王への謁見
ここ数日、毎日PV数が100件を超えるようになってきており大変感謝です。
多くの方に見て頂ける事に幸せを感じております。
モチベーションを落とさずに書いていけるように努めて参ります。
「「お帰りなさいませ!カレン師団長!」」
先程も聞いたがこの衛兵2人は本当に息ピッタリだな。
一言一句、ズレず間違わずにセリフを言う。
まるでゲームのNPCみたいだ。
等と考えていると衛兵の内の1人が僕の方に一瞥をくれて、
「ところでカレン師団長。こちらの少年は先程まで一緒におられた方ですが、彼も共に城内に……?」
「あぁ、私の推薦で王に謁見する」
「……こちらの少年をですか?」
「あまり見た目で判断しない方が良い。先程現れた剣牙虎を始末したのもこの少年だ」
「……!それは……にわかには信じられませんが……!」
「私がこの目で見ているのだ。間違いない。真実だ」
「………………」
驚きのあまり、こちらを見ながら絶句する衛兵。
こういう沈黙の時、どうしたら良いんだろう。
とりあえず愛想笑いでもしておくか?
「まぁ、その一件も含めて王に謁見する。彼も通してくれるな?」
「はっ!勿論でございます」
「……よし、それでは行こうか少年」
入城すると城下町の賑やかさとは全く異なり、荘厳な雰囲気に僕は少し気圧される。
一歩ずつ歩く足音さえカツンカツンと音が響く。
そんな中、カレンは僕に問うてくる。
「……そういえば少年。君の名前を聞くのを忘れていたな。いや、そもそもまず自己紹介が遅れたな。
私はここ、ルクセリアの騎士団の師団長を務めているカレン・エルヴァインだ」
「僕はノクス・ヴェルセリオンです」
「ノクスか。良い名だ。改めて宜しくな」
「はい。宜しくお願いします。カレン師団長」
「ははは。堅苦しいのは要らないし、私は君を年齢で判断せず対等でいたいと思う。ただのカレンで十分だ」
「はい。……カレン」
「うむ。君は素直だな」
と、話している内に衛兵が守る荘厳な扉の前にいた。
「さ、着いたぞ。ここが王がおわす謁見の間だ」
謁見の間。
要は玉座のある部屋。
ティナの宮殿にも玉座はあったけど、衛兵はいなかったから変に緊張する。
衛兵は重そうな扉をゴゴゴ、と開き「カレン師団長。ご入室されます!」と声高らかに宣言した。
カレンは黙々と真っすぐに玉座の方へ歩を進め、僕は一歩遅れてカレンについて歩いた。
玉座の前まで辿り着くとカレンは跪いて首を垂れる。
僕もカレンの真似をして頭を下げた。
「カレン・エルヴァイン、推参致しました」
「おぉカレンよ。城門前に魔獣が現れたと報告が入ったが…無事で何よりだ」
「王よ。ご心配おかけいたしました事、誠に申し訳ありません。数名の負傷者を出してしまいましたが魔獣に関しては既に退治されました。ご安心下さいませ」
「うむうむ。負傷者が出たのは残念だが、余はそなたが無事で安心したぞ。流石は我がルクセリア騎士団の師団長じゃ。…ところで、先程から気になっておったのだが……そなたの隣に控えておるその少年は何者じゃ?」
「はっ。彼はノクスといい、偶然ルクセリアを訪れておりました旅人でございます」
「旅人じゃと?ふむ。ずいぶんと幼く見えるが…それは捨て置くとして、何故にこの者を連れて参った?」
「彼は此度の功労者でございます」
「功労者とな?一体なんの……」
「城門前に現れました魔獣の件にございます」
「なんと!こんな幼い子がそなたに協力して魔獣を退治したと申すか」
「失礼ながら王よ。それは間違いでございます。彼は単独で、私が切りかかるよりも早く、例の魔獣に飛び掛かり一瞬の内に退治してしまったのです」
「なんと……信じられん。こんな子どもが……」
驚きのあまり王はしばし口をつぐんだ。
少しの沈黙が続いた後、カレンが口を開く。
「王よ。驚かれるのも無理はありません。ですが、私も彼の所業を実際に目撃致しました。これは事実です」
「そうじゃな。其方がそう申すのであれば事実なのであろう……その方、ノクスと申したか。面を上げい」
「はっ」
顔を見るなり王は改めて言葉を発する。
「おぉ。本当に見れば見るほどに幼き男子じゃ。其方よ、此度はルクセリアの危機に対して助力してくれた事、この国の王として改めて礼を言う。大儀であった」
「はっ。ありがたき幸せでございます」
「うむ。……それはさておきノクスよ。そなたは旅人との事だが、何故そんな幼き身一つで旅をしておるのじゃ?」
あー。
どうしよう。
なんて答えよう。
さすがに『物見遊山です!』なんて言えないしな。
仕方ない。
適当に誤魔化すか。
「…実は私は10歳になるまでの記憶がございません。生まれた地も、両親の顔も、名前すら知らずに育ちました」
「なんと……」
「偶然親切な方が拾って下さったおかげで今日まで生きてこられましたが、何か自身の生い立ちについて手掛かりになるものがあればと思い、旅を始めた次第でございます」
「そうか……その歳で一人旅とは何か理由があるとは思っておったが、ううむ…そうか、記憶が…」
王は黙り込んでしまった。
やばい。
こんな空気にするつもりじゃ無かったのに。
カレン。
カレン助けて。
黙ってないで、ほら。
何か口添えを……。
「ううぅ……まだ幼い身で……そんな事情が……ぐしゅ……本当の家族の事も知らずに……ぐすっ……」
泣いてたー!
カレン、ありがとう。
君は良い人なんだね。
でもゴメン。
それ、嘘なんだ。
ホントはただの観光なんだ。
何て今更言えない!
どーしよー!
なんて考えていると王は口を開き、
「よし!そなたの事情は相分かった!ノクスよ!其方には魔獣からこの国を助けてもらった恩もある。そこでだ!今後このルクセリアに滞在する際には其方を来賓として扱わせよう。ちょうど来客用の空き部屋もある。この国に腰を据える際にはこの城にて好きに寝泊りをするが良い。」
とんでもない事を言い出した。
来賓として扱う?
こんな見た目10歳の子どもを?
「カレン。其方はこの決定に異論はあるか?」
「ぐしゅ……いえ。異論などあろうはずもございません」
「では決定じゃ!城の者どもには追って伝える。カレンよ。彼を来客用の部屋に案内せい」
「はっ」
あーあ。
大事になっちゃった。
冷汗が止まらないよ。
こんなに冷汗かいたのティナとの特訓の時以来だよ。
「さぁ行くぞ、ノクス」
王に感謝の言葉を述べ一礼し、カレンに連れられ、僕は謁見の間を後にした。




