1 はじまる
この世界はあらゆる生物が魔法を使って生活をしており、五つの知性ある種族、人族、聖人族、竜人族、巨人族,、獣人族が国を作り世界を統べている。この五つの種族とはずれて魔人族という知性ある種族が世界の敵として存在している。
これは人族、聖人族、獣人族、巨人族、竜人族の知性ある五つの種族が秩序を作っている世界。世界には魔族、魔人族と呼ばれるものたちが世界共通の敵として存在している。この物語はそんな世界で生きる一人の人間の話。
始まりの舞台は、魔人族の王が眠っているブレン島から一番近い人族の国ヘイムダル。
大陸では西側に属しており、石レンガの建造物が特徴的だ。住む人間の多くは人族であり、公益が盛んな国でもある。
大陸繋がりの隣国は獣人の国と聖人の国、海を挟んで竜人の国に接している。
唯一、神が作った国であり、国という概念を創った国。
そのヘイムダルの一都市、防衛前線と呼ばれる都市クラージュが始まりの舞台だ。
クラージュとは千年前、魔人王と五天率いる知性ある五つの種族が最後に戦った地。
クラージュには象徴ともいえる大きな城壁がブレン島側に建てられており、人の国ヘイムダルの首都ヘルトからは商業、避難用に大きな一本道が敷かれている。
防衛前線都市と言われる理由は簡単、世界で一番ブレン島に近いからだ。
最後に、話に出るブレン島は、千年前、戦いに敗れた魔人王が眠る島だ。
この島には魔力残滓が謎の原理で世界中から集められ、大量の魔族が発生するような仕組みになっている。
各国はこの発生する多量の魔族のせいで眠る魔人王にとどめが刺せない状態だ。
と、こんな世界で、人の国ヘイムダルに属する一都市クラージュ、その郊外にある家の庭で双子が木刀で戦っている。
一人は少し内気で優しい黒髪短髪の男の子、双子の兄エリア・ブラグル、もう一人は反対に明るく優しい肩までの長さのある茶髪の女の子、双子の妹テレサ•ブラグル。
上から振り下ろすテレサの木刀が黒く光る。
「ハァァァ」
それに対して下から振り上げるエリアの木刀が薄い黄色に光る。
「オリャャャ」
振り下ろされたテレサの木刀に負けエリアは地面に倒れる。
「もう終わりにしないテレサ?もう疲れたよ、これ以上ボコボコにされるのは嫌だよ、一人で練習していい?」
あまりにもボコボコにされ萎えた状態でテレサに問いかける。
「嫌よ!昨日思いついた必殺技まだできていないもの!まだやるわよ!」
テレサはエリアとは違いあらゆることが簡単にできてしまう天才気質の子だった。
元気があふれんばかりにテレサは答えを返す。
エリアはいやいや立ち上がりしぶしぶ木刀を構える。
その時、エリア、テレサの母ジュリエが家の方からこちらを呼ぶ声がする。
「エリア、テレサこっちに来なさい〜今日は基礎魔法についての授業をする約束よ〜」
家の玄関に立って手を振っている。
彼女はジュリエ・ブラグル。
黒髪長髪でおっとりとした彼女はヘイムダルの主都ヘルトの魔法研究局の元局長である。父との結婚と同時に退職をしている。
エリアとテレサは嫌々家に帰っていく。
家に帰るとここに座れと言わんばかりにジュリエは座って待っている。
「昨日約束したわよね〜羊のステーキを作ってあげる代わりに明日は魔法の授業をしてあげるって〜」
ジュリエは手を合わせて頬に当てながら言う。
「母さん、私たちは魔術を使えるんだから魔法なんていらないでしょ?」
とテレサは言う。
「あなた達は身体強化しか使えないでしょ〜?それに〜身体強化って言ってもそう呼べれるほどでもないし〜剣ばっかり振ってても立派な騎士にはなれないわよ〜」
とジュリエは受け流しながら二人を席に着かせ授業を始める。
もちろん騎士にもなりたいけど……。
「それでは授業を始めま〜す、まずは三つの基礎魔法、身体強化、魔力障壁、魔力弾から教えていくわよ〜」
そう言うと分厚く大きな本を二人に見えるように開く。
多分魔法研究局から持ってきた本だろう。
「授業よりも実践で教えてよー、話聞くだけじゃ面白くないー」
