14 野宿、期待はずれのご飯、失言野郎
エリアたちはノルダの家が建てらている大木に横たわって寝ていた。
昨晩はシェニーは木の上のノルダの家に向かって全力の魔力弾を撃ち込むほど不機嫌だった。
「早く寝た方がいいよ〜」
そう嘲笑いながらノルダは魔力障壁で軽々と魔力弾を防ぎ、ますますシェニーの機嫌を損ね、エリアとネスはシェニーを落ち着かせるのに。
「ほら僕のご飯あげるから」
「え、えっとー面白い魔法とかねえのか? 教えてくれよ」
と一晩中シェニーのご機嫌取りにエリアとネスは疲れ果て、シェニーは怒り疲れて結果三人は野宿とか関係なしに爆睡だった。
「おはよー」
その声を聞きエリアが目を開けると泣いた狐の面をつけたノルダが顔を覗き込んでいた。
「昨日はよく眠れたかな?」
「はい……」
ノルダののんきな声色の問いかけにエリアは眠い目を擦りながら答える。
「おはようございます」
ノルダの後ろから声がする。
「おはよーシェニー」
ノルダはひょうひょうとした声で答え返す。
「言いたいことがあるんですけど」
「まあまあ、ご飯食べながら聞いてあげるから、エリア、ネスを起こしに行って」
ノルダはシェニーをあしらってご飯の支度をしに家に戻っていく。
そのノルダを見て静かに拳を握り込むシェニー。
怒りを募らせてるであろうシェニーを置いてエリアはその間にネスを起こしにいく。
エリアがネスを起こしてノルダの方を見ると、大きな木の下に家から持ってきたであろう一つの大きな机と四つの椅子が準備されていた。
「どう? この朝ごはんたち」
ノルダは自信満々に机の上に鳥の丸焼きと白ご飯を出してくる。
「なによこのご飯……保存食とかと同等のシンプルさ……べつに大したものじゃない!!」
シェニーが出された二品に指を差し怒鳴る。
確かに料理をどのように定義するかは人それぞれだが、鳥の丸焼きと白ご飯これは料理なのか……。
「えぇーせっかく腕によりをかけて作ったのに」
「昨日予定通りだったらリベルについて、宿に泊まれて、ちゃんとした料理を食べれる予定だったんだよ! それが!? エリアがあんたの特訓を受けるって言ったおかげで野宿させられるし、ご飯の一つも出されないし!! で? 結局出されたご飯がこれ!?」
エリアはその言葉を聞き申し訳なさそうに顔を埋める。
「まあいいじゃねぇか、こういうシンプルなのが一番うめぇんだよ」
昨日からずっとイライラしているシェニーを見飽きていたネスはのうのうと出されたご飯を食べていた。
「まあまあそうカッカせず! ご飯食べたら約束していた特訓だよ! 絶対に後悔させないからさ!」
ノルダも呑気な声で返す。
シェニーも昨日から怒り疲れたのか溜息をつきながら黙々とご飯を食べ始める。
そして四人が朝ごはんを食べ終わると。
「じゃあそろそろ特訓だね!」
そう言いながらノルダは立ち上がる。
「そういえば期間を言ってなかったね、期間は〜、一ヶ月! とりあえず一ヶ月で上級魔族を一人で倒せるぐらいにしてあげよう!」
「一ヶ月!?」
机を叩きながらシェニーが驚いて声を上げる。
「そんなにすぐに強くなれるわけないでしょ~それに一ヶ月なんて相当短いよ」
「長いよ! 私たち仮面の魔人だけじゃなくてエリアの妹も探さないといけないの! こんなところでぐずぐずしてられないの! 魔族と魔人族の情報も集めないと!」
「そうなのエリア?」
そう隣に座っているエリアに尋ねるノルダ。
「はい、でも」
「そうだよねー、上級魔族に手こずっているようじゃ目的の魔人を見つけたとて絶対に倒せない、それに、心のどこかでは思ってたりしない? 六年前に魔人に拐われた妹なんて生きてるわけないとか、妹さんが死んでるなら、妹さんを探すという謎の時間制限付きの目的なんてなくなるでしょ、そうなればあとは仮面の魔人を倒すだけ、それに魔族と魔人族の情報集めなんてリベルでもできるし、そうなればほら一ヶ月なんて短いでしょ、なんなら二ヶ月でも三ヶ月でも……」
とノルダは言っていると。
「テメェ!!」
「ネス!!」
ネスは怒りの声を上げて対面の机を乗り上げてノルダの言葉を遮り本気でノルダに殴りかかる。
その拳をノルダは片手で受け止める。
「ん? どうしたんだい急に怒って? シェニーのが伝染った?」
「そうじゃねぇだろ、テメェよくもそう気軽に人の妹はもう死んでるなんてことが言えるな!?」
と何が問題だったのか気づいてない様子のノルダにますます腹を立てるネス。
だがそのネスの言葉に半笑い声でこう返す。
「じゃあネスは魔人に拐われた妹が六年間も生きていれると思うかい?」
「生きてr」
「本当に本心から生きていると思ってるのかい?」
「それは……」
ネスは言葉を詰まらせる。
絶対にこの場で言葉を詰まらせてはいけないが、ネスは初めてエリアの旅の目的を聞いた時心の中で思ってしまっていたのだ、六年前に拐われた妹を探すなんて馬鹿げていると...。
それに妹のことだけじゃない、そもそも魔人を倒すこと自体、不可能とまで思ってしまっていた。
ノルダの言っていることは決して間違っていない世間一般的に考えたらノルダの方が正しい考え方だ。
殴りかかった拳を片手で握られ言葉を詰まらせているネスの肩を拳を収めてとエリアがポンとたたく。
「大丈夫だよネス、それにシェニーありがとう、ノルダさん妹は生きています!確かにノルダさんの言っていることは概ね正しいというか正統な考えだと思いますですが、僕は妹が拐われてから六年間、妹が死んでる可能性なんて考えたことはありません! なのでそんなことは言わないでください、だけどこのままじゃノルダさんの言う通り、もう一つの目的の魔人を僕が絶対に倒せないのも事実です、そんな僕を一ヶ月で上級魔族を一人で倒せるぐらい強くしてもらえるなら短いものです! なので改めてよろしくお願いします!」
エリアは椅子から立ち上がり真剣な声でそう言うと深々と頭を下げる。
その真剣な姿にノルダは何かを見る。
「ごめんエリア、それにネス、僕のさっきの発言はいき過ぎていた、エリアの言葉と僕のさっきの発言に免じて僕も妹さんと魔人探し手伝うよ」
ノルダは、頭を上げて、と手でジェスチャーをしている。
「そういえば妹さんの特徴を聞いてなかったね、妹さんはどんな感じなの?」
「妹は肩ぐらの長さの茶色い髪で、元気いっぱいで、黒く光る魔術を使えました」
ノルダは少し考えた後に言う。
「ごめんだけど知らないね」
「そうですか」
ノルダは手を思いっきり叩いて空気を変える。
「よし! 気を落とさずさっそく特訓を始めようか!」
「お前のせいだよ」
ネスとシェニーはボソッと呟く。




