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「まず今回のスルト侵攻の当日の朝、騎士団に一通の報告が来まていました、前日の夜不思議な魔力の色を街中で見たと、おそらく前日、いえ、それよりも前に魔人族がリベル……いえ、スルトに潜伏していたのは間違いないでしょう、そして侵攻当日、トッシュが魔人族の侵攻を受けているという報告が入りスルト騎士団総団長ルフル・スルトが独断でトッシュに向かいます」
そう言いながらフェッテはルフルの方を睨みつけるとルフルは目を少しそらす。
「そしてしばらく時間が経ち、ルフルがトッシュの崩壊と少女の姿をした魔人から聞いた情報がリベルに伝わる、時を同じくしてリベル内に魔人族と魔族の侵攻が確認、私は魔術を使いリベルの全国民に情報を共有し騎士団は魔人族、魔族の討伐、そいて市民の保護、市民は城門を目指す、少し経ちスルト騎士団第一騎士団団長リーハス・ウェンバが城正面方向にいた魔人オウヴェルディと接敵交戦を始める」
「そうでございます、あの時は大変助かりました」
と再度リーハスはエリア、ネス、シェニーに頭を下げる。
「そしてリーハス・ウェンバは負傷により戦線から離脱、討伐者エリア・ブラグル、ネス・ウーピット、シェニー・タンタスがリーハスに代わり戦闘を開始、時を同じくしてスルト第四騎士団団長ロスクン・ダミレが老人の姿をした魔人グシオン・に接敵、交戦になるところにレーヴァ・スルトが介入しロスクン・ダミレは戦線を離脱し私の安全確保に徹する、時は進み魔人オウヴェルディと交戦していたエリア・ブラグル、ネス・ウーピット、シェニー・タンタスのうちエリア・ブラグルが負傷により戦線を離脱、残ったネス・ウーピット、シェニー・タンタスが戦闘を続けるが惜しくも敗北、復帰したエリア・ブラグルが引き継ぎ戦闘を開始、時を同じく交戦していたレーヴァ・スルトが老人の姿をした魔人グシオン・カルスを退け魔人オウヴェルディのもとへと向かう、同じくトッシュからリベルまでの魔族の侵攻を受けている村々を救いながら向かっていたルフル・スルトが一足早くエリア・ブラグルが交戦する魔人オウヴェルディとの戦闘をエリア・ブラグルに変わって開始、魔人オウヴェルディが何らかの切り札を切ろうとした瞬間にレーヴァ・スルトが現着し魔人オウヴェルディを打ち取る、以降魔人族、魔族の出現はなくなりこれにてスルト侵攻の決着とみなす」
と一通りスルト侵攻の流れを説明し終わるとフェッテが最終報告を述べる。
「今回のスルト侵攻の被害はトッシュの崩壊、スルト各地に点在する村々の損壊、スルト首都リベルの損壊、そして何よりスルト国民約八万人の尊い命の犠牲です、ではこれより今回のスルト侵攻での疑問点をここで話し合おうかと思う」
この最後のスルト侵攻の被害を聞き部屋全体に肩に重くのしかかる空気が充満する。
「大きな疑問点は五つ、一つ魔人族はなぜ禁忌の魔法を知っていたのか、二つどのようにして禁忌の魔法を使い都市に侵入したのか、三つ魔人王は復活しているのか、四つ魔人の魔術と数は、五つ魔人族の目的は何なのか、まず魔人族はなぜ禁忌の魔法を知っていたのかについて話したい、何か考え着く者はいるか」
その問いにレーヴァが声を上げる。
「あるよ、まぁこのために僕がいるしね、まずなぜ魔人族が禁忌の魔法を知っていたのか、これは三つ目の魔人王は復活しているのかと絡めたら簡単だよ、答えは魔人王は復活していてその魔人王が禁忌の魔法を手下の魔人に教えたから」
「でしょうね」
と一言フェッテが呟く。
フェッテは、いや、おそらくエリアたち以外の三人は何となくはそう考えていたのであろう。
しかし、信じれない真実であったため改めて魔人王とも相対したことのあるレーヴァの言葉をもって再度確認したかった、これがこの疑問点を挙げた目的だろう。
「まぁ薄い可能性としてグシオン・カルス、それか他の僕たちのまだ知らない長生きの魔人が知っていた可能性だってあるよ、ここ数年のことを考えたら魔人王が復活したと考えた方が自然だけどね」
「ありがとうございます、では二つ目の疑問点、どのようにして禁忌の魔法を使い都市に侵入したのか、これについては少しヒントがあります、一つは禁忌の魔法の魔法陣が描かれていたのは全員男性、もう一つは騎士の話によると侵攻の前日魔人族らしき者に会ったとい市民からの報告がどうやら侵攻当日の朝に入っていたらしいのです、その後の侵攻の影響で誰が報告したかはわかっていないのが残念なことですが……」
