74 人伝
「これは約五百年前のレーヴァがまだスルトの騎士団総団長だった頃の話――」
およそ千年前魔人王を眠らせたことによって平和な世界が訪れた。
平和になった世界で各国は魔族が蔓延ることで発達しなかった貿易を通して互いに豊かになっていく時代に突入する。
この貿易の時代において最も成功、いや、運が良く栄えたのが巨人の国テュール。
巨人族の大きな体を生かした力仕事で主にテュール特産の品、生石を各国に迅速に運び売ることによって栄えた。
この生石が世界に普及し与えた影響は大きく、魔法が特別な知識なく、多くの魔力を消費せずとも使えるようになった。街中では火に取って代わり生石が灯りに利用された。
これは生石が世界に火よりも便利な新たな灯りを与えたことを意味する。
この灯りは夜の活動を促進させ、エンブスという乗り物や、便利な魔法、商業、様々なものを発展させた。
しかし、そんな平和な時代にも影が差し込む。
巨人族はテュールが世界一発展しているという自覚が芽生えてくる頃、次第に奢るようになった。
店での横暴な振る舞い、街中での暴力事件、猥褻な行為と多岐に渡った。
そして巨人族が街中で言う決まり文句があった。
「テュールの貿易のおかげでお前たちは生きてるんだ」
各国は巨人族のその態度に怒り、不安が高まる。
そんな巨人族の態度に痺れを切らしたのが五天レーヴァ・フェリン。
なにを原因としてレーヴァが痺れを切らしたかは不明だが、レーヴァは単身で巨人の国の首都キドネスに乗り込み一晩で巨人族の五天含め皆殺し。
これをきっかけにテュールの領土を誰が取るかで隣国フレイアとアングルボザの戦争が勃発。
「と、まぁこの後はレーヴァとは関係ないからいいかな。ともかくレーヴァは何を思ったか一晩で当時の大国の首都とその住民、そして五天を燃やし尽くしちゃったの。だから最強で最悪の五天」
「でもシェニーこの話って」
「そう有名な話の一説、そうですよね? 別の話ではアングルボザがテュールを攻めていったとか、テュールで内乱が起きたとか色々ありますけど、どれが本当なんですか?」
「レーヴァがテュールを滅ぼしたのが本当の話だとおもうよ。詳しくは教えてくれなかったけど、当の本人が言ってたんだからそうなんじゃない?」
「ティエトはなんで知らねんだ? そんときも生きてたんだろ? シェニーだって」
「私はまだ生まれてない!!」
「私は生まれてたし、年齢にしたら君たちぐらいだったかな? でも当時は母がテュールに出向いたからね、私はこの城にいたんだよ」
「ティエト様はレーヴァさ……んのこと恨んでたりしないんですか? 先代の五天様、つまりティエト様のお母様はテュールを巡った戦いで亡くなられたわけですし」
シェニーのその問いかけにティエトは少し考える。
「たしかに恨んだりはしたけど――それよりもあの時の私への恨みの方が大きかったかな……おっと!! レーヴァへの些細な仕返しが私の暴露話しになるところだった!! まあついでに、レーヴァは当時戦いが起きたことを誤りに私の前で土下座? 頭を地面に擦り付けて謝ってきたんだよ!! 知り合ったのはその時がはじめてかな」
「あいつが……」
「それから罪滅ぼしとして剣を教えてもらったりしたの。だからある程度は仲がいいのかな? それから今日まで会ってなかったけど」
「ティエトさんもレーヴァさんの弟子ってことですか?」
「そういうことになるのかな。雑談はここまでにしてそろそろソルミがお茶を持って来ていい頃だけど、遅いな」
とティエトが部屋の扉に目をやると扉の前からなにやら揉めている声が聞こえてくる。
「引っ付かないでください!! 溢れてしまうでしょ!!」
「それじゃ早くこのクレープ食べてよ!! 美味しんだから!!」
「嘘をつかないでください!! それはクレープではなく、ただのクレープを包んでいた紙です!!」
「この紙の中にクレープが入ってるの!! ほら!!」
「ちょ、ちょっと、私の手が塞がっているのをいいことに口に捩じ込もうとしないでください!! お茶がこぼれる!!」
「それで部屋はどこ?」
「この目の前の扉の先です!!」
と次の瞬間、バタン! と扉が開くとソルミにベッタリとくっつき見た感じただの紙屑をソルミの口に無理やり捩じ込もうとするアグとお茶を運ぶソルミが部屋に入ってきた。
「ソルミ、これはどういう状況?」
「ネスさん……早くこのお姉さんをなんとかしてください……」
ネスはすぐに椅子から立ち上がりアグを引き剥がしにいく。
「姉ちゃん早く離れろ!!」
そう言いながらアグの頭をぶっ叩く。
「わかったよ……あ〜あ、せっかく美味しいクレープを味わってもらおうと思ったのに」
「それはただのゴミですよね!! 陛下遅くなり申し訳ございません」
ソルミはそう言いながら机にお茶を5つ並べる。
「ありがとうソルミ」
「んで姉ちゃんは何しに行ってたんだ?」
「クレープ買いに行ってたの、一緒にあとで買いに行こうよ」
「俺はいい」
「アグさんも来たことだし、本題について話しましょうか」
「もしかしてウチを待ってたの!? ごめん!!」




