17 特訓内容
ノルダはエリアに近づき腹に手をあてる。
「苦手なんだけど『レナトゥス』」
そう言うと手の甲の上の空間に魔法陣が描かれ、魔法陣が青く光る。
エリアが感じていた痛みがひいていく。
「ありがとうございます……」
『レナトゥス』とは他者に身体強化を付与し回復を促すのを助ける魔法。
『レナトゥス』が使えても他者に身体強化を付与できない人が使うのならば意味がない。
ネスにも同じ処置をしてノルダは三人を集合させる。
「では、今から特訓内容を伝えます!」
三人の顔を見るとあまり良い顔をしていない。
「そんなに負けたのが悔しかったかな?」
「想像以上の実力の差に驚いてるだけです」
エリアは暗い顔で言う。
それも確かだが、ここまでボロ負けをしたことがなかったエリアは凄い無力感を感じていた。
ネスとシェニーも同様の理由だろう、暗い顔をしている。
「まあまあ! 僕が強いだけだから落ち込まないで!」
その言葉にネスとシェニー、エリアも珍しくムッとするが、敗者に口無し、何も言い返せなかった。
「あーじゃあまず! みんなの良いところを言います! まずエリア全てが平均的にできているからいいね! 次ネス、実戦慣れしてるから戦闘センスがいい! 現に僕の刀を結構防いでた! えーと次にシェニー、魔術の対応力が凄い! 多分この三人で一番強い! かな...…?」
あまりにも下手くそな褒め方にさらに気を落とす三人。
(あ……)
「えーと、はい! 特訓内容言いますよー」
ノルダは諦めて、無理矢理話を進める。
「まず一つ! 一ヶ月毎日僕と飽きるまで戦ってもらいます! 次にニつ目戦うときは魔術を使うのを一切禁止します!」
「ま、魔術禁止!? 俺魔法使えねぇぞ……」
「私魔術を使って中距離で戦うスタイルなんだけど」
ネスとシェニーは困った声を出す。
「そうだよー、魔術禁止、みんな基礎魔法の身体強化がなってなさすぎる」
ノルダはシェニーに指を指す。
「シェニー、中距離で戦うからといって近距離でも戦えないと近づかれたら終わりだよ、さっきの戦いだってそう、近づかれたら終わりなんて戦い方はすぐに死にます」
そう言うと次にネスを指さす。
「ネス、キミは魔術に頼りすぎだ、一見身体強化を使っている様に見えるが、ずっと魔術で身体能力を向上させてるだけ、魔法が使えない人間なんていない、ましてや基礎魔法なんて魔術に頼ってるから魔法が使えないだけで絶対に使えるはず、だから強制的に魔法を使うようにさせます」
ネスは図星を突かれる。
「それにみんな武器に身体強化……じゃめんどくさいな、強化付与してる? 身体強化の応用! 強化付与をしないと斬れるものも斬れなくなるよ」
「してはいるんですけど、戦ってる最中に意識がそれて強化付与が途切れちゃうんです」
エリアが落ち込んでいる声で言う。
「そう! そこで三つ目」
ノルダは三人に木の枝を渡す。
「これは?」
「戦う時は木の枝で戦ってもらいます、折れないようにちゃんと強化付与をしてください、もちろん僕も戦う時は木の枝を使うよ、最後に四つ目、これは特にエリアとシェニー向けてかな、まぁネスにも関係するけど、魔術と向き合ってもらいます、これが強くなる一番の近道かな?」
三人は頭に?を浮かべる。
「じゃあシェニー、キミなら詳しいでしょ、魔術とは何?」
ノルダはシェニーに質問する。
「魔術とは、一定量の魔力を持った人がたまに持つ才能?特異体質みたいなものかな?」
「そう! ならシェニーは自分の魔術をどう理解してる?」
「えーと、草や木を自分の魔力で作り出す魔術かな?」
「それは本当かな?」
「どういうこと?」
「魔術は三歳ごろ突如として理解する自分の才能とされてるけど、それが本当に自分の才能の全てかなってこと、理解が深まれば新しい使い方を思いつくかもしれない、現に同じ魔術でも理解の仕方が違い使い方が違うと異なった魔術に見える例もあるし、理解の仕方が同じでも使い方が違う魔術の例もある、なので自分の魔術と向き合って理解をより深め、より強い使い方を模索してもらおうと思います! 毎日自分魔術でこれができるかもとかこんな魔術かもを具体的によく考えてもらおうかと思います、このままじゃネスはさておきシェニーは対応力はあってもあの巨人を出して質量で潰すしか効果的な攻撃はなさそうだし、エリアだってただ身体強化の延長線上の魔術に過ぎない、どっちらも強い敵を相手にするときの有効打に欠ける、っとこれが一ヶ月の特訓内容です!じゃあこれから張り切っていきましょー!!! おー!!!」
ノルダ一人だけが拳を突き上げ声を出す。
三人は今、自分の課題に心を沈めつつも、真剣にどうすれば自分の課題を克服できるかを考えていた。
何かを思い出したのかノルダはアッとなり一言口にする。
「あ、僕の家に狭いけど寝れる場所作ったから」
真剣に考えていたが三人は固まる。
何を言ったか理解ができなかったが、遅れて頭の整理がついた。
つまり。
(野宿じゃなくなる?)
「やったぁぁぁ!!!!」
さっきまでの空気は吹き飛び三人嬉しすぎて飛び上がるのであった。




