77 ヴィスカとは
「私たちが一週間後から通うことになるであろうヴィスカは千年以上前から存在している学校で正式名称は国立国際大学ヴィスカ、フレイアの初代五天様が建てた学校だけど、今ではヴィスカはラングを半分に隔てる壁の向こう側のことを指してます」
「それでシェニーはそこの卒業生ってことね」
エリアは問いかける。
「そう、二十年くらい前かな? 卒業するのに苦労したよ……」
「何歳なんだよおまえ」
「300歳くらいじゃない?」
「いや姉ちゃん、400だ」
「そこの兄弟、年齢を探るのはやめなさい!! それにそんな上じゃない!!」
とシェニーは年齢を当てようとするアグとネスに注意する。
「それでまずヴィスカには色々な部があるの」
「部?」
「つまり何を専門とするかの組み分け、代表的なのは魔法研究部、魔術研究部、魔族・魔人研究部、歴史研究部、法器研究部の五つ、この五つの中にさらに細分化して色々な部があるの、魔力研究とか、残滓の研究とか、命の研究とか、転写の研究とか……」
「多いね……」
とエリアはその多さにため息をつきながら言う。
「後に言った細かい部は気にしなくていいんだけど。最初に言った五つの部がヴィスカで大きな力を持っててヴィスカ内の四方に施設を持ってるの。それで学生が学びたいものを選んで講義ごとに部を移動して、また移動して……また移動して……」
とシェニーのトーンがだんだん落ちていく。
そうとう大変だったんだろう。
「部のことはこれ以上語りようがないから次はヴィスカの内情ね。今回の五天様の依頼? というかなんといっていいか考えてみたらわかんないけど、今回重要なのは独立派」
「ティエトはその独立派をそそのかしたのが魔人関係者か魔人って話だよね」
と相変わらずネスのベッドでゴロゴロしながら言うアグ。
「そうですけど――独立派については何も知りませんよね」
「うん」
(この人本当に話聞いてるのかな?)
とシェニーはくつろぎにくつろいでいるアグに少し懐疑的になる。
「独立派はティエトをフレイアから独立して新たな国にしようっていう勢力。遡れば魔人王との戦いが終わってからだから800年ぐらいの歴史があって、誰が創立者かは不明。おそらくは代替わりしながら誰かがリーダーをしてる。そうじゃないと続かないから。独立派の設立はヴィスカが国立国際大学っていう肩書きで聖人族以外も来るもの拒まずていう方針の弊害みたいなものね」
「なんで初代五天様はそんな学校をつくったの? 聖人族の国なんだから聖人族だけの学校はつくらなかったの?」
「初代五天様は国、種族関係なく知識によって豊かになることを望んだからだとはいわれてるけど、どうなんだろね。そもそも聖人族は寿命が長くてどうしても子供が少なくなるからってのもあるんじゃないかな?」
「でも他種族を集めたからってそうなるか?」
とネスが言う。
「そうね、独立派が生まれた一番の原因はヴィスカの制度の問題。みんながこれから行くヴィスカは一度入学すると卒業するまで原則出られません!! そして卒業するのは種族によって難易度は変われどとても難しいです!!」
「えっ」
「んじゃ俺は死ぬまでヴィスカから出られなくなるじゃねか!!」
「だからティエト様は仮入学って形にしてくれてるの。そもそも入学も難しいから死ぬまで出られないってことはあんまり起こらないんだけどね」
「なんでそんな拘束する必要があんだよ」
「初代五天様曰く、その方が必死に勉強するだろうってことらしいけど、そもそもヴィスカ自体ラングの居住区と分けられてるわけで、聖人族中心の居住区に簡単には侵入できないようにとか、頭のいい人が来るわけだからスパイ行為の抑止とか色々あるんじゃないかな? まあそのおかげでヴィスカで多くの人が長年過ごすわけだけど。そうなるとそのうち生徒は学費やら食費やらでお金を稼がなきゃいけなくなってくるわけ。それで後々色々制度化されていって、ヴィスカ内で働きながら生徒になれたり、ヴィスカにそもそも働きに行けたり。さっき卒業するまで出られないって言ったけどその制度もゆるくなったりして、ヴィスカ内が独自に発展していっちゃったの……。ヴィスカの街はいろんな人が住んで建築して発展させていったからところどころぐちゃぐちゃだし、建築様式もいろんなところで変わるしって感じ。その背景を中心に独立派は自分たちは多民族国家を創ったって主張してるね。そうは言っても独立派はごく少数だけどね」
「その独立派が今勢いを増してきてるってことだね」
とエリアが言う。
「そう!!」
「けどノルダさんの予想中心で考えると魔人族は世界征服のために動いてるんだよね? 魔人族が絡んでる理由は手がかりがないからって五天様が言ってたけど、五天様もスルト女王からそのことも聞いてるだよね」
「え、どういうこと!?」
とエリアの言葉にベッドからアグが飛び上がる。
「おい!」
「あっ」
「いいんじゃない教えても、こらから一緒に行動するからさ」
と言いシェニーはスルト侵攻を経て得られた情報で公には公表されていなかった情報、禁忌の魔法、魔人族の数と魔術、魔人王の目的をアグに教える。
「へぇー、それを聞くと魔人族が独立派を勢いづける意味がわかんないね。スルト侵攻もなんらかの準備だったってことだよね。独立派を勢いづけて反乱を起こさせたりして混乱に乗じて侵攻して魔人族が得られる物としたらラング? う〜ん確かにスルトと違って世界一の大国を落とせたら世界征服には近づくだろうけど……なにか腑に落ちない」
(この人意外に頭良い?)
とシェニーはすんなりと理解したアグを少し見直す。
「たしかにそうですね、最終的な目的がなんであれ独立派に勢い付けて反乱を起こさせたいというのは確かなんじゃないですか?」
「ティエトの言った通りなら根拠は時期と手がかりが出てこないってことだけだ。アングルボザやテュールとか言ってたが、たしかに国、都市単位で絡んでたら手がかりの一つぐらい出てもいいか」
とネスが言う。
「でも魔人族が絡んでようとなかろうと今回の依頼を受けることに僕は納得してるよ」
と自分の発言が原因で少しティエトからの依頼に不信感を抱き始めたところに責任を感じ肯定的であるとエリアが示す。
「それはそうよ。そもそも魔人族が絡んでる可能性のある情報なんて他になかったわけだし。当てが外れても五天様が仰った通りヴィスカに通うのも私たちにとって良い経験になると思う」
「俺もそう思ってる。とにかく寝ようぜ、今日はいろんなことがあって疲れた」
「そうだね」
「それじゃおやすみ」
「おやすみー」
とシェニーとアグは部屋を出て四人は就寝する。




