30 どれだけ可愛く怪しくてもついて行かないこと
「そうですね! 友達なんてほっといて遊びましょう!!」
エリアはもう諦めたのか清々しい顔で樽の中から立ち上がり声をあげる。
ネスとシェニーは(そっちの路線に切り替えるのね!?)とエリアの顔を見る。
(だってもう無理じゃん!!)とエリアは静かに頷く。
「いいねキミ! そうだよね~、友達なんて忘れて私たちと遊びたいよね〜」
と少女が嬉しいそうに言う傍ら頭を抱える女。
「ところでキミは私かこっちの女の人どっちと遊びたい?」
そう少女から質問される。
(どっちなんだエリア!?)
(どっちなのエリア!?)
この地獄の質問にネスとシェニーは固唾を飲む。
「そうですね、僕はあなたと遊びたいです」
エリアは気にもかけず気楽に答えながら少女を手で指す。
少女はその言葉に嬉しくなったのかエリアの手をガシッと掴み、縦横に感情を表すように振る。
「キミ本当に見る目があるね! そうよねっ!」
そう言いながら女の方を見る少女。
「はい! 見る目がありますね!」
(あの子やるね)
女はエリアに向かって少女には見えないようにグットサインを送る。
(なにあの女の人? それでなにこのネスとシェニーからの冷たい目線は……)
エリアはそれを見ても、なぜグットサインをされたのかはわからなかった。
ネスとシェニーも何事も問題が起きずにホッとしながらも、エリアの好みが小さな少女タイプなのかと少し引いていた。
「じゃあ宿に連れて行ってあげるから、そこの二人もついておいで~」
少女はエリアの手を引っ張りながら酒屋を出ていき宿へと連れていく。
その二人に女が付いていき、その後ろのエリアとシェニーが付いていく。
「これどうするんだよ、この状況でラルクでゼパルに連絡しようとしたらバレるだろうし」
「でも隙を見つけて連絡するしかないでしょ」
「隙つってもあの女、さっきからちらちらとこっちを警戒してやがる、あれじゃ隙なんて出来っこねーぞ」
「宿に着くまでが勝負ね」
そうコショコショ話しているネスとシェニーの前を歩きながら警戒する灰色で長い髪の女。
そのさらに前をエリアの手を引っ張りながら歩く黒髪の少女という構図だ。
「あの~すいません、お姉さんの宿ってどこにありますか~?」
前を歩いている女に駆け寄って質問をするシェニー。
「もうすぐで見えてきますよ」
(え? そんな近くなの宿!? 逃げられる隙を与えないためか)
シェニーは手を後ろにまわしネスに隙はない、作れないと手を小さく横に振り伝えようとする。
(あれは何のサインなんだ? 今連絡しろか? もう無理か? それともこっちに来て会話に混ざれか? いや左の路地に逃げ込め……これか!!!!)
ネスはシェニーのサインを見てそう判断するとネスは左にある路地に素早く走り込む。
しかしその行動をシェニーと話しながらも見逃さなかった女はものすごい速さでエリアの前に立ちふさがりネスが路地裏に逃げ込むのを阻止する。
(マジかよ……こいつただもんじゃねぇぞ)
(ネス何してるの!? てかなにあの女の人!?)
「君どこに行こうとしてるのですか? 一人で後ろをとぼとぼと歩かずに私と話しましょうよ」
「お、おうよ」
ネス、シェニー、女の間に冷たい空気が立ち込める。
「なにしてるの~、もう宿すぐそこなんだから~」
その時先頭を歩いていた少女が声をかける。
「はいわかりました、では行きますよ」
女はそう言うとネスを置いて歩きだす。
だがネスはその時女からものすごい殺気を感じ取った。
「何してるのネス!」
そう言いながらバンッとネスの肩を叩くシェニー。
「すまん」
「どうする? エリアはあの女の子に捕まってて何もできそうにないし、もう宿に着くらしいしってネス?」
「さっきの行動であいつらが黒だってことがわかった、なら人通りは少ないが騒ぎを起こせば人目が付くここではまだ下手な動きはできねぇだろ? それにグレーじゃなく黒なら躊躇する必要もねぇ、あいつらの宿に着いたら終わりだ、なら思い切って今ここでラルクを使う!」
「一様この国では私たちも黒だよ……」
ネスがそう言うと樽に隠れる前にゼパルからもらっていたラルクの魔法陣が描かれた紙をポケットから出し、その魔方陣に魔法を流す。




