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輪廻伝記〜この世界を生きている〜  作者: 今日 虚無
獣人の国スルト編

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49 強さは一つではない

「それはどうかな魔人、魔術が全てではないことを教えてやろう」


リーハスは大きく踏み込んで大剣を構え、オウヴェルディに向かって走り出し、再度大剣を振り下ろす。

オウヴェルディはまたも片手で大剣を受け止める。


「『シュニパイノ(罪の重さ)』」


そうリーハスが唱えると大剣の柄に描かれていた魔法陣が青く光りはじめ大剣を受け止めていたオウヴェルディの腕がぐっと下がる。


「なんだこの重さ!! 魔法か!!」


「どうだ、さっきより剣が何倍にも重たいだろ、強さを決めるのは魔術だけじゃないだよ」


振り下ろされた大剣は青い光が強くなるたびどんどんと重くなっていく。


「『身体強化・中』」


オウヴェルディはたまらずもう片方の腕を使って剣を振り払う。


「なかなかやる、次はこちらも『身体強化・中』」


そう言いながらオウヴェルディはリーハスに殴りかかるとリーハスは大剣の側面でその拳を吹き飛びそうになりながらも受け止める。

すると拳を受け止めた大剣の部位に青く光る魔法陣が浮かび上がる。


「『ファストゥフ(執着)』」


そう唱えると青く光る魔法陣からネバっとする青い何かが大オウヴェルディの拳にくっつき青く光る魔法陣から離れなくなる。


(意図的にこの魔法陣の書かれている場所に俺の拳を当てたのか、この男どれだけこの剣に魔法を仕込んでいる!?)


拳が大剣の側面にくっついてオウヴェルディが動けない間にリーハスは青く光る槍をオウヴェルディに打ち込む。


「『クライラスティフィ(天を穿つ槍)』」


「『魔力障壁』」


オウヴェルディは銀青色にに光る魔法人を展開してクライラスティフィを受け止める。

打ち込まれたクライラスティにオウヴェルディの意識が向いているうちにファストゥフを解除してリーハスは大剣をオウヴェルディの胴めがけて薙ぎ払う。

オウヴェルディは大剣が胴にあたる寸前に大剣から引っ付いて離れなかった拳が動くことに気が付くが防御には間に合わずもろに大剣を受けてしまいそのまま魔族と第一騎士団の騎士を巻き込み吹っ飛んでオウヴェルディは膝をつく。


(油断してたとはいえさすがに硬いな、魔人の胴を真っ二つにするのは難しいか、やはり首を斬り落とすか心臓にあたる部位を損傷させるかになるのか?)


吹き飛んだオウヴェルディを追ってリーハスは剣を振り下ろして追撃を仕掛ける。

オウヴェルディは瞬時に胴の半分まで切り込まれた傷を治して立ち上がると同時に拳を振り下ろされた大剣にぶつける。

大剣と拳はどちらも弾かれるがその隙にオウヴェルディは体勢を立て直す。

すかさず追撃を入れるがオウヴェルディはそのすべてを防ぎきり、大剣を掴む。


「その大剣面白いな、柄には剣を重くする魔法、側面には触れたものをくっつかせる魔法、他にはどんな魔法を仕込んでいるんだ?」


「知らん、そっちはなぜ防御に魔術を使わなかった? 身体強化に上澄みして強くする魔術なら身体能力の向上だけでなく身体強化のもう一つの側面、身体を硬化して防ぐこともできたはずだ」


「痛いとこついてくるなーもうわかってるくせによ、俺の魔術は身体能力の向上、魔術で身体強化の効果を上げてるわけじゃなくて、魔術で身体能力を上げてるわけだ、だから」


そう言うと掴んだ大剣ごとオウヴェルディはリーハスを遠くへ投げる。

リーハスはうまく着地してオウヴェルディの方に目を向けるがリーハスの目の前からオウヴェルディが姿を消す。


(どこに!? 上!?)


「『身体強化・強』」


そう言いながらオウヴェルディは上からリーハスめがけて殴りかかる。

リーハスは後ろにステップしてすんでのところでその拳を回避する。

オウヴェルディの拳はそのまま地面に当たると、地面はオウヴェルディの拳を中心として半径20メートル程が円状に魔族と第一騎士団の数十人を巻き込んで消しとんだ。


(!? 魔術でここまで身体能力を向上させれるのか!? これは獣人化よりも……)


その時リーハスはあることに気が付く。


あの拳自分の力に耐えれてないのか?拳がズタズタだ。


そう、オウヴェルディの拳は地面を殴った反動でズタズタになっていたのだ。

しかしオウヴェルディはその拳のまま空中で体をひねってリーハスに殴りかかる。

リーハスはまさか地面がなくなるとは思っていないので後ろにステップして避けたは良いものの次の攻撃へ対処する構えが遅れる。

リーハスは瞬時にこのままでは攻撃をまともに受けてしまうと判断し、ファストゥフの魔法陣が描かれた側面とは反対の側面をオウヴェルディに向ける。


「『リオウスゲスリ(一縷の光)』」


そう唱えると魔法陣は思わず目を閉じるほどにものすごい輝きで青く光る。

もちろんその輝きにオウヴェルディも目を瞑る。

オウヴェルディは強い光の影響で方向感覚を失うがただの勘だけでリーハスめがけて力を緩めることなく殴りかかる。

拳は偶然かはわからないが狙った通りリーハスの大剣にあたりリーハスは吹き飛ばされ消し飛んでクレーターになった地面の端に激突し倒れる。


(目は見えてなかったはずだ、怯んだりして悪くてもかするだけだと思っていたが、ピンポイントで私めがけて力も緩めずにあの拳のまま殴ってくるとは何て奴だ、背中がとてつもなく痛いな、剣にもひびが入ってる、これは……いや、私はルフル様にリベルを託されたんだぞ、なに負けを想像している!! あの時の私のようではないか、まだ戦いは始まったばかりだ何とかなる!! それにあいつもただ身体能力を上げたらいいとかの魔術ではない、ちゃんと弱点がある)


リーハスはめげずに立ち上がる。


「ガッハッハッハ、まだ立ち上がるか? よほど痛いだろうに、ガッハッハッハ次の攻撃で楽にしてやろうか」


「まだまだ始まったばかりだ魔人、それにお前の魔術わかりやすく弱点があるな」

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