ダルガンと魔蝕病
あっという間に2000PV達成しました。
ありがとうございます。
エルドリン山ではライヴェルさんたちに会って以降、他のエルフたちと会う事は無かった。
おそらく彼が他のエルフたちにも共有してくれたのだろう。
おかげさまでエルドリン山を抜けるまでは安全に抜ける事が出来た。
さて、ここから先はエルフたちの支配領域外。
ドワーフの国ドゥリンガルドがある険しい岩山、ドゥラク山。
ルクセリアで聞いた話ではこの山の中心部にドゥリンガルドがあるらしいが、そこまで直接行く人間はかなり少ないらしい。
その理由は……。
―――ガサガサガサッ。
前方の茂みが怪しく揺れる。
と、同時に大型の蛇の様なモンスターが飛び掛かってきた。
咄嗟に躱し、大蛇と対峙する。
こいつは恐らく鎧大蛇。
全長は10mはあろうかという巨体にギラギラとした鋼の様な鱗を纏っているモンスターだ。
こいつの身体を覆う鱗は並大抵の剣や斧では歯が立たず、太刀打ちできない。
対抗するなら魔法で仕留めるか、もしくはよほど切れ味の良い武器でなければ。
とにかく魔法の使えない冒険者からすれば天敵とも言ってもいい魔物だ。
しかし、魔法を扱える僕からすれば大した相手ではない。
さっさと仕留めて先へ進むとするか。
「煉獄より生まれし黒炎よ……」
と、僕が呪文の詠唱を始めたと同じくらいのタイミングで遠くから大声が聞こえてくる。
「うおおおおおおおおおおおお!!!大丈夫か少年んんんんん!!!」
物凄い勢いでこちらに向かって走ってくる人物がいる。
その人物はそのまま鎧大蛇へと飛び掛かると手に持った大斧でその硬い鱗を切り裂いた。
―――シャアアアアアアアアアアア!!!
鎧大蛇は攻撃を受けてその場で悶え苦しんでいる。
「とどめじゃあ!!!」
と魔物の首と胴を一刀両断してしまった。
首をはねられた鎧大蛇はそのまま動かなくなってしまった。
「……ふぅ。これで一安心じゃな。少年よ、怪我などはしておらんか?」
「は、はい。大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
「うむうむ。無事で良かったわい」
その人物は小柄ながらも非常にガッシリとした体躯をしており、顔だちも異様に鼻が大きかったりと普通の人間とは少し違った。
「ところで少年よ。このような所に1人で何をしておったのじゃ?」
「僕はドゥリンガルドを目指して旅をしていた所でした」
「ドゥリンガルドじゃと?なんじゃ。わしらの村を目指しておったのか」
彼はドゥリンガルドを『わしらの村』と言った。
やはり彼はドワーフ族で間違いない。
「で、ドゥリンガルドへ向かっていたのには何か用事でもあったのか?」
「はい。ドゥリンガルドにはダルガンさんという有名な鍛冶師の方がいらっしゃると聞きまして、是非僕専用の剣を打って頂きたく……」
「なるほど、ダルガン目当てか。確かにそういう冒険者も居るっちゃ居るが……それはタイミングが悪かったかもな」
「と、いうと?」
「う~む。ワシの口から言う事ではないのだが……」
何やら事情はありそうだが、とても言いにくそうにしている。
「会う事も難しいですか?一応ルクセリア王からの紹介状もあるのですが……」
「なに?ルクセリア王からの紹介状だと?」
「はい。これを見せれば良くしてくれるはずだ、と」
「ふむ。そうか、紹介状を……」
彼はしばらく考えた後「よし分かった」と言い、
「ルクセリア王からの紹介なら無下にする訳にもいかんな。ダルガンに会わせてやろう」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「ただし、武器を作ってくれるかどうかは別の話になって来るが、それでもいいか?」
「はい!ありがとうございます」
そう言うと僕は彼と共にドゥリンガルドへと歩みを進めた。
彼はネルドさんといい、よくよく話を聞くと彼自身も鍛冶場で働いているそうで、主な仕事は材料の採取だそうだ。
先程倒した鎧大蛇の鱗も盾や鎧を作る際の材料になるらしい。
ドゥリンガルドが向かうまでに様々な魔物の襲撃にあったが、それらもなぎ倒しながら何とかドゥリンガルドへと辿り着いた。
「さぁ着いたぞ。ここがドゥリンガルドだ」
「ここが……」
