56 面の過去
時は戻りここはスルトの城の裏、ノルダと茶髪の少女が刀と黒く光る剣を交えている場面へと切り替わる。
カチッ!! カキン!!
(やるねこの女の子、剣技もなかなか、負ける気はしないけど、気がかりが三つ)
カキン!!
(一つはこの子の魔術、僕の想像通りの魔術ならめんどくさいね)
ザシュン!! ザシュ!!
ノルダが少女と剣を交えていると空からノルダめがけて数本の銀青色の光が降ってくる。
(二つ目はこれだ、あの爺さんが空に飛ばしてやがる斬撃、やっぱりめんどくさいな、魔術自体は単純なものだが威力がバカにならない、刀ではじくのも難しい)
ノルダは降ってくる銀青色の光を避けながら少女の剣を刀で受け流す。
(最後、三つ目、これが一番厄介なことだ、茶色い髪、黒い光を放つ魔術、魔人にさらわれた妹、最悪だがこの少女がエリアが言っていた妹の特徴と合致する、本当に最悪だが、この懸念のせいで加減してしまう、あと僕ってこんなに動けなかったけ?)
ッカ!!
(まぁ、まずはあの爺さんを何とかしないとな、、めんどくさすぎるこの飛んでくる斬撃が)
ノルダは刀を持っている手首ををひねると少女の黒く光る剣を弾く。
ノルダはそのまま隙のできた少女を回し蹴りで蹴り飛ばすと少女の後ろにいた老人のもとに走り出す。
「いやはやいやはや、その剣技どこかで見覚えがありますな」
老人はそうつぶやくと刀を一瞬で四振りする。
スルト振った刀の軌道上から銀青色に光る斬撃が走るノルダへと四本伸びる。
ノルダは正面からくる四本の斬撃から直角に走り出す。
斬撃は追尾するようにノルダの背後を追って走りだす。
(いやはやいやはや、良い対処をする、それになんという身体強化の練度か、私の斬撃が追いつかない)
ノルダの背後を追尾する斬撃は時間がたつほど短くなっていき、斬撃が短くなった瞬間ノルダは斬撃を斬って散らす。
(その行動、やはり私の魔術を知っている動き、さっきの剣技もそう)
ノルダは四本の斬撃の対処を終わらすと再度老人に向かって走り出す。
老人は斬撃を飛ばすことなく向かってくるノルダを正面から迎え撃つ。
カキンッ!!!!
ノルダと老人の刀がものすごい音を立ててぶつかる。
「いやはやいやはや、あなたどこかで私と会ったことはありませんか?」
「別に会ったことはないと思うけどね」
「いやはや、嘘はいけませんな」
「嘘? 面白いこと言うね、なんでそう思ったんだいお爺さん?」
「あなたの行動、私の魔術を知っているようでしたし、その剣技、私の知っている人間によく似ているんですよ、ですが口調も名前も違うんですよね」
「ぼけたんじゃないのお爺さん、それに爺さんは魔人だろ何年前のことだよ?」
「いやはやいやはや、ぼけたとは失礼ですな、私は魔人なので老いはありませんよ、そうですね会ったのは千年前のことですかな」
「やっぱりぼけてるじゃん、魔人にはわからないかもだけど、獣人はそんな長生きじゃないよ」
「いやはや、それは普通の獣人族の話ですよ、あなたは違いますよね五天スルトさん」
そう言うと老人はノルダの刀を弾き距離を取る。
「私の名前はグシオン・カルスでございます、そちらのお名前を今一度教えてください、よろしければ顔も見せてくださると嬉しいですな」
「名前だけは教えてあげるよ、レヴィ・ノルダだ、それに勘違いにもほどがある、今の獣人族の五天は二代目のルフル・スルトだ、五天は各種族に一人、二人いることなんてのはあり得ないんだよお爺さん、あと仮面ははずさない」
「そうですか、その泣いている狐の面は取ってくれないのですね」
そう言うと老人は剣を振りノルダに向けて斬撃を一本放つ。
ノルダはまた斬撃から垂直に走り出す。
するとノルダの目の前に少女がものすごい速さで剣を薙ぎながら立ちはだかる。
「『瞬深』」
黒く光る剣がノルダを襲う。
(後ろからあの斬撃、前からはめんどくさい魔術)
ノルダは刀を薙がれる剣にそって受け流しながら少女の上を飛びあがり二つの攻撃を何とかかわす。
ノルダは走りながら少女の隙ではなく斬撃を飛ばしてくる老人の隙を伺う。
(あの爺さん……まぁ隙なんて無いか、それよかあの少女の魔術だ、さっきので確信に変わった、あの少女の攻撃は避けるしかないな)
ノルダは老人の周りをぐるぐる回りながら放たれる斬撃を少女の剣を避けながら隙を伺っている。
(いやはやいやはや、あの子の魔術にも気が付きましたかな、さっきほどからあの子の剣を嫌って刀で触ろうともしない、いやはや作戦でもおもいつきましたな)
ノルダは突如方向っを変えて再びグシオンに向かって走り出す。
「ここは私が引き受けましょう、今のうちにあなたは城に向かってください」
とグシオンは手が空いた少女に向かって城に向かえという命令を出す。
(くそ!! そっちに標的を戻したか、いい感じにこっちに気を取られてくれてると思ったが……いや動いてない)
とノルダがほんの一瞬少女の方を見たその一瞬を見逃さずグシオンは刀をノルダの顔めがけて突き立て横に薙ぐ。
(!?)
ノルダは顔を傾けて突き立てられた刀を避けながら横に転がりグシオンから距離を取る。
(ぬかったな、前ならこんなことで気を取られなかったが、平和ボケしたか)
「いやはやいやはや、避けられてしまいましたが、そのご尊顔お見受けいたしましょう」
「冗談言うね、最初からこれが狙いだったくせに」
ピキッ!
と泣いている狐の面にヒビが入ると仮面は刀が当たった場所から二つに割れる。
「いやはやその顔忘れはしません、私に唯一剣技で勝った男、そしてかの時代、いや現代まで最強と謳われた男、そして最悪とも言われている男、五百年前殺されたとされていましたが、やはり生きていましたか、獣人国スルト初代国王であり初代五天レーヴァ・スルトさん」




