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ノルダとエリアとネスとシェニーの四人は騎士に連れられ城の奥、さらに奥に連れられて歩いていく。
奥に奥に、階段を上がり内装は少しずつ豪華になっていく。
そういえば……五天様に会うのに城に行くのはどういうことだ?
三人の頭の中にまた疑問が浮かぶ。
そう、違和感はもう一つあった。
五天に会いに行くとはいえ現在のスルトの五天は一国の王ではなく騎士団のトップの総団長だ。
ならば城ではなく、別にある騎士団本部に行くべきだ、なぜに城へ?
そうこうしていると案内していた騎士が一つの扉の前で止まる。
「こちらです」
そう言うと騎士は扉を開け四人を誘導する。
ノルダは何の気無しに部屋に入っていく。
三人は扉の前で佇むが騎士がどうぞと手で三人を入るように急かす。
三人は渋々部屋の中に入る。
入った部屋の中には明らかに偉そうな三人が円卓を囲み椅子に座って待っていた。
二人は一目で分かった。
一人は街で、第四騎士団が壊滅させられたところで、魔人と戦っていたところで見た人……五天ルフル・スルト。
もう一人は一番初めに魔人と戦っていた大柄の男の人だ。
あと一人は……。
ノルダはその三人には目もくれず出されていた四つの椅子の一つに座る。
三人もつられて席に着く。
「呼んでくれてありがとね、それじゃまず自己紹介から始めようかな」
とノルダが一番に声を上げる。
すると待っていた三人の真ん中に座っていた騎士ではなさそうな、だが高貴な服を着た女が応える。
「そうですね、ではあなたから名前を申し上げてもらますか?」
「僕から? いきなりだね」
と少し渋りながらも口を開く。
「エリアとネスとシェニーには隠してたけど僕の名前はレヴィ・ノルダじゃないんだ」
?
三人は場の緊張、ノルダの唐突なカミングアウトから声は出なかった、しかし表情だけは、どういうこと? と言うような顔になる。
「僕の本当の名前はね、レーヴァ・スルト」
その名前を聞いてシェニーが机に手をつき身を乗り上げる。
「レーヴァ・スルト……そんなわけ……」
エリアとネスも察しが悪いわけでない、名前でなんとなく凄い人だと察する。
なんたって名前に国の名前がついているのだから、一般の人間ではそんなことありえない。
「レーヴァ・スルト、獣人の国スルトの初代国王であり初代五天、そして世界最強と言われた人間」
「いや〜照れるね」
「そして一説には巨人の国テュールを滅ぼした最悪の人間」
シェニーのその言葉に静かだった場が音ひとつない静寂な冷たい空気に包まれる。
エリアとネスはその言葉の意味は分かれどそれがどういうことかがわからない顔をする。
「どういうことだよ?」
と疑問に思ったネスが声を出す。
「たしかにレーヴァ・スルトが初代獣人族五天だってことはわかった、それ初代獣人族五天が最強の人間ってのは有名な話だ、だがよ、獣人族五天が巨人の国テュールを滅ぼしたってのはどう言うことだよ? 巨人の国は竜人の国と聖人の国の侵攻で滅んだんじゃねぇのかよ?」
「僕もそう聞いてます」
「だから一説ではって……」
「まぁこの話はまた後で今は自己紹介だよ」
とレーヴァは手をパン!! と叩き話を変える。
「それじゃ左から」
とレーヴァはエリアを手で指す。
「あ、あ、僕はエリア・ブラグルと言います!! 討伐者をしています!!」
「俺はネス・ウーピットだ、エリアと同じで討伐者だ」
「私はシェニー・タンタスです、二人と同じで討伐者です」
と三人が自己紹介をし終わると次はシェニーの左隣に座る大柄の見覚えのある男の番になる。
「私はリーハス・ウェンバ、スルト騎士団第一騎士団団長だ、君たちとはあの魔人と戦っている時に会いましたね、あの時は本当に助かった、ありがとう、では次は」
とリーハスは高貴な服を着た女に番を渡す。
「私はスルト13代目女王フェッテ・パプスであります、以後よろしくお願いします、では最後に」
とその紹介にエリア、ネス、シェニーの頬に冷たい汗がたらりと流れる。
とフェッテは最後に見知った女に番を渡す。
「はい、私は二代目五天でありスルト騎士団総団長ルフル・スルトです、よろしくお願いします、あとそこの三人、エリアくんはあの魔人と戦っている時に会いましたね、安心してください、もうあなたたちを騎士団は追っていませんしギムレにも第四騎士団を壊滅した件で報告していないので安心してください、ギムレからの刺客は来ないでしょう」
とルフルは三人にあの事件の行方を伝える。
その言葉に三人は肩を撫で下ろしひとまずホッとした表情をする。
「では今回のスルト侵攻について話します」
とフェッテが話の口火を切る。
「ちょっと待ってください、なんで僕たちがここに呼ばれてるんですか?」
とエリアは純粋な疑問を投げかける。
当然だ、エリアたち三人は他の四人と比べ身分が不釣り合いだ、呼ばれる理由がない。
「それは僕がルフルに頼んで呼ばせてもらったんだよ、僕なりの罪滅ぼしだよ」
とレーヴァが足を組みながら応える。
するとモジモジしながらルフルがレーヴァの言葉に付け加える。
「せっかくの機会だからとレーヴァが頼み込んできた、きましたので」
「私も困りましたのですからね、まさかルフル様からあんなに必死になって頼まれるなんて……」
と頭を抱えながらフェッテが呟く。
「それでは、時系列順に今回の侵攻を振り返りましょう」




