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「今回のスルト侵攻の目的、僕なりの考えを言うと、一つは僕の生存確認、二つはこの国を乗っ取ること、三つは次への準備かな、他に意見はない?」


「あんたの生存確認ってどういうことよ?」


とシェニーがレーヴァ、いやノルダに尋ねる。


「千年前魔人王とは殺し合いをした仲だからね、僕がどれほど脅威になるかってことはわかってると思うよ、僕がいるかいないかで魔人族も動きずらいだろうしね」


とどこか得意げに言うとシェニーは鼻で笑う。


「今鼻で笑ったなシェニー!!」


「まぁまぁレーヴァ様がそう言うならそうなのでしょう、一つ目は置いておくとしまして、他の二つは妥当な目的でしょうし、その他に侵攻してくる理由が思いつきませんね、そうなると気になるのは今回の侵攻の目的ではなく、次への準備、魔人族いや、魔人王の目的」


「そうだね」


「無難なのは魔人族、魔族の国をつくることでしょうか……」


とルフルが一つ考えを言う。

確かに魔人族、魔族の国をつくる考えうる限りそれが一番安直で一番あり得る目的だろう。

魔人族と魔族はいわば世界の敵、生物の断りを外れた存在。

恐れられてはいるが魔人族、魔族からすれば世界全てが敵であり安全な場所など存在していない。

そんな状況なら国でも作り自分たちが安心して暮らせる場所をつくるのが一番簡単なことだろう。

しかしこれには一つ矛盾が生じる。


「それはどうでしょうか、レーヴァさんが挙げた二つ目の目的もそうですが、それが目的ならば今回の侵攻で魔人王直々に出向いて、全勢力を挙げて攻めてくるべきです、こちらに多大な犠牲が出ているのになぜその機会を見逃したのでしょうか」


「なら国をつくるよりももっと大きな目的……」


「世界征服とかでしょ」


とありがちだが、しかし国をつくるよりも大きな目的をレーヴァが言う。


「魔人族が国をつくったとしてそれを他国が許すわけでしょ、作った瞬間各国が協力して潰しに行くだろうね千年前みたいに、そうなると魔人族側として打つ手は単純、他国が存在しない、魔人族の国しか存在しない世界の構築、世界征服だよ」


「では次魔人族がとりうる行動は何でしょうか、このスルト侵攻が次への準備だとしたら……」


そうだ、そうなると次魔人族がとる行動は何なのだろうか。

仮に世界征服を企んでいるとして、何をしたら各国を抑え魔人族が世界を征服できるのだろうか……。


「残念だけど想像つかないね」


ときっぱりとレーヴァが言う。

そう、それは誰にも想像できない。

なんたって誰も世界征服など考えたことがないからだ。

漠然と世界征服という概念はわかるが、それがどのようにして、どう達成されるのかが想像できない。


アングルボザ(竜人の国)にでも聞いたらわかるんじゃないか?」


「そんな冗談言わないでください、これからの魔人族の動向は予測着きませんが、確実に千年前以上の戦いが起きるでしょうね」


この話し合いが始まって何度目だろうか、また沈黙が走る。

だがそれは重たい空気や寒気などではない。

あくまで予想、確率の高い予想、当たらずともここ六年の情勢からこれから世界が激しく動くことを予感させる。

その動きは実に千年ぶりに味わうことになるだろうものだ。

そう、この沈黙は覚悟の時間だ。


「今回の話し合いはとても有意義なものとなりました、ここで話し合われた重要な事項は私が各国に伝えたいと思います」


とフェッテのその言葉を最後にスルト侵攻の話し合いは終わり、全員が覚悟の決まった顔いや、一人はここに私は必要だったのかと疑問を持った顔で部屋を後にするとき、レーヴァがフェッテに駆け寄り話しかける。


「女王様、禁忌の魔法の件と今回の侵攻の件もちろんフレイヤ(聖人の国)にも伝えるんでしょ」


「そうですが」


「あの三人を使者として行かせてあげて欲しいんだけど」


「いや……え……ラルク(繋ぐ手)伝えるので死者の必要はありませんが……それに騎士団でもなく討伐者を使者として使わせるのは……」


「まあまあそう言わずに」


「そういうわけにはいきません、初代国王ならわかりますでしょ……」


「じゃあしょうがないか……ありがとね」


とレーヴァは一言言うと部屋の外にいるエリアたちのもとへ帰っていく。

エリアたちが城から外に出るとちょうど時間はお昼時だった。


「やっとあの場から解放された~!!」


「そうだな~!!」


とエリアとノルダの前を歩きながら両手を大きく上げてリラックスをするネスとシェニー。


「ありがとうございますレーヴァ様?」


と呼び名に困るエリア。


「ノルダでいいよ」


「ありがとうございますノルダさん、とてもいい話を聞けました」


「それはよかった、それでこの話を聞いて次はどこに行くんだい?」


「僕たちもスルトに来たのは上級魔族が出没してるから来ただけであって、そうですね次への手掛かりがない以上……」


「それじゃフレイヤ(聖人の国)に行くのはどう?」


「フレイヤですか?」


「フレイヤ!?」


その言葉を聞きネスが振り返って後ろを歩いているエリアとノルダに近寄ってくる。


「どうしたのネス?」


「なによそんなにフレイヤが嫌なのネス?」


とエリアとシェニーが明らかに嫌そうにしているネスに聞く。


「別に嫌じゃねよ!!」


と明らかに強がるネス。

その様子に何かを察するシェニー。


「まさかあんたのお姉さんのこと?」


「ちげぇよ!!」


と焦ったように言うネス。

どうやら図星らしい。


「別にお姉さんに会うわけないでしょどんな確率よ」


「それはそうだが、なんか出会っちまう気がすんだよ」


「それでなんでフレイアなの?」


と案を出したレーヴァに問うシェニー。


「キミたちをフレイアの五天に合わせれる方法があるからね、そっちのほうが君たちの旅の目的にも近づけるだろうし」


「噓でしょって言いたいし、驚きたいところだけど、なんかもう驚かなくなっちゃった」


と三人はキョトンとした顔をする。


「それより!! レーヴァ・スルトのこと聞かせてもらうよ!! ノルダ!!」


「はいはい、僕も君たちにフレイアのことも含めて話したいこともあるし、お昼食べて僕の家に帰ったら話そうか」


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