12 狐の面の男
行く手の森から一体の上級魔族が出てきた。
屈強な体に三メートルほどの緑っぽい体。
身構える三人。
「また!? 最悪だよ!」
「おいこれ前の奴とは違って本物のスターロだよな……」
「どうする? 戦う、逃げる?」
さっきまでほのぼのした森を歩いていたのにこの急な変貌っぷりに動揺する三人。
背中に寒気が走る。
「戦うよ、上級魔族だけど、この前のやつよりは魔力量から見るに弱いはず! あれを倒せたならスターロも倒せるはずよ、いつも通り私が動きを止めるからその隙に」
シェニーがスターロの動きを止めるため『薔薇縛』を準備していると、エリアたちの後ろから仮面をつけ黒い羽織を着た男が近づいてくる。
(ん……?)
シェニーはその光景に思わず二度見する
「う、嘘でしょ! あれ! エリアが言ってた仮面の魔人とかじゃないよね……」
「いや、違う……けど……」
「違うって言ってもあれが魔人族なら戦うとかの話じゃねぇぞ……」
(もし、あの男があの仮面の魔人の仲間である可能性が少しでもあるなら、ここで倒して情報をはかせる!)
ネスとシェニーがこの状況におびえる中エリアはそんなことを考え頭に血が上っていた。
「僕が後ろの奴を相手する、その隙に二人は走って逃げて!」
その一言をはき捨てエリアは一目散に仮面の男の元へと走り出す。
「おい! エリア! あいつっ! どうするよシェニー! スターロこっちに来たぞ!」
「もお! 二人でスターロを何とかするよ! エリアはその後!!」
ネスとシェニーは仕方なくスターロとの戦闘を始める。
エリアは剣を構えて大きく踏み込む。
「『閃光』」
エリアはすごい速さで仮面の男へ近づき剣を振るう。
「な!?」
「ん!? これは、どういうこと?」
仮面の男はそう言い驚きながらも腰にかけていた刀を抜いて軽々とエリアの剣を受け止める。
(う……うそ? 戦闘の準備なんてさっきまでしてなかったはずだ!! なのに止められた……それにいつ剣を抜いたんだ?)
「お前仮面の魔人の仲間だろ! 仮面の魔人はどこにいる!!」
(仮面の魔人?)
エリアは殺気立った声で仮面の男に質問する。
仮面の男は困った声で。
「んーなんか、勘違いかな? ごめんね」
そう言いながらエリアの剣を軽く弾くとそのままエリアを置いて仮面の男は刀を持ってネスとシェニーの元へと歩いていく。
「そこの二人、ちょっと避けて」
スターロと戦っていた二人はその声を聞きすぐに後ろへとさがる。
「ありがと」
次の瞬間スターロは横に真っ二つになった。
刀が鞘から抜ける瞬間が見えなかった……。
それほど速い抜刀。
「え...」
「うそだろ!?」
「うそ!?」
そのわけのわからない光景に三人から驚きの声が漏れる。 強さが違うとはいえ三人が前苦労して倒した異様な魔族と匹敵するぐらいの上級魔族を一太刀で倒した。
「よし、なんかわかんないけどとりあえずその男の子の誤解を解こうかな」
さも上級魔族を一撃で倒したのが当然かのように振る舞いながら仮面の男は刀を腰にある鞘に納め三人の目の前に立つ。
「まずは自己紹介から、僕の名前はレヴィ、レヴィ・ノルダよろしく、あっ! 諸事情でこの仮面は外せないごめんね」
ノルダの外見は泣いている狐の面をして、後ろしかわからないが髪は黒く耳の真ん中ぐらいの髪の長さ、身長は170いかないぐらいだろう。
ノルダは自己紹介をしながら三人へと握手をしようと手を伸ばす。
三人はさっきの圧倒的な光景に困惑しつつ、シェニーがハッとすぐさま握手し自己紹介をする。
「私はシェニー・タンタスです」
「その耳を見た感じ聖人族かな?」
「は、はいそうです」
「じゃあ魔法が得意なんだね?」
「は、はい」
「で、そっちの子は……?」
ノルダはネスの方を見ながら言う。
「俺はネス・ウーピットです」
ネスもさっきの光景に圧倒され口の悪さも消えてしまう。
「人族だよね?」
「はい……」
「それで僕にいの一番に斬りかかってきた子は?」
「先ほどは本当に申し訳ございません! 僕はエリア・ブラグルと申します!」
そう言いながらエリアは深々と頭を下げる。
「あ、いや全然大丈夫だよ!!」
ノルダは手でエリアを慰める仕草をしながら言う。
「それでエリアくんはなんで僕に斬りかかってきたの?」
「それは……過去に少し似た魔人にあったことがありまして、それに状況が状況で囲まれてしまったのかと思い」
「ふーん似た魔人ね、にしても判断が早いねエリア君は、まぁいいでしょう! それより話は変わるけど君たちそんな良い魔術を持ってるのになんであの魔族に弱腰だったの?」
ニヤリと笑っているような声でそう言い、霧のように消えていく魔族を指さす。
「なんでって上級魔族のスターロですよ、あんなのに勝てるのはもっと強くて、もっと魔力量が多い人だけですよ」
シェニーがそう反論する。
「確かに強さの指標の一つに魔力量が多いかは重要だけどそれが全てじゃない、それに君たちは魔術を持ってるんだ魔力量は平均より多いはずだよ」
「そう言うが俺がさっきのあんたみたいに魔族を倒せる未来が見えねぇよ、シェニーこの人の魔力量はどんなもんなんだ?」
「ちょっとまってね? 失礼します『パーセムセロ』」
シェニーは空に魔方陣を描きそう唱える。
「どう? 僕の魔力量はどのくらいだい?」
仮面で顔はわからないが仮面の下はドヤ顔しているのであろう声でそう言う。
「え、え〜と私たちと同じくらいです」
「まじかよ」
ノルダは腰に手を当て斜め上を向いている。
三人はそのまさかの魔力量に驚く。
「これでわかったかな? 強さに魔力量は関係ない!! 君達でも僕ぐらい、いやそれはもったな……僕のちょい下ぐらいまでは強くなれる!! そこで君たちに良い提案をしよう!! 君たちを強くするためにこの僕が特訓してあげようっていう提案をね!!」
「え?」
「だから君たちを強くするために特訓してあげよかなって僕暇だし」
「え?」
(このひと)
(こいつ)
(こいつ)
(急に何言ってるんだ?)




