32 銀青色の魔力
一方その頃エリアたちはゼパルのおかげで少女とパイネという女の宿に誘われるのを回避して今ゼパルの店感味にいる。
「ありがとうございますゼパルさん!!」
「本当にありがとうゼパルさん!! いえゼパル様!!」
そう言いながらゼパルの手を強く握るエリアとシェニー。
「君たちこそお手柄だよ!! まさか初日で噂の女性と少女を見つけるとはね」
ゼパルは歓喜の声を上げながら二人の手を握り返す。
「そういえばよく僕たちの場所がわかりましたね」
「それはねすごく強く美味しそうな恐怖の香りがしたからだよ」
そう胸を張りながら言うゼパル。
「じゃあまずことの経緯を話そうかな、まず十数分くらい前だろうか、酒屋の店主から君たちが酒屋からいなくなったと連絡をもらってね、その連絡をもらってる最中に誰か魔方陣に接続してきたんだ、その接続してきたのがエリア君たちだと思ってね、折り返し連絡をしようとエリア君に接続を試みたら一瞬つながってすぐに切られて、それで緊急事態だと思い店を飛び出して少し行ったところでものすごい恐怖の匂いが漂ってくるからその匂いを追っていったら君たちに会えたんだ」
「エリア、ゼパルさんと連絡してたの!?」
驚いて大きな声を上げるシェニー。
「うん、ネスとシェニーがあの女の人と何かもめているときに突然ポケットが青く光りだしてさ、手を引いてる女の子にばれたら危なかったし緊急性が伝わればと思って、一瞬だけ出てすぐに魔力を遮断して連絡を絶ったんだ」
「じゃあ私かネスのどっちかの魔法がゼパルさんに繫がってその折り返しがエリアに行ったってことね、それですぐに切られるもんだから緊急だと感じたゼパルさんが探しに来てくれたと……それで……ネスはなんでさっきからそんな今から死にますみたいな絶望の顔をしてるの?」
シェニーが短く話をまとめた後ネスの異変に気が付く。
いつもは口悪く文句たれているようなところ一言も喋らず下を向いているネス。
「怖かったですよね~、あんな不気味な女性と少女の宿に連れ込まれようとしてたんですから、でもあなたのその恐怖の匂いのおかげで君たちを見つけることができました元気を出してください、それに君たちを見つけた時に騎士団に怪しい二人組がいると連絡もしておきましたから、匿名ですし怪しい二人組との情報だけなので動いてくれるかは怪しいですが」
「人攫いだの言ってくれれば騎士団も動いたはずなのに私たちの情報を伏せてくれたんですよね、ありがとうございます」
シェニーは深々と頭を下げる、それを見てエリアも頭を下げる。
「いえいえ噂の二人組を見つけてくれただけでも大収穫だよ」
「そうじゃねぇんだよ……」
やっと下を向いていたネスがボソッとつぶやく。
「そうじゃねぇんだよ!!」
突然溜めていたものを出すように大声を出すネス。
「なによ急に大きな声出しちゃって」
「そんな酔っ払いの事件とか不審な二人とか人攫いだのそんなちんけな話じゃねぇんだよ」
怒りなのか恐怖なのかわからない感情に苛まれながら叫ぶネス。
そんなネスを見たこともないエリアとシェニー、もちろんゼパルもその様子に驚きを隠せない。
「別にちんけってわけでもないでしょ」
「俺は見たんだよ」
「なにを?」
「あの女の魔力だ、シェニーも見ただろあの女の魔力」
「いやごめん、ポケットにいれた手に魔力を流されたから見てなかった」
「一瞬だったが絶対に見たんだよ、あの女の魔力が銀青色に光っているところを」
その言葉を聞いた瞬間一気に空気が変わる。
「銀青色って……」
「私たちの青い魔力とは別の魔力」
シェニーとゼパルが考え込んでボソッとつぶやく。
「魔人族の魔力の色」
エリアが小さくつぶやくと急いで店を出ようとする。
「なにしてるのエリア」
「ちょっとどこに行くんですか」
シェニーとゼパルが必死に止める。
「魔人族なら仮面の魔人のことも知ってるかもしれない!!」
「知ってるかもだろうけども、今からあの場所に行ってもいるわけいし、それにエリア一人が行ったところでどうこうできる相手じゃない」
「そうですよ! 魔人族は一体で都市一つを壊滅させれるほどの怪物だって言われてるんですから!」
何とかしてエリアを落ち着かせネスが見た魔力について四人で話し合いをする。
「それで本当に魔力の色は違ったわけ?」
「あぁ絶対に違った、あいつが魔方陣に魔力を流して魔方陣を破壊したとき、一瞬青じゃなくて銀青色に光ったんだ」
「それが見間違いでもなく本当のことならばそのパイネと呼ばれていた女の人、そしてそのパイネと一緒にいた少女も魔人族の可能性が高い」
「最悪二人最低でも一人……」
「そうなればリベル存亡、いやスルト存亡の危機ね」
「そうですね、とりあえず今日は夜も遅いのですし、この件は君たちのことは伏せて明日の朝一番に私が騎士団に報告しに行くよ」




