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VS大土蛇

 あの少女は護衛3人を付けて『フェアベル』という街からルクセリアに向かっていたと言っていた。

 フェアベルというのはルクセリアから見て北西にある街だ。

 僕とカレン達ルクセリア騎士団はその辺りを重点的に探索する事にした。

 

 カレン達は地上から手分けして探すのに対し、僕は飛行術で上空から見下ろすように探す。

 しばらく探索を続けていると、不自然な所に放置された馬車を見つける。

 カレンを呼び寄せ、馬車の中を調べるも中には誰もおらず。

 しかし、中の様子から先程まで使われていた痕跡がある。

 

「カレン、これは恐らく……」

「あぁ、間違いないだろう。あの少女の乗っていた馬車だろう」

「という事はこの辺りに……」

「急いで探すぞ!」


 僕は上空へと飛び上がり、再度周辺を見渡す。

 すると、遠くで不自然な砂埃を見つける。

 

「カレン!」

「どうした!」

「向こうの方に不自然な砂埃が見える」

「分かった!とにかく向かうぞ!」


 土埃のする方向へ向かうと、そこには馬に乗った騎士が3名、何かと戦っていた。

 

「皆さん!大丈夫ですか!」

「おお!援軍か!助かった!」


 騎士たちは安堵の表情を見せる。

 しかし、未だに謎の土埃を上げる魔物の正体は見えない。

 

「あれは一体何なんです?」

「あれは大土蛇(サンドスネーク)といってこの辺りに潜む魔物なんだが……」


―――バシャアアアアアアアアア!


 土埃を巻き上げながら大土蛇(サンドスネーク)はその姿を見せた。


「デッ……!」

「デカいっ……!」


 全長20……いや、30mはあるんじゃないかという大きさの蛇が姿を見せた。


大土蛇(サンドスネーク)自体はこのあたりでも良く見かける普通の魔物なのだが、あんなサイズのものは今まで見た事が無い!」

「しかもあのスピード……近づく事さえ困難な状態だ……」


 近接攻撃が無理なら、魔法による遠距離攻撃で……!


「煉獄より生まれし黒炎よ。地獄の業火で燃やし尽くせ!『漆黒の(ニジェリ)業火(インフェルノ)』」


―――ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!


「効いて……ない!?」


 おそらく巻き上がった砂が緩衝材の役割を果たしていて、威力が弱まってしまっているのか。

 くそっ!

 ならば(こっち)で!

 僕は上空から滑空しながら大土蛇(サンドスネーク)に迫り、斬撃を食らわせる。


―――シャアアアアアアアアアアアアアア!


 皮膚はザックリと切れ、血を噴き出している。

 大土蛇(サンドスネーク)はのたうち回り、動きを止めた。

 その様子を見てカレンは騎士団に号令をかける。


「敵は怯んでいるぞ!今のうちに畳みかけろ!」


 多くの騎士たちが大土蛇(サンドスネーク)に切りかかる。

 しかし、切り傷は出来てはいるものの、致命傷とまではいかない様子。

 

「皆さん!離れて下さい!」


 僕は空から真っすぐ下降しながら勢いをつけて大土蛇(サンドスネーク)の首を狙って剣を振り下ろした。

 

―――ザンッ!


 その一撃は大土蛇(サンドスネーク)の胴体を綺麗に二分した。


―――シャアアアアアアアア……


 バタンッ!と横たわり動かなくなる。

 

「はぁはぁ……はぁはぁ……」


 騎士たちの荒い呼吸のみがその場に聞こえる。

 そしてしばらくして騎士たちから勝鬨の声が上がる。


「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「やったぞおおおおおおおおおおお!!!」

「流石ノクスの兄貴だ!やってくれたぜ!」


 僕は(ルーナ)を見ながら思い耽った。

 もしも(ルーナ)がいなかったら、多分こいつには勝てなかっただろう。

 ダルガンさんたちに感謝しなければ……。


「ノクス!やったな!」

「カレン、あぁ何とかね……」

「その剣がドゥリンガルドのダルガンに打って貰ったという……?」

「うん」

「素晴らしい剣だな……」

「この剣のおかげで勝てたようなものだよ」

「そうかもしれないな。だが、それだけではあるまい。どんなに良い武具でも使い手が悪くては真の力を発揮できまい」

「ありがとう。カレン」


 さて、目的は果たした。

 皆で城に戻るとしよう。


 僕たちは護衛をしていた騎士三名を加えて、全員無事に城に帰還した。

 城に戻り、再び王と謁見する。

 

「よくぞ無事に戻った。カレン師団長、それにノクスよ。して、問題は解決したのか?」

「はっ!あの少女を襲ったのは体調20m以上にもなる大土蛇(サンドスネーク)でした」

「なんと……そのように巨大な魔物が……」

特異体(ユニーク)だったのでしょうか?しかし、確かにこの目で確認いたしました」

「なんにせよ、そなたたちが無事に戻った事が何よりの朗報じゃ。各自部屋に戻り休息を取るが良い」

「はっ!」


 カレンも僕も自室へと戻る。

 僕の自室には身綺麗な恰好になった少女が待っていた。

 

「あ、おかえりなさい……」

「ただいま。君を襲ったモンスターはもう倒したから安心して良いよ」

「本当に?ありがとう。お兄ちゃん」

「そういえば君はこのルクセリアに向かっていたと言っていたけど、何か目的があったの?」

「あっ、そうだ!あたしお母さんに会わなくちゃいけないんだった!」

「お母さんに?じゃあ僕も一緒に行くよ」

「え、でも……」

「遠慮しないで」

「う、うん……」


 どこかバツが悪そうな少女だったが、僕は彼女と共に城の外で待つという彼女の母親に会いに行く事に。

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