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47 なぜ騎士になる?

僕はあの日から騎士になることを志し、16歳の年、体も人よりは大柄になり無事にスルト騎士団に入団することができた。

だがルフル様に会った、見たのは入団式で多くの新米騎士たちの前で挨拶している変わらず美しい姿だけだった。

騎士団内でもルフル様の噂は素晴らしいものばかりで、寝る以外の全ての時間を市民の小さな依頼から大きな依頼まで幅広く対応していることや、騎士にも優しく手合わせを頼んだら時間を作って相手をしてくれるという噂など様々な素晴らしい噂が流れていた。

なんていい人なのだろうか……。


だがスルト騎士団に入団して一つ気が付いた。

騎士になるだけではルフル様に直接合うことができないということに。

どこの国の騎士団も騎士団内に階級があり、一番上から騎士団総団長、下に第一第二と続いて第七までの騎士団が並ぶ。

その下が今の僕の位のスルトのただの騎士だ。

早く七つある騎士団に入らないと、あの人が僕の名前を忘れてしまう前に。


そんな思いを抱きながら今は騎士団の下っ端としてトッシュの周辺の村々を見回りをしている。

入団直後、七つある騎士団に入るための特別な試験が行われる。

試験内容は受験者同士の模擬戦、一対一で勝負をしていき勝ち上がった21名をそれぞれの騎士団に割り当てるという内容だ。

僕は入団直後の騎士に与えられる特別試験は無事に落ちた。

身体がでかく力があるからと言って勝ち上がれるわけではないらしい、勝ち上がるのはだいたいが魔術持ちか魔法に長けてる才能ある人間たちだ。

今はこうやって村の見回りをしてるが来年こそ入団直後の騎士団入団試験よりは難しいが、受かってやると意気込んで毎日筋肉を鍛え、得意でもないが魔法を特訓した。


そして一年後また落ちた。

今日も村の見回りをしている。

今日も村は平和だ。

魔人王がブレン島に逃げてから約1000年、世界の魔族の数は激減、襲われる方が稀だ、だが見回りは欠かせない、なんたってあの時の僕みたいに襲われる可能性はあるからだ。

それに魔族の数は減ったが魔族同士の競争が減ったことにより上級魔族が生まれやすくなっている。

来年こそ受かってやる。


そしてもう一年がたつと当然のように試験に落ちて僕は落ちぶれていた。

人より体を鍛えてさらに大柄になったって、多少魔法が使えたって試験で勝ち上がれるわけではない。

どれだけ魔法の練習をしたって天才には勝てない。

それに騎士になったは良いものの大した事件は起こらず、村人の手助けばかりの同じような日々の繰り返し。

あの日思い憧れた騎士の姿は次第に薄れていった。

なんで騎士になったんだろうか……そうだあの時のルフル様の姿にあこがれたんだ、あの人は何であんなに頑張れるんだ……確か五天様は神様からもらった力で悠久の命を得る、あの人は何年、何十年、何百年この仕事をしてるんだ、どんな思いで。


そんなことを考えただ無心で村人の手助けをしていたある日、村に一体の上級魔族がやってくる。


たまたまその村にいた僕に次々と村人が僕に助けを求めてくる。


「あっちにデッドドックが!! 助けてください!!」


(デ、デ、デ、デッドドック!? 上級魔族じゃないか!! あの日のバッドドックの最終形態……どんな運命だ、それになんでこんなところに、どうする今この村には僕一人しかいない一人では絶対に倒せ……いやチャンスだ、これを一人で倒せたら試験なんか受けづに一発で七騎士団に入団できるかもしれない!!)


「は、はいわかりました!! とりあえずあっちに避難を!!」


「おいデッドドックが来たぞーー!!」


そう叫ぶ男の後ろから巨大で真っ黒なオオカミが姿を現す。


(マズイ!!)


「『ポイスト』!!」


僕は魔法陣から大剣を取り出しデッドドックの顔面めがけて斬りかかる。


(硬い!!)


デッドドックは顔を大剣で斬られると大声で鳴きながら鋭い五本の爪で僕めがけて斬りかかってくる。

僕は大剣を構えてその攻撃を防ぐがものすごい力に負けて吹き飛ばされる。


(こんなに毎日鍛えたのに!! どうやって倒す!! 力では勝てない、この大剣でも傷をつけることができない。

どうやって倒す!! ここで倒したらちょっとはルフル様に届くかもしれない、ここで倒せたら……)


その時僕の目には涙が溢れていた。

ここまで落ちてしまったのかと……。

ルフル様はこんなこと考えない、自分のために戦ったりしていない、ルフル様は誰かのために戦っている、だからずっと騎士団総団長をやっていけてるんだ。

それに比べて僕は……。




(まずは村人の安全確保だ、そのためにまず騎士団本部に援助の要請、とても僕一人では守りきれるかわからない、騎士団本部のラルクの紙はこれだ)


僕はポケットから魔法陣の書かれた紙を取り出す。


ラルク(繋ぐ手)


そう唱えると紙は青く光りだし紙から声が聞こえる。


「こちらスルト騎士団本部です、要件は何でしょうか?」


「トッシュの近くのルラ村に上級魔族のデッドドックが出現しました、今は騎士リーハス・ウェンバ、僕一人で対応しています!! 至急援助を要請したい!!」


「わかりました!! いまトッシュにいる騎士団を早急にそちらに送ります!! 騎士団到着まで頑張ってください!!」


(僕はあの人にあこがれたんだ、別に忘れられたっていい、僕はあの時あの人のあの姿にあこがれて騎士になったんだ)

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