71 すべて運命
財布窃盗事件から少し時間は戻り場面はエリアたちとフードを被った人の四人に移る。
エリアとネスとシェニーはフードを被った人に連れられなぜか街を案内されていた。
「え~とあれがフレイヤの中枢アイワン、五天とかいろいろな人が大事なことを決める時に集まる場所かな?」
とフードを被った人は街を半分分けるようにある壁を跨いで聳え立つ城を指さす。
「あの~私この街の出身なんで……」
「それで~……」
「まぁいいじゃねぇか、もう悪い奴じゃねぇんじゃねぇかって思ってきた」
「ほんと?」
「せっかくだし聞こうよ」
とフードを被った人に呆れながら説明を聞く三人。
「それで~あの城壁はこの一般の居住区とヴィスカを分ける物だね、最近はあっちもこっちも変なことになって困ってるんだよ……てのは置いといてそういえば三人はここに何しに来たの? 討伐者でしょ?」
と後ろを歩く三人の方を振り返って言う。
「な、なぜそれを!?」
「いやだってヴィスカの学生服きてないし、種族としてはバラバラだし、あとー若いし」
「確かにな」
「僕たちはフレイヤの五天様に手紙を渡しにきたんです」
「え、そんな重要な用事があるなんて!! ならこんなことしてる暇ないね」
「そうです」
「せっかくだし一緒にアイワンまで行ってあ……」
ドスンッ!!
その時フードを被った人の後ろに何かが落ちる。
エリアたちはその落ちてきたものに目を凝らすがすぐに注目の的は落ちてきた衝撃の風でめくれたフードの中にうつる。
「な、なにごと?」
とフードを被った人は後ろを振り返ると落ちてきたもの、いや男と目が合う。
手足に青い猫の手足をまとい四足で立っている男はフードを被った人の顔を見るや否や一言声をあげる。
「うそ……ニャ……」
ハッとしたのかすぐさま男はフードを被った人とは別の方向に進路を変え逃げようとしたとき上から大声をあげながら人が降ってくる。
「逃がすかああああああ!!!!!!!!」
「ニャアアアアアア!!!!!!!!」
男は身動きもとれず顔面を一発地面にめり込む勢いで上から降ってきた人に殴られる。
「やっと捕まえれた、え~とお財布お財布」
とそれから降ってきて男をぶん殴った女はそのまま男の懐をさっぐり始める。
「あった、あった~」
と自分の財布を見つけたのか嬉しそうに掲げると周りが何かに戸惑っている様子に気が付く。
「あ!! ウチは悪い人じゃないです!! 悪いのはこの盗人ですから」
と下敷きになっている盗人に指をさすが息を呑んでいる周りの市民の目はそちらにいかない。
女は市民の注目している方を見るとそれはそれは美しい透き通るような水色の髪、瞳、そして透き通る宝石を耳飾りにした女が立っていた。
その姿は世界一の大国を治める五天、ティエト・フレイヤ。
「五天様……?」
「なに、エリアってなんか呪われてるんじゃない?」
「う、そ……」
みんながたじろいでいる中、黒服の男が建物の上から降りてくるとティエトに近づく。
「陛下ここにいましたか……」
(なぜバレた!?)
とフードを被っていた女は自分の頭を触る。
(ん、ん? フードがめくれてる!?)
と身分がバレたことに少し動揺しながらもすぐに落ち着きを取り戻し威厳ある振る舞いをする。
「そこの人、悪人を捕まえてくださりありがとうございま……」
と盗人をぶん殴った女に礼を言おうとした時、女は突然エリアたちの方へ走り出す。
「なんでだよ!?」
「ネス!!!!!!」
そう叫びながら女はネスに飛びかかり地面に押し倒すと、がっしり胸ぐらを掴み感情のまま上下にネスの頭を振る。
その光景を冷ややかな目で見守るエリアとシェニー、そして何か言いたげに拳を握る黒服の男。
「あれがネスのお姉さんなの?」
「元気だね」
「ネス!! どこに行ってたの!? お姉ちゃん心配してたんだから!!」
「やめろ姉ちゃん……首が、首が」
「ずっとお姉ちゃん、ネスがいなくなってからフレイヤのいろんな場所を探し回ったんだよ!! ネス!!」
「わかったから……もうやめてくれ、首が折れそう」
と怒っているのか喜んでいるのかわからないネスの姉に再度ティエトが話しかける。
「そこの人、悪人を捕まえてくださりありがとうございます」
ネスの姉はその声を聞くとネスの胸ぐらを離し立ち上がる。
「いえいえ、財布も取り返せたことだし!! 総合的にはマイナスだけど……全然大丈夫よ!!」
と手でグットサインを作りながらティエトに言葉を返す。
「お前なんだその態度!! 陛下の前で不快であるぞ!!」
(あ……兄弟だ……)
とネスの姉の態度に黒服の男が怒鳴り上げる一方内心どこか納得するエリアとシェニー。
「え……?」
となぜ怒られたのかわかっていない様子のネスの姉。
「何を小さなことで怒っているのですか、態度がなっていないごとき小さなことで怒っているとこちらの品格が疑われます」
「で、ですが陛下、態度は重要なものでは……」
「あなたお名前は?」
と黒服の男を無視しながらネスの姉にティエトが話しかける。
「ウチはアグ・ウーピットよろしくね」
とアグは片手を伸ばし握手を求める。
その光景をエリアや街の市民は静かに見守るが、一方で、その光景を歯を食いしばりながら見守る黒服の男。
「よろしくお願いしますアグ・ウーピットさん」
と手を取るティエト。
「これも何かの縁ですしアグさんとネスさん、エリアさんにシェニーさん、お城でお茶会でもどうですか? 私にお手紙があるのでしょ?」
「え、良いんですか!?」
とエリアは驚きながら尋ね返す。
「大丈夫です」
「陛下、今はそんなに暇じゃないですっ!」
と黒服の男が慌てて近づきティエトに耳打ちをする。
「では行きましょうか、市民の皆さんもう大丈夫です!! 悪人はこのアグ・ウーピット様が捕まえてくれました!! 大きな拍手をお願いします!!」
そんな言い分をほっときながらティエトは話を進め市民にも現状を伝えとそそくさと城に向かって歩きだし慌てて黒服の男が後をつけ、エリアたちもそれに続く。
「あ!!」
と歩き出したところアグが何かを思い出したのか歩みを止める。
「どうしたんだ姉ちゃん?」
「ちょっと用事が、先に行っといてすぐ行くから!!」
「お、おい!!」
と呼び止める暇もなくアグは慌ててどこかへ走り去っていった。




