16 ただ圧倒的力
「これでおしまいかい?」
余裕綽々に枝で肩をトントンしながら立っている。
三人は負けじと立ち上がる。
「腰抜かしてんじゃねぇよ」
「う、うるさい! そんなことよりあの魔族を倒した時みたいにやるよ!」
「あれをやるんだね?」
「そう!」
「頼んだぞ!」
三人の意思が合致する。
シェニーは草木を使い何かを作り出している。
「お? やる気だね、よし、その作戦乗ってあげるよ」
相変わらず余裕綽々で突っ立っているノルダ。
「一発ぶち込んでやるよ、『一意雷身』」
ネスの足を中心にものすごい電気が流れ、電気が空を走りだす。
「おぉ、まだそんな良い魔術があったんだね」
「『閃光』『光落』」
ノルダがネスの魔術を見ているうちに一瞬で近づき黄色く光る剣を振り下ろす。
ノルダは何の問題もないように木の枝を持った左手でその剣を受け止める。
すかさずノルダは右手でエリアの腕を掴む。
(今だ!!)
両手が塞がったノルダを見て隙だと思いものすごい速さで近づいてきたネスに、右手で掴んでいたエリアを持ち上げてぶつける。
ドンッ!!!
そのまま持っていたエリアを投げ飛ばし、起き上がるネスに木の枝で追い討ちをかける。
ネスはなんとか体勢を立て直し攻撃を防ぐ。
カンッカンッ!!
だがネスは防戦一方の戦いを強いられる。
なんとか隙を見つけて反撃をしたいが、その隙が見つからない。
ノルダの様子を見る限りまだまだ余裕のある感じで攻撃を繰り出している。
(化け物が……俺が反撃する間が一個もねぇ、しかもこいつまだ遊んでやがんのか? うぜぇな)
「そろそろみんなの課題も見えてきたかな」
そう言いネスの腹を蹴り飛ばす。
投げ飛ばされていたエリアが後ろから攻撃を仕掛ける。
「『光落』」
エリアの黄色く光る剣がノルダの背中をめがけて今にも振り下ろされそうになっている。
「『魔力障壁』」
ノルダは振り上げられたエリアの腕を振り下ろせないように魔力障壁をエリアの肘あたりに展開する。
魔力障壁が腕を振り下ろす障害となる。
魔力障壁は魔力による攻撃には強いが、物理にはめっぽう弱いという特徴がある。
だがある程度の弱い物理攻撃は防ぐことができる。
この場合エリアの腕は最大限振り上げられ、振り下ろそうとする瞬間に肘に魔力障壁を展開されたので魔力障壁を壊すほどの物理的威力はない。
(魔力障壁!?)
エリアは今までに見たことのない魔力障壁の使い方に驚く。
エリアは腕が上がりきり腹部がガラ空きの隙だらけの状態になる。
ノルダはその腹部目掛けて木の枝で殴りつけ、エリアは地面に倒れる。
「さてと、準備は終わったかな? って早すぎたかな?」
シェニーは今だに草木で巨大な何かを作っている。
ノルダはただただ、シェニーの魔術が完成するのを待っている。
エリアとネスも起き上がるが戦いに参加する元気は残っていなかった。
少し経つと……。
「待たせたわね、もう完成よ!!」
そう告げたシェニーの後ろには異様な魔族と戦ったときに作った腕よりも大きな巨人の上半身を作り上げた。
「『神草木人』!!」
「いや〜立派なものを作るね」
「あなたが待ってくれたおかげよ!! 待ってくれたお礼にお返しよ!! いっけー!!!!」
シェニーがノルダに向かって拳を振ると、後ろの巨人も拳をノルダに向かって振る。
ノルダは木の枝を捨て腰に掛けていた刀に手を置く。
(え!?)
ノルダが木の枝一本で十分と言っていたのに急に枝を捨て刀を抜こうとしていることに驚く三人。
「さすがに木の枝じゃ受け止めきれないとわかったのかしら!!!」
「違うよ、これで一旦終わりかな〜て、だから僕の刀の切れ味でも見ておいてもらおうかなってね」
ノルダの目の前まで巨人の拳が迫るとノルダはグッと踏み込む。
その瞬間エリアはノルダの足に青い何かを纏う様子を見た気がした。
ノルダは腰を深く落とし拳めがけて抜刀する。
ズバンッ!!!
「んだこの音!!」
草木の巨人を切る音、いや、空を切る、ものすごい音が森中を鳴り響く。
その音に動物が、森が、地面が、泣き出すほどだった。
シェニーが後ろを振り返ると、草木でできた巨人は腕から裂けていき体が縦に真っ二つになった。
巨人の体だけではない、巨人を貫通して森も裂けていた。
圧倒的な力の差に三人は声もでなかった。
ノルダはすぐに刀を鞘に収める。
「よし、これできみたちの実力はなんとなくわかったし、じゃあさっそく特訓内容を伝えようかな!」
周りを見るとシェニー以外は蹴られ殴られた場所が痛くフラフラしていた。
「まずは治療か……」




