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ローブの少女

 ダルガンさんに剣を打ってもらってから凡そ一週間が経とうとしていた頃。


「なんだノクス。もう旅立っちまうのか?」

「まぁこの街じゃ観光するところなんてほとんどないからなぁ」

「この街にいながらやってた事といえば、周辺の魔獣の狩りを手伝ってくれたくらいだもんな」


 ドゥリンガルドの鍛冶場の人達は別れを惜しんでくれたが、そろそろ旅立ちの時だ。


「それで、次に向かう町は決まっているのか?」

「はい。一度ルクセリアに戻ろうかと」

「ルクセリアに?」

「ルクセリア王からはダルガンさんへの紹介状を書いてもらったので、そのお礼も言わなければならないので」

「なるほどな」


 その後、僕はドゥリンガルドを発ち、再度ルクセリアを目指して歩き出した。

 エルドリン山を抜け、あとはルクセリアまで平地を進むだけであった。

 

 と、その道中遠くの方に魔獣に追われている人影が見えた。

 あの魔獣は……『大百足(おおむかで)』か。

 頭から黒いローブを纏っており、その人物は男性か女性か、若いのか年配なのかも分からない。

 いや、誰であろうと魔獣に襲われているのであれば助けなければ!

 そう頭で判断する方が先か、身体が動くのが先か、僕は魔獣の方へ向かって駆け出していた。


 魔獣がローブの人物に襲い掛かろうとしたその刹那。

 大百足(おおむかで)の身体は細切れになり、絶命した。

 僕が(ルーナ)で切り裂いたのだ。

 

「ふぅ……大丈夫ですか?」

「は、はい。大丈夫です……」

 

 と、ローブの人物は答える。

 ローブで顔の大半は隠れてはいるが、そのあどけない声から恐らく少女だろう。

 

「何故こんな所に1人で……?」

「そ、それが、元々護衛の方と一緒にルクセリアへ向かっていたのですが、急に魔物の群れに襲われてしまって皆バラバラに逃げていたら……いつの間にかあたし一人に……」

「そうだったんですか……僕もこれからルクセリアへと向かう所でしたが、一緒に行きますか?」

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」


 少女はペコペコと何度も頭を下げる。

 早速僕と彼女はルクセリアに向かって歩き始めた。


「ここからなら歩きだと6時間くらいで着きますね」

「は、はい。頑張って歩きます!」


 彼女は意気込んでいるが、顔色を伺う限り結構無理をしているのは分かる。

 なるべく早く城に着いた方がいいだろう。

 そう考えた僕は「失礼します」といい、彼女を抱きかかえる。


「え?え?な、何ですか?」

「ちょっと急いでいく事にしました。しっかり捕まっていてください」


 そういうと僕は飛行術でふわりと宙に浮く。


「わ、わ、わ……空を飛んで……」

「じゃ、行きますよ」


―――ビューン!


 結構スピードを出して城へと飛んでいく。

 この調子なら30分ほどで城へと辿り着く事だろう。

 

 無事に城まで辿り着き、門番に挨拶を交わすと審査なしで入場を許可してくれた。

 なんでも彼の話を聞くとカレンと演習場で何度も剣を交えていた際に見知っていてくれていたとの事。

 僕はお言葉に甘えて入国し、早速城へと向かった。


 衛兵たちへ挨拶し、まずはカレンへと挨拶する事に。

 カレンとは再開の挨拶もそこそこに事情を説明し、連れの少女にシャワーと食事を与えて欲しいと懇願した。

 少女が食事を済ませている間に僕は王への謁見をする。

 エルドリン山でエルフたちに囲われた事、ダルガンが病に伏していた事など諸々、短い間ながらここ10日間ほどの冒険を報告した。

 

「うむ。色々大変だったようだが、よくぞ無事に戻った。また其方の顔を見れた事、嬉しく思うぞ」

「お心遣い、痛み入ります」

「ところで、其方と共に来たという少女についてだが、その者は如何いたした?」

「はい。彼女はこちらへ戻る道中、魔物に襲われていた所を助けた次第です。彼女と共に移動していた護衛の者たちは見つける事は出来ませんでしたが……」

「ふむ。そうであったか。ならばウチからも兵を集め捜索隊を出そう」

「ありがとうございます」

「うむ。カレン、捜索隊の件、其方に一任するぞ。」

「はっ!畏まりました」


 そう言うとカレンは立ち上がり、王に一礼をして謁見の間を出ていった。


「ノクスよ。其方も部屋に戻り、休息を取るが良い」

「はっ!」


 僕もカレンと同じように王に一礼をして部屋を出る。

 そして以前も宿泊していた部屋に戻り、カレンと共に少女から話を聞く。

 何人で旅をしていたのか。

 護衛の数は。

 どこからルクセリアに向かっていたのか。

 

 彼女から情報を聞き出すと、僕は休む間もなく、カレンと共に城を出た。

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