の事を全然知らないなって思う事があって、それで自分の足で世界を見て回りたいと思ったからさ」
「自分の足で世界を……」
「うん。特に目的がある訳じゃない、当てもない旅」
「…………」
そういうと彼女は少し黙り込んでしまった。
何か気に障る事でも言ってしまったのだろうか?
「……あの、ノクスさん」
「ん?どうしたの?」
「もしその旅、あたしもついて行きたいって言ったら迷惑ですか?」
「……え?」
「あたしもどうせ行くところが無いんです。だから、ノクスさんの話を聞いてあたしも自分の足でこの世界を見てみたいと思っただけです」
「あ、あぁ、それは……」
どうしよう。
僕は正直師匠から戦闘や魔法に関して色々と修行をつけて貰ってる。
その上で冒険してる。
でも彼女は年相応の普通の女の子なんだよな。
「正直、危険を伴う旅になると思うけど……」
「そんなの百も承知です!」
「……」
彼女の気持ちはだいぶ強いようだ。
真っすぐな瞳でこちらを見てくる。
「……分かった。いいよ。一緒に行こう」
「本当ですか!?」
こうして、僕はお供を連れて旅を続ける事になった。
だが、そこにもう一人女性が現れた。
「やぁ、ノクス」
「カレン。どうしたんだ?こんな所で」
「いや、なに。私もそこの少女と同じさ」
「カレンもお墓参りに?」
「ははは。いや、違うよ。もう一つの件の方さ」
「もう一つの件って」
「……さっき、王から暇を頂いてきた」
「え?」
「ノクス。私も君の冒険に連れて行ってくれないか?」
「えええええ!?カレンも!?」
「あぁ、そうだ。私も君と共にこの世界を旅してみたい」
「い、いや、それは構わないけど……なんで急に?」
カレンは遠い空を眺めながら言う。
「君の強さに憧れたからさ」
「え?」
「前にも言っただろ。私も騎士団師団長としてそれなりのプライドがあるって。でも君と戦って分かった。私以上に強い人はこの世界にはまだまだごまんといる。私のプライドなんてちっぽけなものなんだって。だから私も君の旅に同行したい。君と共にもっとこの世界を自分の目で見てみたいんだ」
「本気……なんだね」
「もちろん本気さ。それにさっきも言っただろ。私は既に王から暇を貰っている身だ。イヤだとは言わせないぞ」
彼女の快活とした言葉には何故か背中を押されるものがある。
これがルクセリア騎士団師団長のカリスマというものなのだろうか。
「じゃ、じゃあよろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそ宜しくな」
「あたしも、宜しくお願いします」
ノクス・ヴェルセリオン10歳(実年齢的には18歳)
カレン・エルヴァイン21歳
マーシャ・ルーウェン9歳
ここに思いもよらず奇妙な3人パーティを結成する事になった。




