闘病生活からの異世界転生
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ひらひらと桜の花びらが舞い散る季節。
今頃はもう始業式とか終わったのかなぁ。
僕、小宮山ハルトは病院の窓から外の風景を眺めながらそんな事を考えていた。
僕も本来ならその始業式に参列していた筈だった。
ある日の健康診断をきっかけに、原因不明の病だと発覚するまでは。
お医者さんの先生曰く、僕の余命は長くは無いと伝えられた。
今10歳の僕が高校生まで生きていられる確率はとても低いらしい。
自分ではどこが悪いのか全く分からない。
運動もしようと思えばできるし、走ろうと思えば走れる。
でも僕は学校に行く事は禁止されて、病院での入院生活を強制されている。
大人になったらなってみたい仕事はいっぱいあった。
運動が好きだったからサッカー選手とか野球選手に憧れたりした。
ゲームも好きだったからプロゲーマーとかゲーム配信者もやってみたかった。
いやいや、普通のサラリーマンになる事も子供心なりに憧れていたと思う。
毎日決まった時間に家を出て、満員電車に揺られながら、パソコンの前に座って仕事したりして、同じ職場の人や友達とお酒飲んだり、彼女作ったり、結婚したり。
そういう普通の大人にも憧れを抱いていたんだと思う。
だから僕はお医者さんから高校生まで生きられないかもしれないと聞いた時、凄く泣いた。
病院の中でお母さんの服にしがみつきながらワンワンと人目を気にする事なく泣き喚いた。
あの日から数日はずっと怖くて不安で仕方が無かった。
毎日心が押し潰されそうになるくらい辛かった。
でもお母さんもお父さんもずっと一緒にいて寄り添ってくれていた。
お医者さんも看護師さんも優しい言葉で僕を励ましてくれた。
そして少しずつだけど今の生活に慣れていった。
外に出かけられないのは寂しいけど、小学校の友達はたまに遊びに来てくれるし、スポーツは出来ないけどゲームしたり本を読んだりする事は出来る。
「ハルト、何か欲しいものはないの?」
「いつもベッドにいるから暇だろう。ゲームでも買ってやろうか?」
お父さんとお母さんは僕が欲しいと言ったものは何でも買ってくれた。
漫画だって、ゲームだって、我が儘を言えば何でも聞いてくれた。
でも僕にはその行為が少し申し訳ない気持ちを感じる所があった。
どんな我が儘でも聞いてくれると言えば、一見優しい両親に見えるだろう。
けど見方を変えれば、それしかしてやれないんだとも解釈する事が出来る。
だから我が儘が許されているんだ、と。
僕は子どもながらにそう感じていた。
そんなある日だった。
僕はトイレに行こうと離床し病室を出た際、違和感を感じた。
入院している間何度も見た廊下ではあるが、何か違う。
心がざわざわとする感覚。
不安や焦燥感とは違う。
何かが起きているという事を心が訴えているような感じ。
これが虫の知らせというものなのだろうか?
僕はトイレに行くのを忘れ、違和感を感じる方へと歩を進めた。
廊下を進み、角を曲がるとナースステーションと面会ロビーがある。
ナースステーションやロビーにはいつも通りの日常があった。
気のせいだったのだろうか?
その時には先程感じた違和感は感じなくなっていた。
僕は来た道を戻り、トイレで用を足し、自分の病室へと戻った。
しかし、やはり、病室の近くに来ると妙な胸騒ぎを感じる。
人の気配とは違う、『何か』だ。
だが、それが何かは分からない。
僕は気にする事を止めてベッドへと戻った。
戻るや否や、まだ昼過ぎだというのに強い睡魔に襲われた。
そのまま僕は眠りについた。
そして次に目を覚ました時、そこは僕が見慣れたいつもの病室では無かった。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。拙作ながらもし少しでもお楽しみいただけましたら、☆☆☆☆☆評価で応援していただけますととても励みになります…!