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輪廻伝記〜この世界を生きている〜  作者: 今日 虚無
獣人の国スルト編

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10 旅は道連れ

「やっとヘルトについたねー」


そう腕をぐーと伸ばしながらシェニーは言う。


「とりあえずここで解散だな、報酬は結局貰えるんだっけか?」


「もらえるよ、村長さんが言ってたでしょ、全額渡されそうになったから話して半分にしてもらったけど、ギムレの受付に行って討伐者カードを見せたら報酬の三分の一もらえると思う」


「そうか、じゃあ」


そう言いながらネスは手を上げる。


「依頼一緒に受けていただきありがとうございました」


エリアはそう言うと二人に深々と頭を下げる。


「ん? 何を言ってるのエリア、ネス? 次の依頼はどうする?」


「え?」


エリアは困惑の声を上げる。


「だって私たちもう仲間でしょ?」


「え?」


ネスも困惑の声を上げる。 


「エリア、あなたの旅に私を同行させて!」


そう言いながら手を合わせてお願いとかわいいポーズをシェニーはする。


「何言ってんだおまえ?」


本当に困惑してネスが聞く。


「だって暇なんだもん、ただ世界中を旅しているだけじゃ飽きも来るもんだよ、だからあなたの旅に私を同行させてエリア、お願い!! ネスもつけるから!!!」


「おい勝手に俺を巻き込むな!!!」


「あんたもお姉ちゃんから逃げてるだけでしょ? どうせ暇なんだから付き合いなさいよ」


「誰が暇だ!」


「二人ともほんとにいいの? 僕の旅の目的は妹を探すことと、仮面の魔人を倒すことだけど」


「魔人を倒すなんて、俺は絶対に行かないぞ」


「いいじゃん!! 魔人を倒せたら英雄よ!!!」


「あの魔族に手こずってるようじゃ先が思いやられるわ!!」


「これから三人で強くなればいいの!!」


(エリアなんとか言ってやれ! 迷惑だの、じゃまだの、なんか言え!!)


「本当に良いんですか?」


エリアは申し訳なさそうにだがやはり一人は心細かったのか嬉しそうに言う。


「エリア!? なんでお前も乗り気なんだ!?」


「喜んで! エリアの旅に同行させて!」


そう言いながらシェニーはエリアの手を握る。


「あらためて、私はシェニー・タンタスよろしく!」


「あらためて僕はエリア・ブラグルですよろしくお願いします!」


「おい俺は妹探しはともかく魔人を倒すのは絶対」


「ん? ネス何か言いたいことがあるの?」


とネスのほうをにらみながらシェニーは言う。


「俺はネス・ウーピットだよろしく……」  


しぶしぶネスはエリアの手を握る。


「じゃあまずはお金を貯めるとこから、明日から依頼を受けまくるよ!!!!」


「はい!」


「何で俺まで……」


楽しそうに話しているエリアとシェニー、その後ろでうなだれているネス、こうしてなんだかんだ? グダグダ? さらっと? エリアは旅する仲間が増えたのであった。


そらから数週間、個人個人で依頼を受けたり、三人で依頼を受けたりして旅をしてもある程度道中困らないほどにお金がたまっていた。

お金はすべてシェニーが管理している。

今、三人は泊っている宿のエリアの部屋に集まっている。

シェニーは椅子に座り、ネスはエリアのベットに座り、エリアは立っている。


「お金もある程度たまったし、明日の朝保存食を買ってヘルトを出ようかな」


そうシェニーが告げる。


「俺にも少しお金をくれよ」


少し落ち込みながらネスは言う。


「もちろん個人で使えるお金も少しだけど分けるよ、それでヘルトを出てどこに行くエリア?行くなら隣国の獣人の国、戦乱の国とも呼ばれるスルトか、私の故郷、聖人の国、魔法の国って呼ばれるフレイア、それか海を渡って竜人の国、前進の国と呼ばれるアングルボザ、この三つていうか、この三つと人の国ヘイムダルがこの世界のすべての国なんだけどね」


「俺はスルト(獣人の国)に一票だ」


ネスはスルトに行きたいと意見を出す。


「私は今エリアに聞いたんだけど?」


「あぁ?」


ネスとシェニーが睨み合う中エリアが言う。


「クラージュによって行くならどうなる?」


「そうなるとスルトになるかな」


「んじゃ、スルトに決定だな」


スルトに決定したと思い、ネスが自分の部屋に戻ろうと立ち上がったとき、エリアがもう一つ提案する。


「スルトの内情について何か情報はある? わがままだけど魔族の動きが活発なところにできれば行きたいかな、そういう場所の方が仮面の魔人の情報もあるかもだし、それ次第でクラージュによるのは諦めるから」


「うーんスルトに行ったのは五年前だから最近の情報はわかんないね、上級魔族が頻繁に出没しているらしいけど」


「んなこと言ったらどこでもそんな感じだろ、六年前のクラージュ侵攻から本当かウソかわからん情報が出回ってるし魔族だって八年前から発生率は上がってる、魔族、魔人族の情報について集めるならギムレ本部があるアングルボザ(竜人の国)のスプリーンに行ったほうがいいだろ」


「いやまぁそうなんだけど、それでも上級魔族の出没でヘルトへの商人の往来も減って経済的にも少し落ち込んでいるらしいよ、あと船は酔うし値段が高いし……」


船酔いのことを考えシェニーは口を押さえる。


「じゃあ結局みんなが行きたいのはスルトになるね」


「よしじゃあスルトに決定だ、明日も早いだろうから俺はもう寝るぞ」


「じゃあ私もおやすみ~」


そう言い二人は自分の部屋に帰っていった。


エリアは六年ぶりに帰る故郷に喜びもありながら崩壊した光景を見ることに恐怖していた。

そして次の日三人は荷物をまとめ宿を出る。

市場で保存食を買い、ヘルトを出てクラージュにつづく一本道を歩きだす。

この道は、神誕祭に行ったとき、あの日逃げたときに通った道、あの仮面の魔人と戦った道。

あの仮面の魔人が放った魔力弾が炸裂した場所はきれいに整備され、侵攻を受けた日に通った道とは別の道を歩いているように感じるほどだった。

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