とテレサは言いエリアもうんうんその通りだよ!と頷く。
「たしかに実践も大切だけど〜授業も大切よ〜、それに実践よりも授業は動かなくていいから楽じゃな〜い」
二人はダメダメ感満載の返答にがっかりする。
そしてニッコニッコで授業を再開するジュリエ。
「ではまず基礎魔法で一番簡単な魔法、『身体強化』から教えま〜す、身体強化は普通に生活していればある程度使えるようになる魔法よ〜、身体能力を上げたり身体を頑丈にしたり、それに物に強化を付与して物の性能を上げたりできるのよ〜、身体強化というよりは、自分や他のものを強化する強化付与と呼んだほうがいい魔法ね〜、この魔法が得意な種族が獣人族と竜人族、獣人族の人は身体強化を超えた獣人化っていうのをできる人がいるそうよ〜」
「じゃあ、人族も得意な魔法があるの?」
とエリアが聞いた。
「この後に言おうと思っていたんだけど〜、人族が得意な魔法はないわよ〜でも苦手な魔法がない、というのが特徴よ〜」
「苦手な魔法がないってどういう事?」
とエリアが聞く。
「人族以外の知性ある五つの種族は得意な魔法もあれば苦手な魔法もあるの〜例えば、さっき言った獣人族は〜身体強化を得意としている代わりに魔力障壁、魔力弾が苦手なのよ〜、もちろん全然できないということではないわ〜平均的な魔力障壁、魔力弾を使うことは獣人族のみなさんもできるわ〜、だけど多くの獣人族の人々は平均を超えることは難しいと思うわ〜」
「次は魔力障壁よ〜、魔力障壁は自分の魔力で魔方陣を作って壁をつくり攻撃を防ぐことのできる魔法よ〜、この魔法わね魔力で魔方陣を書いて自分の魔力を実体化させるという魔方陣の作り方と魔力の実体化の練習になるわ~、だけど魔力障壁は物理には弱くて〜魔法には強いっていう特徴があるの〜、練習したらある程度は物理攻撃にも対抗ができるようにはなるわ〜この魔力障壁を得意としているのが巨人族だわ〜」
「最後に魔力弾よ〜、基礎魔法で一番難しい魔法よ〜、一番難しい理由わね~魔力を魔力障壁のように魔方陣を使って魔力を実体化させてその魔力を遠くへ飛ばすっていうもう一つ過程が加わるから魔力障壁よりも難しいの~、魔力弾わね~威力を上げることも大事だけどより遠くまで飛ばすことが一番大事なの~これはね遠くに行っても自分の魔力が途切れないという練習になるわ~この魔法を得意としているのが聖人族だわ〜」
「これがこの三つの魔法が基礎魔法と呼ばれ練習しないといけない理由だわ~」
と長い基礎魔法の授業が終わったころにはエリアとテレサの二人は最初の態度とは一変して真剣に聞いていた。
「どうする~?基礎魔法の授業は終わったけどまだする~?」
「私もっと聞きたい!」
「僕ももっと聞きたい!」
と二人とも体を前に倒し興味津々にもっと授業をしてほしいとお願いする。
「じゃあ~、魔術と禁止魔法についてお父さんが帰ってくるまで授業をしますね~」
「あなたたちの持っている魔術は魔法では簡単にできないことを簡単にできてしまうものでね~一定の魔力量を持った人がたま~にもっている才能みたいなものよ~」
「じゃあ!私たちってすごいってことよね?!」
とうっきうっきにテレサが言う。
「確かにすごいけどあなたたちと同じように魔術を持った人はこの世界に何人といるわ~」
「そんなにいるの?!」
と二人は驚きながら言う。
「そうよ~、だけど~その中でも使い方を理解していない人や~、そもそも自分の魔術に気づいていない人もいるし~、使い方を理解していてもその人の理解の仕方によって魔術の使い方も変わるわ~」
「ほえー」
「だから~まったく違う魔術だと思っても実は同じ魔術だったということがあるらしいわ~」
「じゃあ次は禁忌の魔法について~」
と授業を進めようとしたとき玄関の扉が開く音がし、父が返ってきた。
彼はスログ•ブラグル
茶髪でやたらガタイのいい彼は防衛前線都市クラージュにヘルトから派遣された七つある騎士団の第三騎士団団長である。
