34 スルト侵攻 開始
あれからエリアたちは何事もなく就寝した。
ゼパルは一足早く起きて朝一で騎士団に昨日会った出来事について伝えに行った。
エリアたちはその二時間後に起きた。
騎士団に追われている以上、日の出ているうちは不用意に街に出れないのでゼパルの店内に置かれている机を囲んでこれからについて話し合っていた。
「なんで俺たちこうなったよ? とりあえずリベルでご飯食べようってなって、ご飯食べてたら騎士団に追われて、騎士団に追われた矢先助けてもらったゼパルさんの店で少し働かせてもらうことになって、店の手伝いかと思いきや妙な調査をさせられ、まさかのその調査対象が魔人族だってか? いい冗談だ」
ネスは椅子にもたれながら項垂れるように言う。
「確かに普通の人からしたら不幸かもだけど、確実に仮面の魔人に近づいた気がするんだよ! なんとかして昨日の魔人を捕まえて情報を聞き出ださないと!」
エリアは机に身を乗り出してシェニーとネスに訴える。
「確かに仮面の魔人には近づいてはいると思うけどどうやってあの化け物を捕まえるの?」
「う~ん」
「二人ともなんで捕まえれる前提なんだよ、都市一個滅ぼせれるぐらいの力のやつらだぞ、それに今は騎士団に追われてる身だぞ、まずはこっちの問題が最優先だ」
「そうだけど今仮面の魔人について、それに僕の妹についての情報を知れるチャンスが目の前にあるんだよ、このチャンスにしがみつけないようならこの先仮面の魔人を見つけるなんて出来っこないよ」
エリアの普段からは考えられないような真の通った強い声で訴えるがあまりいい反応をしないネスとシェニー。
ネスとシェニーもエリアの旅についてきた身、エリアの言い分を十分に聞きたいが相手は魔人族、一都市を一体で崩壊させられるほどの力を持つとされている化け物、旅のはじめ魔人族なんて私たちが強くなって倒せばいいと言っていたシェニーもいざ現実を目の前にすると足がすくむ。
「わかった……」
エリアはぽつりとつぶやく。
「みんな今日まで僕の旅についてきてくれてありがとう、ここからは僕一人で旅をすることにするよ、やっぱり魔人族に関わる旅なんて怖いもんね」
エリアがそう言うと椅子から立ち上がりゼパルの店の奥の泊ってる部屋に行き荷物をまとめて店を出る準備をする。
ネスもシェニーもそのエリアの的を得た言葉に返す言葉が見つからなかった。
エリアが荷物をまとめて店の扉の前に立つと一言店の机の上でうずくまるネスとシェニーに向かって言う。
「ありがとう」
そう言いエリアが店の扉を開けようとすると勝手に扉が開く。
「おっと、エリアくん!! 何してるんだい荷物なんてまとめて?」
勝手に空いた扉の前には息を切らしているゼパルが立っていた。
「ゼパルさん短いですがあ……」
エリアが喋ろうとしたときゼパルはガシッとエリアの肩を掴む。
「大変だエリアくんそれにネスくんシェニ、今さっきリベルの隣の都市トッシュが魔人族の侵攻を受け始めたらしくリベルに一応の避難勧告が騎士団から出された、君たちも早く安全なところを見つけて避難するんだ、いつリベルに侵攻してきてもおかしくはないからね」
ゼパルはそう言うと店の中に入り、必要な商売道具、貴重品をまとめだす。
ゼパルの言葉を聞いてネスとシェニーも椅子から立ち上がる。
「早く安全な場所に行くわよネス早く準備して、エリアも一緒に行くよ!!」
ネスとシェニーも自分の荷物をまとめて店を出る準備をするとエリアとネスとシェニーとゼパルは店の前に集まる。
「では私はリベルの避難所に行くことにする、ここで君たちとはお別れだね、ごめんね安全な場所まで連れて行ってあげられなくて」
「いえいえ二日間ありがとうございました」
三人はゼパルに頭を下げゼパルとは別の道に歩き出す。
街は非難する人々で混乱していた、あの時のクラージュのように。
「とりあえず魔族にも騎士団にも見つからない場所を探しましょう、この混乱で騎士団も私たちを捕まえる余裕なんてないはず」
エリアたち三人はひとまず落ち着ける場所を探しに混乱する街の中を歩き出す。
ー一方そのころリベルの城ー
リベルに城の一室では女王フェッテ・パプスが多くの偉い人に囲まれていた。
「トッシュでおよそ一万の魔族が確認されたいます」
「魔人族と思われるものが三体確認されているようです」
「いまトッシュの騎士団が戦っていますが戦況は良くありません」
「リベルからも早く騎士団を派遣しましょう」
その時そんな騒がしい部屋の扉が大きな音を立てて開く。
やっぱり軽い気持ちでいけるいけるってついていくと本気の人との空気って絶対に合わないよね。
でもシェニーとネスを責めないでください。この世界の魔人族は本当に強いんです。エリアの妹を探す目標ではなく仮面の魔人を倒す目標は世間一般からするとバカなことを言っています。だって一人で都市一つを滅ぼせる種族を倒そうとしてるんだから、それにそんな種族から今回は情報を聞こうとしてるんだから。でもエリアの生きる目的なんだからしょうがないよね。




