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冒険者ギルド

 翌朝。

 気持ちのいい朝日に誘われ目覚める。

 昨日までとは違う目覚めの風景。

 宮殿と比べるとかなり手狭な部屋。

 一日経って改めて僕は旅に出たんだなと実感した。

 朝食を軽く済ませると昨日話を聞いた冒険者ギルドへと向かった。


 ギルドに入ると朝という事もあってか、そんなに人は多くなかった。

 受付は……カウンターに行けばいいのかな。


「あの、すみません」

「はい。どうされましたか?」

「ギルドに登録をしたいんですが」

「登録ですね。畏まりました。ではこちらに必要事項を記載下さい」


 案内された書類に必要事項を記載していく。

 宮殿にいた時にイザベルさんたちから読み書きを教わっておいてよかった。

 あ、そう言えば名前。

 ファミリーネームはどうしよう……。

 う~ん……。

 一応ティナの眷属だし、ファミリーネームは彼女から拝借しちゃってもいいかな?

 良いよね。


「名前は『ノクス・ヴェルセリオン』っと」


 他の記入事項もそれぞれ書いていって……これで良し。


「記入終わりました」

「はい。ありがとうございます」

「え~っとお名前はノクス……」


 と、そこまで言いかけて受付のお姉さんは少し黙った。

 あれ?どうかしたのかな?


「あの、つかぬ事をお伺いしますが、ノクス様は貴族の方だったりされますか?」


 貴族?

 貴族って普通の平民よりも少し偉い人達の事だよな。

 もしかしてティナのファミリーネームを勝手に借りたのはまずかったかな。

 周囲の冒険者の人達も少しザワザワとしている

 まぁいいか。

 ここは一旦とぼけ通そう。


「いえ、自分はただの旅人です。貴族の方とは関係ありません」

「…そうですか。失礼致しました」


 思いもよらぬことで周囲の視線を集めてしまった。

 あの宮殿から来たって事は今後黙っていた方が良いのかも。

 でも、そう考えるとティナは貴族って事になるのかな?

 まぁどう考えても平民って暮らしでは無かったから、貴族ではあるんだろうけど。

 など、そんな事を考えていると受付のお姉さんが「お待たせしました」とやってきた。

 

「ではこちらで冒険者ギルドへの登録は以上となります。それとこの冒険者ギルドの説明ですが、基本的にはあちらにあるボードに張り付けてあるクエストを選んでいただいて受付で受注する事でクエストを受けたという形になります」

「分かりました」

「あぁ、それと一つだけルールがあって、クエストに赤字で『S』って書かれてるものは『特別(スペシャル)クエスト』って言って、あなたはまだ受けられないから気を付けてね。これは世界中にある全冒険者ギルド協会で統一されている決まりだから」

「それを受けられるようになる条件とかってあるんですか?」

「クエストを受注してある程度実績を認められたら、ギルド側からお願いする事があるわ。だからまずは地道にクエストをこなす所から始めてね」

「分かりました。ありがとうございます」


 そう言うと、僕は早速クエストボードの方へ向かった。

 クエストは本当に様々で簡単なものだと薬草の採取など。

 難しいものだと大型モンスターの討伐などがあるようだ。

 ふむ。

 記念すべき最初のクエストだ。

 どんなクエストを受けようかな。


 と、ボードの前で悩んでいると勢いよくガタイの良い大男が入ってくる。


「おう!おはようミリシャさん」

「あらガウインさん。おはようございます。どうされましたか?」

「それがよぉ!昨日報告するのを忘れていたんだが『Sクエスト』にワイルドホーンの討伐ってのがあっただろ?」

「えぇ。最近森で暴れて困っているのですが、強すぎてこの辺りでは誰も討伐出来ないのでSクエストに指定していたんですが…」

「そうなんだよ!昨日そのワイルドホーンを1体丸々買取してくれって依頼があってな」

「えぇ!?ワイルドホーン丸々1体ですか?」

「あぁ、それを持ってきたのが冒険者ギルドの事も知らないような10歳くらいの子供でな」

「10歳くらいの子供…」

「おう、ちょうどあそこにいる坊主くらいの…」

「………………」

「………………」


 そこで二人は僕の方を向いて黙りこんでしまった。


「おいおい坊主!お前なんでこんな所にいるんだよ!」

「あ、先日買取をしてくれた…」

「おうよ!ガウインだ!なんだお前、結局冒険者ギルドへ加入したのか!」

「はい…旅をしているのでその日の食費くらいは稼がないといけないので…」

「ははははは!そうかそうか!お前さんみたいな強い冒険者がギルドに加入してくれたのはこちらとしても有難い限りだぜ!」


 昨日会った時から感じていたが、なんとも豪快な男の人だなぁ。

 そんな事を考えていると受付嬢のミリシャさんが話しかけてくる。


「あの、先程の話、本当なんですか?ワイルドホーンを討伐したって」

「あ、はい。森の中を歩いていたら襲い掛かってきたので返り討ちに…」

「森の中を歩いてたって…」


 ミリシャさんは信じられないという表情でこちらを見ている。


「ミリシャさんよ!この坊主は嘘を付くような男じゃないと思うぜ!」

「は、はぁ。では、偶然ですけど、ちょうどワイルドホーンの討伐依頼があったのでその報酬をお支払いしなければなりませんね」


 そういうとミリシャさんは討伐報酬を出してきた。

 今回の討伐報酬は金貨15枚を受け取る。

 偶然ではあったとしても結構貰えたな。

 これで当面はお金の心配は必要ないだろう。

 しばらくはここに滞在してクエストを受けながら生活してみるとしよう。

 まだ宮殿を出てから半日も歩かない程度の距離だけど、これからどんな冒険が待っているのか楽しみだ。

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