52 斬り落とすに足る
「なかなか楽しかったぞリーハス！！ 人間にしてはなかなかに健闘したな！！」
オウヴェルディは倒れているリーハス目掛けて拳を振り上げる。
（ルフル様、私はあなたのようになれましたか？）
そう想いに耽っているとクレーター状になった地面の上から声が聞こえる。
「おい！！ 見つけたぞ、二人いてどっちが魔人かわかんねぇが」
「とりあえず当たりってことよね！！ よかった凄い光った方に来て」
（誰か来たのか……）
「どっちが魔人か見分ける方法はねぇのか！！ っておい、エリア！！」
「魔力量を見る感じ……立ってる方！！」
「『光落』！！」
（光……）
「おまえが魔人か！！！！」
残り少ない力で体を持ち上げ上を見るとどこかで見たような顔の少年が黄色く光る剣を魔人に振り下ろしていた。
「そうだ威勢のいい人間！！！！」
オウヴェルディはリーハスに振り下ろそうと振り上げていた腕でエリアの剣を受け止める。
「避けろエリア！！ 『瞬雷突』」
エリアは斬りかかったオウヴェルディの腕を蹴って後ろに下がるとその上からネスが腕めがけて電気の走る剣を突き立てる。
ネスの突き立てた剣は見事にオウヴェルディの腕に浅いが刺さる。
オウヴェルディは腕を思いっきり振って腕を刺しているネスを振り払う。
そんなことをしている間にクレーターの上にいるシェニーは地面からツタを生やし、地面に倒れているリーハスをクレーターの上まで運ぶ。
「おい魔人！！ 白い仮面をつけた魔人を知ってるか？」
エリアは剣をオウヴェルディに向けて問いかける。
「魔人ではなく俺の名前はオウヴェルディだ、白い仮面をつけた魔人か？ 知らんな！！ ガッハッハッハ！！」
（嘘をついてる感じはしない……）
「テメェよく思い出せよ、おまえらがクラージュを落とした時だ」
とネスもオウヴェルディに剣を向けて問いかける。
「クラージュの時俺はまだ……おっと危ない危ない」
何かをまずいことを言いそうになったのか咄嗟にオウヴェルディは自分の口を押える。
「テメェなんか知ってんな！？ エリア！！ こいつから情報を引き出すぞ！！」
「わかってるネス！！ 絶対に情報を吐かせる！！」
そう言うと二人でオウヴェルディに剣を構えて突撃する。
「口だけじゃないだろうな人間ども！！」
一方そのころリーハスを回収したシェニーは自分の腰辺りから大きなツタを尻尾のように生やしそのツタでリーハスを掴んで安全な場所へ運んでいた。
「とりあえずここなら魔族には見つからないはず、ごめんなさいこんなところに置いていくことになって、私はあの二人の所に行かないといけないので、では！！」
とシェニーはオウヴェルディがいる場所から少し離れた路地裏にある家の中にリーハスを座らせすぐに出ていこうとする。
「ちょっと待ってください」
リーハスは慌てて家から出ていこうとするシェニーを呼び止める。
「きみたちも早く逃げるのです、あの魔人に勝てるのはこの国ではルフル様しかいません、きみたちは討伐者ですよね、戦ってくれるのは嬉しいが自国でもないのに命を賭ける必要はない、早く逃げるんだ」
「別に私はこの国のために戦ってるわけじゃないですよ、私は友達のために戦ってるんです、それに私たちなら勝てます、では！！」
「ちょっと！！」
シェニーはそう言い残すとすごい勢いで家を出ていった。
「あの魔人の弱点を……」
場面は戻り魔人オウヴェルディと戦っているエリアとネスは拮抗した戦いをしていた。
さっきのあの倒れてた騎士の人、この魔人と一人で戦ってたのか、凄い。
あとこの魔人ずっと笑いながら戦ってる、まだ余裕なのか？まだ魔術も見ていない。
でもこのクレーターを見る感じ……考えたくはないけど相当な威力の技があるはず。
「なかなかやるではないか！！ では！！」
「エリアなんかくるぞ！！」
「ネスも気をつけて！！」
エリアとネスはオウヴェルディから距離を取り警戒する。
「いくぞ！！ 『身体強化・中』」
そう言うと魔人はネスの目の前に移動して殴り込む。
ネスは避けることはできたがネスめがけて振った拳は地面にあたる。
拳が地面にあたるとクレーターの中に半径五メートル程のクレータが構築される。
（これあたったらやべぇな、しかも中とか言ってたし、強もあんのか？ もしかして今いるこのクレーターが強とかでできたとか言わなぇよな……）
（あの時、異様な魔族と戦った時の感覚を思い出せ、ノルダさんの特訓期間中ずっとあの時のことを考えてたんだ）
『閃光』」
エリアはものすごい速さでオウヴェルディの首元まで移動して斬り込む。
だが剣は首を斬り落とすに足らない。
（少し威力は上がったけど、あの時のようにはいかないか……）
「なかなかの攻撃だな」
「こっちも忘れんな！！」
ネスはオウヴェルディの足に剣で斬り付けるのではなく、剣を当てる一言。
「『動電』」
そう唱えると剣を当てたオウヴェルディの足が一瞬強く光る。
（なんだ？）
オウヴェルディがネスに殴りかかろうとするとあることに気がつく。
（足が動かない……）
まさかの出来事にバランスが崩れる。
「どうだ！！ それと！！」
ネスはオウヴェルディの振りかざした腕めがけて剣の刀身を手のひらで包み込み、包んだ手のひらの中で電気を発生させて振り翳す剣を一気に加速させる。
「『電迅刀』」
手のひらで加速された剣はものすごい速度でオウヴェルディの腕を斬り落とす。
「よっしゃ、斬れたぜ」
「やるな！！ 人間！！」
