VS剣牙虎
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ガチャ、と扉を開きカレンは真っすぐに受付へと向かう。
すると受付嬢の方からカレンに声をかける。
「あら、カレンさん。珍しいですね、こちらまでいらっしゃるなんて」
「あぁ、今日は紹介したい子がいてな」
「紹介したい子?」
と、首を傾げるもすぐにカレンの隣にいる僕の方へ一瞥をくれる。
「もしかして、その子ですか?」
「あぁ、エルムウッドから来た子なんだが、この若さで冒険者ギルドに登録しているそうだ」
「この子がエルムウッドから…あ!もしかして数日前にエルムウッドのSクエストを達成したっていう子じゃないですか?」
あれ?こちらでも噂になってたのかな?
「なに!Sクエストを?君が?それは本当か!?」
カレンも相当驚いた様子でこちらに尋ねてくる。
「おそらくこの子かと…エルムウッドの冒険者ギルド職員のミリシャから10歳くらいの子がルクセリアに向かったから、もしギルドに顔を出す事があれば良くしてあげてね、と」
「そうだったのか。それは知らなかった。私も子供ながら旅をしていると聞いて、良くしてやってくれというつもりで彼と一緒に伺ったのだが…そうか。そんな実力者だったのだな。子供だと思って侮っていたようだ。失礼を許してくれ」
カレンさんは僕へ向かって軽く頭を下げる。
「いえ、寧ろここまで案内して頂いて感謝しています。ありがとうございますカレンさん」
にこりと笑うカレンさんは「そうか。なら良かった」と返してくれた。
「ルクセリアとエルムウッドでは街としての規模が違うから、エルムウッドよりも多くの種類のクエストがある。もししばらく滞在するのであれば、きっと君の成長の糧になるはずだ」
「はい。ありがとうございます」
「それはそうと、だ。君はSクエストを達成したとの事だが、どんな内容だったんだ?」
「えっと偶然だったんですけどシルフェッドの森で暴れているワイルドホーンを討伐したんです」
「ワイルドホーンを?一人でか?」
「はい」
「そうか。それは凄いな。ウチの騎士団の中でもワイルドホーンを1人で討伐できるものはそう多くはないぞ」
そうなんだ。あいつそんなに強かったんだ。
「ふむ。面白いな。私は君に興味が出て来たぞ。どうだ?うちの騎士団に入団する気はないか?」
「有難いんですが、僕はこの世界を自分の足で見てみたいという目的があって旅人をしているので…」
「ははは。そうだったな。すまない。言ってみただけだ。気にしないでくれ」
3人で談笑をしていると、そこへ1人の男が血相をかえてギルドへと飛び込んでくる。
「か、カレン師団長!大変です!城門の前に魔獣が、剣牙虎が現れました!」
「何!?剣牙虎だと!?門番はどうした!?」
「それが何とか交戦しようと致しましたが、いずれもやられてしまい…」
「分かった!私も出よう!」
と、慌ててギルドから出ていこうとするカレンだったが「少年!君もついてきてくれるか!?」と僕にも声をかけて来た。
「は、はい!分かりました!」
僕とカレンが現場に到着すると既に多くの兵士が、城の中へは入れまいと巨大な盾を並べてバリケードを形成していた。
「お前たち!無事か!」
「カレン師団長!既に負傷者が複数名出ており、状況はかなり悪いものと思われます!」
「それにしても何故剣牙虎の様な凶暴な魔獣がこんな所に…」
―――グワアアアアアアアアアアアアア!
兵士たちの陰にいる平民たちからは「ひぃぃぃぃ!」という悲鳴が聞こえている。
「私が出る!お前たちは後方より援護せよ!」
「はっ!」
―――ガルルルルルルルルルルルル!
剣牙虎はだいぶ興奮している様子だ。
これは早めに片付けた方が良さそうだな。
僕はカレンよりも先にバリケードを作る兵士たちよりも前に出る!
「おいっ!君っ!何をしている!」
「そこは危険だから早くこっちに来るんだ!」
そんな群衆の声に耳を傾ける事なく、僕は剣牙虎と対峙する。
―――グルルルルル…!
僕は瞬動で剣牙虎の真横に一瞬で移動する。
そのままの勢いで正拳突きを横っ腹に一発入れる!
―――グガァ!?
勢いそのままに10mほど吹っ飛ぶ剣牙虎。
怯んだ隙に呪文の詠唱に入る。
「冥府より生まれし煉獄の炎よ!我が契約に答えよ!地獄炎舞」
剣牙虎の足元から上空に向かって黒い炎が轟々と立ち昇る。
―――グガアアアアアアアアアアア!
もがき苦しむ剣牙虎はしばらくするとそのまま動かなくなり、黒炎が消える頃には既に絶命していた。
この間、僅か30秒足らずほどの出来事であった。
その様子を見守っていたカレン、兵士たち、平民たちは絶句していた。
そんな彼らに向けて僕は声をかける。
「……終わりました!もう安心してもらって大丈夫です!」
しかし、彼らは絶句したままだった。
そんな中、1人こちらへ真っすぐに歩いてくる人物が一人。
「…少年、まずはルクセリア騎士団師団長として感謝を述べさせてくれ。君のおかげでこれ以上被害が出る事も無く、無事に解決した。ありがとう」
「いえ、とんでもないです」
「その上でだが……」
カレンはこちらを睨みつけるような強い眼光で、
「君の強さは異常だ。とても10歳そこらの少年とは思えない。君は一体何者なんだ?とてもただの人間だとは思えないのだが…」
真剣な面持ちでこちらに問いかけてくるカレン。
「……この後、少し時間を貰ってもいいかな?」
「分かりました」
「……この一件は既に解決した!負傷者の手当てを最優先とし、手の空いた兵士は元の持ち場へ戻れ!」
兵士たちへ指示を出した後、カレンは僕と共に城へと向かう。
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