95 血なし
「あの……今のなんですか?」
とエリアは一瞬照らし出された赤く染まった神座を見て来たことのあるコラスとクルックに尋ねる。
「いや、わかんないです……コラスさんは」
「僕もさっぱり……ですが、さっきの光景がこの異常な暑さの原因と膨大な魔力量を持っている何かの魔術だということは確かです」
「そうですね、私もこんな魔法知りませんし十中八九魔術ですね。コラスさんここ照らしてもらっていいですか?」
「わかりました」
シェニーはコラスに頼むとコラスは神座の入り口の足元を照らす。
照らし出されたのは赤い――雪だった。
「暖かい」
シェニーはその赤い雪に手をかざす。
「やっぱりこの暑さの原因はこれだね。これがこの部屋全体にあるのかと思ったけど、床だけ、反射して部屋全体が赤く見えた」
「我の家がぁぁぁぁ」
「おまえの家じゃねぇだろ!!」
「そんなことより」
「そんなこと!?」
何気なく放ったエリアの一言にディスネは突っかかる。
「あ、えーと、まずはこの魔術の主、ディスネさんに頼まれた人を見つけないとですね」
「そうね。だけど、これを見て思ったのは、パーセムセロでこの部屋から感じとった魔力反応がこの赤い雪の可能性ね。そうなると、この魔術の主はもう部屋にいないかも」
「いや、いるに決まってる!! 我はこの遺跡の中から出ていった足跡を見てないぞ!!」
とディスネはシェニーの言葉に反論する。
「コラスさんもう一回生石を投げてください。その間に私の魔術で神座を細かく見てみます」
「わかりました。クルック準備ができたら言ってください」
「クルックさんの魔術ってなんですか?」
とエリアが聞く。
「私の魔術は瞬間的な光景を頭の中で記憶したり、遠くや近くを見ることのできる魔術です」
クルックはそう説明するとたちまち片目が青く光り始める。
「眺記望前、コラスさんいつでも大丈夫です」
「わかりました。いきますよ」
コラスはそう言うともう一回生石を投げ、投げられた生石は光り輝き、瞬間的に、床を赤い雪で埋め尽くされた神座を照らし出す。
その照らし出された瞬間クルックは一言「『写記』」と言った。
「クルックくん、どうですか? しっかり見えましたか」
「はい、大丈夫です」
コラスにそう返事するクルックは片目を閉じて別の何かを見ているようだった。
「見た感じ一面赤い雪ですね……ん?」
クルックは何かを見つけたのか疑問の声を上げる。
「部屋の隅に――人、ですかね? 何かいます。そこだけ赤い雪が不自然に盛り上がってます。私たちから見て左奥の隅です」
「調べてみようか、『イスク』」
そう言うとシェニーは手のひらから風を生み出し、目の前の赤い雪を吹き飛ばすと、クルックが見つけた場所へと道を切り開く。
五人は赤い雪を吹き飛ばしながら道を切り開くシェニーについていく。
そしてすぐに、本当に少しだけ盛り上がった赤い雪を見つける。
「すごいですねクルックさん。こんな些細な積もり方に気が付くなんて」
「探検部ですからね、任せてください」
エリアが驚く通り、本当に少しだけ盛り上がって積もっているだけなのだ。
確かに部屋の隅で何か物がある可能性も低く、赤い雪がそこだけ盛り上がって積もっていることは、言われえてみれば不思議だ。
シェニーはその盛り上がる雪を手で掘るのではなく、魔法で発生させた風で吹き飛ばす。
「……!?」
すると、壁にもたれている幼い男の子が、赤い雪の中から吹き飛ばされて出てくる。
少年は傷だらけで意識を失っている様子だ。
「なぜこんなところに、こんな幼い子が……」
「そうですねコラスさん。それに一目でわかるほどのひどい傷。どこからか逃げてきたのでしょうか?」
「ディスネはこんなやつにビビってたのか?」
「うるさいな!!」
「この子がこの赤い雪の魔術の主?」
「ちょっとまってね、『パーセムセロ』」
エリアの疑問にシェニーはそう答えながら傷だらけで気絶している少年に手を伸ばし魔法陣を展開する。
そんなシェニーを横目にネスとディスネは互いに言い合いをしたり、クルックはエリアに餓窮の都の神座の特徴などを説明していた。
そんな中――コラスは何かに気がついたのか、傷だらけで気絶している少年に手を伸ばしているシェニーの手を取る。
「シェニーさん……ちょっと……」
「どうしたんですかコラスさん?」
手を取るコラスにシェニーは振り返って答える。
「何してるんだオマエ?」
とネスと言い争っていたディスネもコラスに聞く。
「この子…………血が」
そのコラスの一言と同時に、シェニーの頭の中にも、傷だらけで気絶している少年の魔力量が感覚として伝わってくる。
(なに……この魔力量? 遺跡の外から感じ取ったのはこの部屋に積もっている赤い雪じゃなくて、この子の魔力……)
「この子……この傷で、血が出ている様子がありません。服にも、傷口でさえ血がない」
「この子が……魔人……?」
とシェニーがポツリと呟くとその言葉に気絶する少年に対して全員構える。
「どうするエリア? 思ってもみないところで気絶してる魔人に会えたけどよ」
「……」
エリアは引っかかっていた。
(本当にこんな小さな子が魔人なのか)と。
だが、これ以上にない好機に変わりない。
「シェニー記憶を見てくれる?」
「わかった」
シェニーはエリアの言う通りに魔法を展開し記憶を読み取る。
「『ラウストゥフ』」




