39 五天vs少女
少女は声の届く範囲に入るとルフルに声をかける。
「こんにちは〜」
ルフルは人間ではないと感じながらも少しでもトッシュの市民の疑いがある以上武器を抜くことができなかった。
少女はルフルに手を振りながら近づいてくる。
「やあやあお姉さん、いや? お姉さんという見た目でもないね、それに思ったよりくるの遅かったね〜、ってまぁこんなもんか」
少女はルフルの顔をジロジロ見るとそう言う。
「あなたはトッシュの市民ですか?市民なら私のそばに来てください」
ルフルはいつでも武器を抜ける体勢で少女に問いかける。
「アハ、アハハハハハハ!! 本当に面白いね!! ルフル・スルト、この状況で私の身分確認かい?本当にお人好し、いや真面目バカだね」
その問いかけに少女は腹を抱えて笑い出す。
「そうですか、ならあなたは誰ですか?」
「う〜んどうしようかな〜? 私的には言っちゃってもいいけど〜後々面倒そうだからい〜わないっ!」
「そうですか……では遠慮なくあなたを切らしてもらいます」
ルフルは腰にある短刀を抜く。
「ちょっと待ってよ〜、私はキミを殺すつもりは無いんだけどな〜、だから戦わない方がいいと思うよ〜、ほらまずは話し合い、会話じゃない?」
「殺せる前提ですか……それにあなた、魔人と話し合うことなんてありません」
(なんだ? 何かの時間稼ぎ?)
「あれま……街がどうやってこんなことになったのか〜とか、ここの市民がどうなったのか〜とかさ!! 一時間ぐらい待ったんだよ? 少しぐらい話そうよ〜」
そう駄々をこねる少女。
「その二つはもういいです……」
ルフルはものすごい形相で少女を睨む。
「では一つだけ質問します」
「え? なになに?」
少女は嬉しそうにルフルの言葉に反応する。
「この都市にどうやって入ったのですか? 城壁も城門も壊されていないこの都市に」
「あれ? なにその常識すぎる質問は? そんなの少し考えたら、考えなくても……ってそうだった! 私も忘れてたよ! この作戦は世界がこんなんだからできた作戦だったよ〜、トッシュの人たちもクラージュの人たちもびっくりしてたな〜というわけで〜どうやって入ったかは教えてあ〜げない! 自分で考えてみて?」
その言葉を聞いた瞬間ルフルは一気に少女に近づき短刀を切りつける。
少女はその短刀を片手で軽々と受け止める、いや短刀が止まる。
(なにこの感覚?)
ルフルは刀を止められた感覚に違和感を覚える。
「もう話し合い終わりなの〜? じゃ〜あ〜私が独り言のように喋るから適当に相槌打っていてよ、それだったら会話できるでしょ」
少女はルフルの短刀を受け止めながらそう言う。
「なにをふざけたことを!!!!!!」
続けてルフルが短刀で切り付けるがことごとく黒い何かを纏った腕で受け止められる。
「じゃあ〜、まずは街がなんでこんなことになってるのかについてね〜」
ルフルの攻撃を手で軽々と受けながら呑気に話し始める少女。
「これはね〜、私の仲間が全部一気に爆発させちゃったの! 凄いよね〜、あとここにいた人がどうなったかはその爆発に巻き込まれて大体が死んじゃった〜、残ってた人もいたけど全部見つけ出してみんな殺したよ〜、だからもうこの街に人はいないね! あ! 案外すぐに話すことなくなっちゃった」
「ふざけるな!! 『絵空事』」
ルフルがそう叫ぶと短刀の先端を青く光り始め、その青く光る短刀の先端で少女の前の空間に文字を素早く炎の文字を書く。
ルフルが書いた炎の文字から少女に向かってものすごい勢いの炎が至近距離で放たれる。
「お〜これが噂に聞くキミの魔術ね!! 空間に文字を書いて書いたものを具現化させる魔術、ねぇねぇそれってどこまで具現化できるの? 死とか書いたらその人を殺すビームとか出せるの?」
少女はルフルから距離をとって呑気に質問をしてくる。。
(どうやら見た感じ無傷……あの至近距離で炎を受けても……? 体に纏ってるあの黒いのが原因?)
「ねぇ〜無視〜? お〜い?」
ルフルは少女の質問を無視して少女がなぜ無傷なのかについて考えていた。
(もしあの黒いのが原因ならどうやってあれを突破する? あれを突破しない限り攻撃が通らないとなると、あの黒いのは何が弱点なの? そもそもあの黒いのはなに? とりあえず炎がダメとなると……)
ルフルは空間に水と弾の文字を書いてその二文字をまるで括り、それに積・十と書く。
するとその文字は水が圧縮された弾となりそれが十に増える。
「おぉ〜ただ具現化するだけじゃなくてそんなこともできるの?」
ルフルの魔術に関心しながらただ避ける気もなく突っ立ってる少女の顔面目掛けて魔術を撃ち込む。
少女は後ろのフードを被りルフルの攻撃を防ぐと、また後ろは後退する。
(やはり顔をあの黒いので防いだということは、攻撃が通らないのはあれが原因、それにわかってはいたが水は意味がない、あとなんで後ろに下がるのか? 顔をあの黒いので守るということはその間見えもしないし、息もできないのか?あんなことするならずっとフードを被って顔を守っていたほうが楽なはずだ、だけどそれをしないということは何らかの不都合があるのだろう)
「顔を狙うのやめてよ〜、超絶可愛い顔に傷がついちゃうじゃん」
とやめてよ〜と言う割には少女は平気そうにしている。
「その顔ズタズタにしてあげますよ」