「おお!勉強をしていたのか!えらいな我が子供たちよー!」
と大きな腕で二人を抱きしめ大きな声で褒める。
「離れてよ!お父さん!」
二人はうざったそうにしていながらも内心うれしく思っている。
「さてと〜夕飯の準備でもしましょうかね〜」
ジュリエは夕飯の準備を済ませ一般的なご飯が机の上に並べられる。
エリアの家庭は夕食は家族全員でご飯を食べるようにしている。
ご飯を食べているとジュリエが思い出したかのように言う。
「そういえば〜明日はヘルトで神誕祭が開かれる日よね〜」
「そういえばそうだったな!エリア、テレサ行ってみるか神誕祭?」
「行きたい!!」
エリアとテレサはウキウキで答える。
―次の日―
「エリア、テレサ起きなさ〜い、神誕祭行くんでしょ〜」
「行くー!!!!」
二人はその声を聞き元気いっぱいに飛び起きる。
出かける準備をして朝ごはんはお祭りでいっぱい食べたいからと言って二人とも食べずに家を出る。
二人はジュリエと手を繋いでクラージュへと歩いている。
「今日はヘルトに行くんでしょ?なんでクラージュに行ってるの?」
とテレサは言う。
「ヘルトまで送ってくる運び屋さんに会いにクラージュに行ってるのよ〜ここからクラージュに向かったらお祭りが終わっちゃうわ〜」
「そういえばお父さんはどうしたの?」
とエリアは聞く。
「お父さんは今日もクラージュを守る仕事よ〜今日も仕事だ〜って一緒に行けないのを残念がってたわよ〜」
それからクラージュでヘルトまで送ってくれる運び屋を拾い無事にヘルトに着いた。
エリアとテレサはクラージュよりも大きな街並みに目を輝かしている。
クラージュは一応防衛都市として機能をしているので煌びやかな街並みというよりは気の引き締まるような質素の街並みになっている。
それと比べ、ヘルトはヘイムダルの首都であり王がいる都であるので、高く大きな石レンガ造りの建物や見た目がオシャレな石レンガ造りの建物が建てられている。
そんなヘルトも年に一回の国を挙げてのお祭りなので、より一層華やかな街になっている。
たくさんの屋台、建物から建物は繋がれている装飾品、道で芸をしている人々。
「お母さんあそこみてみて!!!!ご飯屋さんがあるよ!!!あそこにもある!!!あそこにも!」
テレサは美味しそうな匂いのする屋台に指を指して、早く!早く行こう!とエリアは母の裾を引っ張る。
「では!ご飯屋さん巡りをしますか!」
とジュリエは張り切って言うとエリアとテレサは手を突き上げる。
「おー!!!!!」
一通りの屋台を周った三人は市場にある広場で休憩していた。
エリアはその広場で気になるものを見つけた。
剣を突き上げる女性に対して五人が屈んでいる像だ。
指を指しジュリエに聞く。
「お母さんあの像はなに?」
「あの像はね〜導きの神様と〜神様に力を貰った五天って呼ばれる人たちなのよ〜」
「導きの神様ってなんなの?」
と屋台で買ったご飯を口いっぱいに入れながらテレサは聞く。
「導きの神様はね〜あの剣を上に挙げてる人、この人の国ヘイムダルを創った神様でね〜魔人王を倒すために世界の国々をまとめた凄い神様なのよ〜この神誕祭はこの神様が生まれた記念すべき日なのよ〜」
続いてエリアも聞く。
「じゃあ五天っていう人たちはなに?」
「あの人たちは〜神様から力を分けてもらった知性ある五つの種族のリーダーさんたちよ〜魔人王との戦争の時はとても活躍してくれたそうよ〜それに今でも各国の王様はは五天って呼ばれる人たちなのよ〜」
そんなこんな話をして、少し街を見て周りクラージュへと帰った。
帰る頃にはすっかり夜になっており、家に帰ると父が待っていた。
玄関を開けると父が飛び出してきて2人をいつも通り強く抱きしめる。
「おかえり!エリア!テレサ!どうだった!?神誕祭!楽しかったか!?」
「楽しかったよ!!」
うざったそうに二人は言う。
「いやー俺も『トゥーミ』(盗聴魔法)でみんなの話を聞きたかったんだがな!お母さんに止められた!ハッハッハッ!」