鉄でできた巨大な両開きの巨大な門。
それが岩壁の間に組み込まれている。
その圧倒的な存在感はルクセリアの正門以上のインパクトがある。
「どうだ?デカいだろう?これがドゥリンガルドが『自然要塞』と呼ばれる所以だ」
「はい。凄いですね。でも、この門は本当に開くのですか?」
「おっ!良い所に気が付いたな!実はな、この門はダミーなんだ」
「ダミー?」
「ここドゥラク山は獰猛な魔獣や魔物が多く生息しているだろう?だからこんな大きな門を開けて、万が一街の中に魔物が入りでもしたら大変だからな。平時は向こうにある別の入口を使う」
「なるほど」
「さ、中へ入るぞ。こんな所で立ち話するのもなんだからな」
そう言うと僕はネルドさんに連れられ、街へと入った。
小さな勝手口のような入口から中に入ると、僕はその光景に圧倒された。
各所から鉄を打つような音が響き、まるで街全体が一つの工場の様になっている。
「どうだ?ここがドゥリンガルドだ。思ってたイメージと違ったか?」
「はい…。思っていたよりも凄く熱気に溢れていました…」
「ははは!そうかそうか!それじゃ早速ダルガンの所に行くか」
そうして僕たちはダルガンさんの働く鍛冶場……ではなく、彼の自宅へと向かった。
―――コンコンコンッ
「ダルガンいるか?…入るぞ」
ガチャと扉を開き、家へと入ると1人の屈強そうなドワーフがベッドに横たわっていた。
「おぉ、ネルドか。……と、そっちの少年は誰だ?お前の連れか?」
彼は話しながらベッドから上体を起こそうとする。
「おうおう、そのままで良い。無理をするな、ダルガン。」
「…すまねぇな。じゃあこのまま失礼するぜ。で、そっちの少年は?」
「あぁ、彼はお前さんの客だ。しかも、ルクセリア王からの紹介状付きでな」
「ルクセリア王からの?そうか、少年なんて言っては失礼だったな。ワシの名はダルガン。鍛冶師をしているが、今はご覧の通り。病に伏せている」
「はじめましてダルガンさん。僕はノクスと言い、旅人をしております。縁あってルクセリア王より紹介状を書いて頂き、お伺いした次第です」
「そうか。で、あんたは俺の客ってネルドは言っていたが、俺を訪ねて来た理由は…」
「はい。本来は自分専用の武器を打って頂きたく思っていました」
「まぁそうだよな。見ず知らずの人間が俺を訪ねてくる理由なんてそれしかねぇ。だが、今の俺はご覧の通りだ。情けねぇ事に病にやられちまってこの有様さ」
「……」
「……ダルガンはもう一月はこの状態なんだ。原因は分かっている。魔蝕病だ」
「魔蝕病?」
「……本来は強い魔素を浴び続けると身体が侵食されてしまう病だ。俺たち鍛冶師は鍛冶を行う際に魔素を含んだ素材を扱う事がある。だが、そんな素材に含まれている魔素など微々たるものだ。それを扱ったからと言って魔蝕病になる様な事は非常に稀だ。……稀なんだが」
「まぁ実際にはご覧の通りって訳さ。全身に力は入らねぇし、少し歩いただけでも息が上がっちまう。とても鍛冶を出来る状態じゃないのさ。……せっかく来てくれたのに悪かったな。ルクセリア王からの紹介なら尚の事何とかしてやりたかったんだが」
ネルドさんもダルガンさんも暗い表情でそれを語る。
まるで不治の病にでもかかってしまったかの様に。
だが、僕は彼らの話を聞いて一つの考えが浮かんでいた。
「……要はダルガンさんの身体を魔素が蝕んでしまっている状態という事ですよね?」
「あぁ、そう言う事だ」
「という事は、その魔素さえ何とかしてしまえば回復するのでは無いでしょうか?」
「……そりゃあ、理屈で言えばそうだけどよ……そんな口で言うほど簡単な話じゃねぇよ。魔素を完全に取り除くには身体から魔素を浄化する方法はあるにはある。特別に調合した薬で魔素を浄化するとか……」
「えぇ。僕はその内の一つの方法に心当たりがあります」
「なんだと!?」
「本当か坊主!?」
「僕も今までやった事は一度もありませんので、可能性としての話ですが」
驚く2人を前に僕は自らの右手をジッと凝視する。
上手くいけばダルガンさんの病気は治せるはずだ、と。
2000PV達成したついでにお願いです。
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