43 魔法陣
獣人の国スルト女王フェッテ・パプスが魔術を使ってリベル全体に情報を伝える数分前、エリアたちはずっと下水路で避難勧告が解除されるのを待っていた。
「避難勧告が解除されたらどうするよ?」
「もちろんトッシュに向かうでしょ!! ね? エリア」
「うん、まずはトッシュに行って何か手掛かりがないか情報を探す、その後は……」
と話していると下水路でエリアたちより奥で座っていた男がうずくまって背中を押さえ始める。
「熱い!! 背中が焼ける!! 熱い!! 熱い!! 誰か水を!! 水を!!」
近くにいた何人かがすぐに近寄ってエリアたちも遅れながらも近づく。
背中が熱いと訴える男の服を最初に近づいた人がめくると背中で銀青色に光る魔法陣が姿を現す。
「あの魔法陣!?」
その魔法陣を見てエリア以外の近寄った人々はすぐに距離を置くがエリアたちは逆に男に近寄る。
「大丈夫ですか!?」
「水を……背中に水をかけてくれ」
エリアは心配して男に声をかける。
男はその問いかけに水をかけてくれと答える。
「さすがに下水の水は使えない、シェニー水を出す魔法はある?」
「あるけど意味ない!!」
(何この魔法陣、魔法学校でもこんなの習わなかった!! え〜と魔人が使うってことはよっぽど古い魔法? いやでも魔法の起源の聖人族が知らない魔法? なにそれ?)
と凄い焦ったような様子のシェニー。
「意味ないって?」
「水をかけたところでその人の背中の痛みが消えるわけでもないしマシになったりもしない!! 水をかけるとかより魔法陣を解除しないと『ヴィボウツ』」
そう言うとシェニーは銀青色に光る魔方陣に手をかざし青く光る魔法陣を展開する。
「何してんだ?」
「今この人の体に描かれている魔法陣に私が線を加えて魔法陣として成立させないようにしてるの」
「うまくいきそうか?」
「わかんない! そもそもこんな魔法陣見たことないの、だからこの魔法陣の構造がわからない以上あてずっぽうで線を描いていくしかない、この人には悪いけど相当苦しい思いをすることになると思う、それよりこの魔法陣もう発動してるのよ、二人とも気を付けて何か起こるはず」
そうシェニーが言っているとシェニーと男の周辺の何もない空間から多くの下級~中級、そして数は少ないが上級魔族も出てくる。
「おいおいおいおいなんだこれ!?」
「これがこの魔法陣の効果? とりあえず魔方陣の解除が終わるまでシェニーを守らないと!!」
「バカ言うな!! こんな狭い場所でこの数の魔族と戦えるわけねぇだろ!! とりあえずこの下水路から外にでるぞ」
魔族が空間から続々出てくる光景を見てエリアとネスは武器を魔法陣から取り出すが逃げる体勢と取る。
その間シェニーは解除中の魔方陣を凝視する。
(まさかこの魔法陣……転送魔法!?)
エリアは武器をしまい魔法陣の解除の手が止まるシェニーと苦しむ男を両手に抱えて走り出す。
そのエリアを魔族から護衛しながらネスも下水路の出口目指して走り出す。
「多すぎだろ!! 四方八方から......こっちに襲いかかってきやがる!!」
「でも前より体がよく動く!! なんだかんだノルダさんに感謝だね!!」
「確かにな!! これなら上級魔族も一人で倒せそうだが!! 複数来たら詰みだ!!」
「大丈夫!! 下水路が狭くてあっちが詰まってるから、小さい下級魔族しかこっちにきてないよ」
「そうだなこりゃ運が良い!! が妙なことに俺たちの周りから魔物が出てきてやがる」
「なに当たり前なバカなこと言ってんの!? この魔法陣が原因なんだからそりゃ魔族も私たちの周りから出てくるよ!!」
そうエリアに抱えられ男の背中に書かれている魔法陣を解除しながら言う。
「そりゃそうだ、てことならシェニーその魔法陣の構造がわかったんだな!? なんとかなりそうか!!」
「構造が分かっても無理!!」
「シェニーもうちょっと頑張って!!」
「無茶言わないでエリア!! この魔法普通の魔法じゃないの!! この魔法は禁忌の魔法よ!!」
「んなこと関係ねぇ解除しろ!! その男のためにも!! それに俺らのためにも!!」
「解除がんばってる!! かんばってるから!!」
エリアに抱えられ手元と男の背中がブレ、さらに難解すぎる禁忌の魔法の解除に手間取るシェニーとただひたすら護衛をするネスはなんとか下水路を出ると街中が緑色のオーラに染まり同時に街中にスルト国女王フェッテ・パプスの声が響き渡る。




