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輪廻伝記〜この世界を生きている〜  作者: 今日 虚無
獣人の国スルト編

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35 私は人々を守るため

一方そのころトッシュ(スルトの都市)に魔人族が侵攻している時、リベルの城の一室では女王フェッテ・パプスが多くのお偉方に囲まれていた。

トッシュ(スルトの都市)でおよそ数えきれないほどの魔族が確認されています」

「魔人族と思われるものが三体確認されているようです」

「いまトッシュの騎士団が戦っていますが戦況は良くありません」

「リベルからも早く騎士団を派遣しましょう」

その時そんな騒がしい部屋の扉が大きな音を立てて開く。

扉を開けたのは白く先に行くほど黒くなるグラデーションのかかった長く美しい髪で、身長はそれほど高いわけではない五天ルフル・スルトだ。

ルフルは凄い形相でフェッテの下に集まる人々をかき分けながらフェッテの下に歩いていく。


「なんでしょうか騎士団総団長ルフルさん?」


フェッテは目は合わせないものの真剣な口調でルフルに話しかける。


「私に出陣命令を……」


「出しません、もうトッシュの中に入られている以上今からトッシュに向かったところでもう間に合いません、あとはトッシュの騎士団に任せるしかないのです、ですのでその話はまたあとでお願いします、他に報告のある方はいますか?」


「話はまだ!!」


フェッテはルフルを軽くあしらって元の公務に戻る。

報告をしていたお偉方はルフルの様子を伺いながらも次々とフェッテにトッシュについての報告をする。

ルフルは話を聞いてもらえないと分かりすぐに部屋を出ると部屋を出た先にリーハス・ウェンヴァ(第一騎士団団長)が申し訳なさそうな目をして待っていた。


「ちょっとこっちにきてくださいルフル様、話したいことが......」


「手短にお願いします」


リーハスはルフルを少し離れた別室に案内する。


「なぜ部屋に……聞かれたくない話ならばそこら辺の廊下でも……」


「申し訳ございませんルフル様!! 『アウハウケドュウ(拘束された鎖)』」

 

リーハスがそう唱えるとルフルの足元に魔法陣が出現し青く光り始める。


(ん!? これじゃ……)


ルフルは急いで魔法陣から出ようとするがもう遅く、魔法陣から青い鎖がルフルめがけて伸びてくる。

ルフルの手足首からも同様の青い鎖が出てきて魔法陣から出てきた鎖と結合しルフルは身動きを封じられた。


「申し訳ございません!! ルフル様!! あなたにはリベル(スルトの首都)を守ってもらわないと困ります!! なのでトッシュ(スルトの都市)には行かせられません」


「わかっています、これはウェンバあなたの独断じゃないのですよね? きっと……」 


(フェッテ・パプス様でしょ)


図星なのか一言も喋らず目を逸らすリーハス。


「ですが今はこんなことしている暇ありません」


ルフルはなんとか体を捻ってや、鎖を引っ張ったりして拘束を解こうとするが。


「無理ですよルフル様、この魔法を聡明なあなた様が知らないわけないでしょう、『アウハウケデュウ(拘束された鎖)』、魔法陣に入った相手の魔力を無理やり鎖に変えて自分の魔力とその鎖を繋げ動けなくする魔法、この魔法を解く方法は解除魔法を使う他ありません」


「だけど解除魔法を使おうとすれば術者に妨害され魔法陣を壊されるということですよね? そうなれば逃げる術なしと……」


ルフルは諦めたようにぐったりとする。


「ウェンバ騎士団長拘束を解いてもらえませんか?」


「それは無理な話です、私が拘束を解いてしまえばあなたは絶対に人々を助けにトッシュへと行くでしょうから」


「そうですか……」


ルフルは悲しそうに呟く。

リーハスも心痛いのかルフルからずっと目を逸らしている。


「解いてくれないのであればこうするしかありません……」


そう言うとルフルの手足が青く光り始めると部屋全体の空気が揺れだし、壁にはヒビが入る。


「まさか……獣人化……でも獣人化をしたとしても……」


青く光った手を振り上げると振り上げた手を拘束していた鎖がいとも簡単に引きちぎれる。


「この拘束を解く方法はもう一つあり、いえ全ての魔法に言える解決策が一つあります、それは物理でなんとかするということです!!」


ルフルはたちまちもう片方の腕と両足の拘束を無理矢理解除した。


(そんな方法が……さすがはルフル様……いやルフル様の獣人化でなければこんな芸当できない……いや!! そうではない!!)


「待ってくださいルフル様!! あなたが首都を守らないでどうするんですか!!」


「私は首都を守るためにスルト騎士団総団長になったわけではありません!! 私はスルトの人々を守るために総団長になったのです!! ここで侵攻されている都市を見捨てる総団長ではありません!! それにリベルにはウェンバ団長がいるじゃありませんか、少しの間よろしくお願いします」


そう言うとルフルは窓を、いや壁を突き破り城を出て行った。 

リーハスは追うこともなくただただ突っ立っていた。

その時の崩壊音に公務をしていたフェッテも机から立ち上がる。


(まさか……ルフル総団長を止めることに失敗したの?)


「ごめんなさいこのエンブス(魔力で動く乗り物)少しお借りします」


「あ、ちょっと!? って!? ルフル様!?」


ルフルは城の壁を破って騎士たちが慌ただしくしている中に降りるとそこら辺の騎士からエンブスを借りて、いや盗んで、エンブスの限界を超えたスピードでルフルからトッシュに向かった。

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