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この数週間であの子たちは強くなった。
ネスも基礎魔法は使えるようになったし、シェニーもいい魔術の使い方ができてるし、それにエリア、本当に僕の想像通りの使い方をしてくるなんてね。
はぁ~、あの時のことちゃんと謝んないとなー、それより、あの子たちをフレイアに行かせていいのだろうか、ティエトならうまくやってくれそうだけど、いや考えろ僕の言うことだ、やってくれなそうか?
いや、ここに留めさるわけにはいかないし。
有益な情報だけなら教えてくれるだろ。
そんなことを考えていた時ノルダの後ろからエリアが話しかける。
「あの〜ノルダさん?」
「ごめんね、起こしちゃったかな?」
ノルダはエリアの方を振り返らず空を見ながらこたえる。
「いえ大丈夫です、ノルダさんこそここで何してるんですか?」
「空を見てただけだよ」
「そ、そうですか……」
「そう、だからエリアも早く寝な、明日は朝早くにここを出るんでしょ」
「そうですね」
エリアは振り返り家に戻ろうとしたとき、あ! と何かを思い出したのかノルダの方を見る。
「そういえばノルダさん、僕の魔術について聞きたいことがあるんです」
「なに?」
「僕魔術を使う時何かわからないんですけどたまに……」
「声が聞こえるんです」
「声が聞こえるんです」
ノルダはその誰かの声と重なった二重の言葉に後ろから話しかけていたエリアの方を振り返る。
「どうしたんですか?」
まさかその魔術……いや僕の想像した通りの使い方をするわけないんだ……。
そんなことはあり得ないと思ってその事実から目をそらしてた。
そうなのかエリア? その魔術……。
「どんな感じの声?」
「どんな感じですか……誰かの記憶を追体験してる感じなんです、僕に呼びかけてるって感じではなくて、誰かの記憶で魔術はこう使うんだ! って教えてもらってる感じというか……」
本当に……まさか……。
「声が聞こえる魔術なんて聞いたことがないね」
「そ、そうですか」
「そんなことより三人とも強くなったね」
「ありがとおうございます、全部ノルダさんのおかげです」
「いいや僕のおかげじゃないよ、僕はきっかけを与えただで、強くなれたのは三人自身の力だよ、だけ……、いやフレイヤでも頑張って! 実は特訓が終わったとき何かしてあげたかったけど何にもなくてね、結局あんな感じの終わり方になっちゃった」
「別に二人もなんとも思ってないですよ」
「それに騎士団の件もごめんね、ルフルに僕が生きてること色々あってバレたくなかったんだ、あと咄嗟にかっこつけようとして三人に罪をなすりつけようとしてしまった」
「大丈夫ですよ! 何とかなりましたし!」
「そう?」
そう一言言うとノルダはまた空を眺め始めた。
エリアは空気を読んで木の上のノルダの家に帰って床に就く。
―翌朝―
「はい、三人とも起きてー」
とノルダは朝早くからぐっすりと眠るエリア、ネス、シェニーを起こす。
三人は眠い目をこすりながら各々身支度をして、誰もノルダの料理を手伝ってないのでいつも通りの鳥の丸焼きと白ご飯を食べ外に出る。
「それじゃノルダさん、短い間でしたけどありがとうございました!!」
とエリアが頭を下げる。
「お礼することなんてないよエリア、私たちだってノルダのせいで散々な目にあったんだから!」
「ごめんって! あの時はこっちも慌ててたんだ、悪いと思ってるよ」
と言いながらノルダは小さな袋と大きな袋を魔法陣から取り出す。
「はい、届けてもらう手紙と、あとお金と食料、僕が急にフレイアって決めちゃったからね、準備できてないかなって思って」
「あ、ありがとう助かる、予定では何個かの都市に寄り道する感じだったけど、これなら直接フレイアの首都ラングまで行ける」
とシェニーは目をそらしながらお礼を言う。
その光景をエリアとネスはニヤニヤしながら眺める。
「なに二人とも?」
「べつに」
と三人がもめている中にノルダが話しかける。
「これで僕とはお別れだね、まぁまた会う時が来るかもしれないけど、一旦ね」
「そうですね、もう一度ありがとうございましたノルダさん」
「ありがと」
「ありがとう」
「じゃあフレイアに行ってきな」
「はい!」
そう言うとエリアとネスとシェニーはフレイアに向かって歩き出す。
その姿を見送るとノルダは家に戻っていった。