「あ、」
とエリアたちは互いの顔を見ながら一言、言葉にもなっていない声を出す。
「何か思い当たることがあるのですか?」
「は、はいその報告にある魔人族らしき者に会ったのは僕たちです」
とエリアが重々しい空気間に圧し潰されそうになりながらも話す。
「なんという偶然でしょうか」
「運がいいですね、やはりここに呼んだことに間違いはなかったですね」
とルフルはどこか誇らしげに独り言を言う。
「そうですね……ではその時のことを詳しく教えてください」
エリアとネスとシェニーは互いに話を補完し合いながら当時の詳しい情報を伝える。
あの日何がきっかけで魔人にあったのか、それはどこで会ったのか、そしてあの時出会った少女とパイネという女性。
一通り当時の話を聞いた後、四人、いやレーヴァ以外の三人は考え込む。
考えがまとまったのかルフルが話し出す。
「魔人のことは後にしてまずはどうやって禁忌の魔法を展開して都市に侵入したのか、酒場で男性を誘惑し、その男性に禁忌の魔法を描いていたんでしょう、他の場所でもエリアさんたちの話通りなら同じような事件が起きていたらしいですし十中八九そうでしょうね」
「そうですね、騎士団がこの問題に気が付いていればこんなことには」
と悔いるようにリーハスが言う。
「これは私の責任です、スルトで魔族が活発になってきている問題ばかりに気を取られすぎた私の責任、魔族が活発化していたのもこれを隠すための目くらましだったんでしょう……」
とフェッテは悔いるリーハスを励ますように、あくまで責任は女王である私だと言う。
「いえ、五天としての魔人族を倒す責務を果たせなかった私の責任です」
とさらにフェッテをかばうようにルフルが言うとレーヴァが他人事のように話し出す。
「しょうがないでしょ、こっちはそもそも禁忌の魔法なんてことは頭から抜け落ちてるんだよ、対処のしようがない、今回の侵攻の犠牲は次への尊い犠牲だよ」
「ですが」
と何か言いたげにしたルフルは声を出すがレーヴァが強いまなざしでルフルを黙らせる。
「別に今回の侵攻で犠牲になった命を軽んじてるわけじゃないよ、だけどそんなに過去の失敗だけを振り返っていても何も進まない、それに誰が悪いとか、誰のせいだとかの話でもないってこと、そもそもの元凶は魔人族だし、ここで責任の取り合いしてなんになるんだよ、そんなことよりは次に向けて建設的な話し合いをしよう、次は四つ目の疑問点だね、魔人族の魔術と数」
と沈みゆく空気間だった空間を一気に変えて話を進める。
口調は軽いがそれは獣人の国スルト初代国王を彷彿とさせた。
「僕の知ってる魔人で今も生きてる魔人は三人、一人は僕が戦ったグシオン・カルス、斬撃を飛ばす魔術を仕えて威力は相当高い、剣技も僕の次ぐらいには高いんじゃないかな、長生きしてるだけある、二人目はルフルとエリアたちが会った少女の魔人、僕も名前は知らないけど黒い何かを操って攻撃してくるしその黒い何かはいくら攻撃してもびくともしない、僕が出会った魔術で一番厄介な魔術だね、最後に魔人王、他人から魔力を吸い取って自分の魔力にする魔術を持ってる、魔力量だけで行ったら世界一かな、あとはエリアたちが会ったパイネっていう魔人ね、それのことは僕は知らないかな、少なくとも魔人王との戦いの後に生まれた魔人だろうね、あの戦いで五天が大体の魔人族を打ち取ったからね」
「では少なくとも四人」
とフェッテが尋ねる。
「そうだね」
「ちょっと気になることがあります」
とルフルが手を上げてレーヴァに質問する。
「私が戦った少女の魔人が神器悪傷の鎌を持っていたんです」
「悪傷の鎌!? 実在してたんだ……」
「んだよそれ?」
とシェニーに近寄り小さな声で尋ねるネス。
「悪傷の鎌、大昔世界が混沌としていた時代に誰かが創った最初の法器の一つ」
と聞いてはみたものピンとこないネス。
レーヴァがルフルの問いに応える。
「知らないね、僕が戦った千年前は持ってなかったけどね、どこかで手に入れたんじゃないかな、神器なんて今どこにあるかなんてわかんないしね、そもそも実在したことに驚きだね、じゃあ最後に今回の真紅の目的について話そうか」




