64 エリアたちの目的地
エリア、シェニー、ネス、レーヴァことノルダはリベルで軽くお昼を済ますと壊れたリベルの街を少し見て回りいつもは走って帰った道をゆっくりと歩いてノルダの家に帰った。
家に帰ると夕方時、三人は切り開かれた土地に食卓を出し、夕食の準備を進める。
今日はいつもみたいな鳥の丸焼きと白ご飯ではない。
なんたって今日はシェニーの監修のもと夕食の食材をリベルで買ったからだ。
エリアたちは食卓の準備が終わると木の上に立ってられたノルダの家に行きノルダと一緒に夕食を作る。
いつもは食材もさることながら、特訓の後エリアたちはヘトヘトになり一緒に夕食を作る気力もなく、木の根元で腰を下ろしノルダが夕食を作り終わるのを待っていただけだった。
そう思えばノルダの作ったご飯にケチをつける道理はない。
だがずっと同じ料理が出るならケチをつけたくなるだろう。
四人は和気あいあいとしながら夕食を作り終えると、木下に用意された食卓にいつもとは違う豪華とも言えないが、いつもと比べたら豪華な料理が並べられる。
三人はいつもなら起こり得なかったことに興奮しながらご飯を食べる。
するとノルダが話を始める。
「嬉しそうに話してるところ悪いんだけどさ、リベルで話したことについて説明していいかい?」
と夕食の時に話そうといっていた話題を切り出す。
「そうね、まずはレーヴァ・スルトのことから、ノルダが初代五天レーヴァ・スルトだってことは事実なのよね?」
と最初に再度ノルダの本当の身分を確認する。
「事実だね、証拠に……」
とノルダは片目に天の文字を浮かばせる。
それは紛れもなく彼が五天だということを証明している。
天の文字は導きの神が自身の力を分けた証拠として刻まれるものだ。
「信じられないけど本当みたい……まさか本当にこんなのが五天様だなんて……」
「失礼だな~」
「五天ならあのバカげた強さも納得だな」
「でも五天は種族ごとに一人、なんで獣人族だけ二人いるの?」
「そう、それが疑問なの、この世界に存在する人の種族は五つ、その種族ごとに一人、導きの神により五天が選出された、だから五天同じ種族に二人いると数が合わないの」
「そうだね確かに数が合わないね」
「だからなぜこんなのことが起きてるのか教えなさいよ、どっちが……今の五天ルフル・スルトと初代五天レーヴァ・スルトどっちが本物の五天様なのよ」
「どっちも紛れもなく本物の五天だよ」
「いいや、あり得ない」
「そうだね、確かにあり得ないことだよ、だけど五天なのは本当のことだ、ただ力の源が違うだけ」
「それはどういう?」
「五天は導きの神に選出された者だけじゃない」
「導きの神だけじゃない? それなら他に神様がいることになっちゃうじゃない」
「そうだよ」
「そんなこと……それこそあり得ない、神様は導きの神以前から長年生まれてなかった、そんな中魔人族に対抗するために生まれたのが導きの神様、その他の神様はこの世界に存在していない」
「それは人間が確認できていないだけ、神はこの世界にずっといるんだよ、僕はそれが神だとは思わないけどね」
「なら……なんでその神様たちは今のこの状況は変えようと動かないんですか? 導きの神様のように人々を先導して動かしてくれたら今回のスルト侵攻のようには、クラージュのようには」
とエリアはこの世界に神が存在しているならなぜ動かないのかと嘆く。
「事情があるんじゃないかな? 知らないけど、これで五天のことについては話し終わったかな? 次はあれでしょ? 巨人の国を僕が滅ぼしたかどうかでしょ?」
とレーヴァは次来るであろう質問をシェニーに問いかける。
「しようと思ってたけどもういい、知ったところでだし、それに今のこの世界に神がいるってだけでもうお腹一杯……」
「そうかい? じゃあ次は僕から君たちに伝えたいことがある、特にエリアにね」
「は、はいなんですか?」
とエリアはまさか名指しの伝えたいことだとは思っておらず戸惑いながら返事をする。
「おおよそエリアにとっては良い話だろうと思うよ、伝えたい事とはなエリアの妹についてだ」
エリアはその言葉を聞き目をかっぴらく。
それはエリアが待ち望んでいた情報の一つ。
「何かわかったんですか!?」
「エリアの妹は茶色い髪で黒い魔術を使う子なんでしょ? それに六年前魔人に連れ去られた、今回の侵攻で僕はグシオンという老人の姿をした魔人と戦ったんだよ、その魔人の隣にエリアと同じくらいの年齢の特徴が一致する子がいたんだ」
「じゃあテレサは今魔人族側……」
「そうなるね、今のエリアの妹は魔人族側だ、見た感じ君の妹は魔法で操られているような様子だったんだ、だから完全に魔人族側だとは言えないね」
「魔法で操ってるってまさか……」
とシェニーが疑問を浮かばせる声を出す。
「そうシェニーの察する通りリーブルと同じ禁忌の魔法の一つアフィクタ、他者の記憶を好きに改変できる魔法」
「ならそれを解除できればテレサは」
「そういうこと、禁忌の魔法とはいえ人に干渉する魔法なら解除方法は一般の魔法と変わらない、ネスでも簡単に解ける、魔法が解けさえすればエリアの妹は帰って来る」
「なんか俺馬鹿にされなかったか?」
「ありがとうございますノルダさん!! これは大きな進展です!!」
「そうね妹さんの場所が魔人族のいる場所だとわかれば魔人族を追ってたら、仮面の魔人を追ってたらいずれ妹さんに会える」
「そんじゃなおさら次の目的地を慎重に選ばないとな」
「そう、そこで僕がお昼に提案した国フレイアだよ」
「五天に会わせてあげれるとかなんとか言ってたやつね」
「そうだね、今どこも魔族の動きが活発でスルトの予兆みたいな目立った動きがないからね、そこで世界の知識すべてが集まる国フレイヤに行けばエリアたちにも有益な情報があるかなってね、アングルボザもいいかと思ったけど、今あの国は魔人族とか魔族とか関係なしに結構国内の情勢が荒れてるからね、おすすめはできない、なら情報収集として優秀なのはフレイアってわけ」
「確かに情報は多いけど」
「そう、多いけど情報を集める場所ってのは限られるでしょ? そこで僕がフレイアの五天に合わせてあげる」
「どうやって?」
「それはね、実はなんだけど僕はあの五天と面識があるんだよ、あっちも僕が五天だってことは知ってるんだ、なんであっちが僕のことを知ってるかとか話したら結構長い話になるから省くけど、僕名義の手紙を五天に届けてほしんだよ、そうすれば五天に会えるでしょ」
「別に会ったところで大切な情報を教えてくれるわけ……」
「まあまあ会ったらわかるよ」
と何か大切な情報を省きながら、そして懸念もほっときながら話を進めフレイアに行くことにする流れにするノルダ。
「じゃあ明後日出発で明日は僕と最後戦ってもらうよ、あの侵攻を経てどこまで強くなったか見ておきたいし、魔術を使った特訓は最初以来してないからね、最後の特訓だ」




