18 見た目で判断したらやっちゃうよ?
―場面は一旦変わり―
街の魚屋や八百屋、昼に空いている店は軒並み閉まり、扇を持って踊っている人、鳴り響く三味線の音色、夜になると雰囲気はガラリと変わる繁華街。
ここはその中にある一つ酒屋。
酒屋では人々がお酒を飲みに飲み、酔っ払っている。
「おい! 知ってるか〜、最近近くの森で、ものすごい音がするらしくてさ〜、噂では商人がその森付近で魔人を見たらしいぞ〜」
「知ってるぜそれ! 昨日か忘れたが、その森から何人かが出てきてリベルに入っていったのを見たってやつがいたぞ!」
「ハ! そいつらが魔人なんじゃねぇ〜のか〜、そんなやつの入れるとかリベルも終わりだな! ハッハッハッ!」
酔っ払った男二人が笑いながら変な噂話をしている。
その様子を見ながら遠くでコショコショ話しをしているおしゃれな服を着た黒髪で肩ぐらいの長さの少女と灰色の長い髪の女がいる。
「早く行ってきてよっ」
少女が女に体を傾けそう言う。
「イェリスさんが行ってきてくださいぃ」
少し怯えてそう言い返す。
「毎回言ってるじゃんっ、行ったっていいけど、どうせ私が行たって成功しないってっ」
気まずそうに......。
「せ……成功しますよ」
「成功しないよっ、私が行ったらいつも軽くあしらわれて、結局パイネが行くことになるんだから、はやくっ」
「イェリスさんっ、行ってくださいっ、イェリスさんが行った後なら助けないと! ってなって勇気がでるんです」
パイネが言い返す。
「嫌だよっ、いっっっつも振られるだけだよ、次振られたら殺しちゃいそうだよ」
「イェリスさん可愛いのに不思議ですよね……」
「そうよね、こんなに可愛いのに、なにがダメなのかな〜、ってそんなことは後でいいのっ、早く行ってきてっ」
そう言うとイェリスはパイネを酔っ払っている男2人のもとへと押し出す。
オットットとなりながら押し出されたパイネがイェリスの方を振り返るとイェリスはニコニコで手を振っている。
パイネは急いでイェリスのもとへ走り込み、イェリスの手を引っ張ってイェリスを酔っ払い男二人の前に突き出す。
イェリスが振り返るとパイネが凄い勢いで頭を下げていた。
イェリスはしぶしぶ。
「えっ、えっと〜私と宿で一緒に飲まないっ! お兄さんたち!」
イェリスはすっごいかわいいと思っている声と仕草で誘ってみる。
男たちは顔を見合わせて嘲笑うと、
「服装からして異国の子供か? ほら子どもは帰った帰った!」
そう手でシッシッと追い払う仕草をする。
(こいつら殺そ〜う)
イェリスはものすごい殺気で二人を睨みつける。
パイネは急いで酔っぱらっている男二人に近づく。
「ごめんなさい私の妹が! あの〜良かったら〜、一緒に私の泊まってる宿で飲みませんか?」
パイネがそう誘うと、男二人はパイネを舐めるように見ると、顔を見合わせニヤリと笑い、誘いにウキウキで乗る。
パイネがこっちですと酒場から出して宿の自室に連れ込む。
(なんでいつも選ばれるなはパイネなの!? こんなにかわいいのに……)
それにトコトコとついていくイェリス。
男たちが呑気に自室に入った瞬間、男たちをパイネが殴り一瞬で二人を気絶させる。
「任務達成〜、おつかれさま〜」
そう不服そうに言いながら部屋に入ってくるイェリス。
「お疲れ様です」
「ほ〜ら、こいつらもそうだったよ、私の何がいけないの? こんなに美少女なのにっ! 声を可愛くしてみたのにダメだったし! 鬱憤ばらしに一人殺していい?」
「ダメです殺人で騎士団にバレたら計画が台無しですよ! 魔人王様に怒られますよ!」
「いいじゃん! 私が出した案なんだし!」
「これイェリスさんの案だったんですか!?」
「そうだよ〜、この美少女っぷりをみんなに見せびらかしてあげようかな〜って思って」
パイネは小さくため息をつく。
「じゃあ魔法陣を刻み込みますね」
パイネがそう言うと上半身の服を脱がせて背中に魔法陣を描きだす。
その魔法陣に重ねて魔法陣を空に描き発動させる。
「どうです? 背中に描いた魔法陣見えませんよね?」
「見えないよー」
何も見ずに答えるイェリス。
「ちゃんと見てください!」
「見えない魔法陣を描くなんてミスらないよ」
気絶しているもう一人にもパイネが同じことを施す。
「パイネ、この二人の記憶も消しといてね~」
「はい」
魔法陣の刻み込みが終わると紙に宿代払ってね! と書いた紙を置いていき二人は宿を出た。
夜の街を歩きながらパイネはイェリスに質問する。
「そう言えばさっきのやつ変な話してたなぁ〜」
「そうですね、そんなことよりイェリスさんあと何人ぐらいこれやるんですか?」
「う〜んあと30人ぐらいかな〜」
「まだそんなに!?」
「まだって始まったばっかでしょー」
闇の企みはまだ続く。




