9 初依頼 おわり
「とりあえず、あの魔族は倒したけどどうする?」
その言葉を聞きネスとシェニーはなにかに気がつく。
「ねぇ! いつのまに敬語じゃなくなってたの!?」
嬉しそうにシェニーが言う。
「ご、ごめんなさい!」
不意に出たタメ口に照れるエリアをいじるシェニー、それに乗っかるネス。
三人は一つの戦いを経て絆が深まっていた。
「おちょくるのもここまでにして、エリアの言った通り、とりあえずどうするよ?俺とエリアはこのまま調査を続けれる体力はもうねぇぞ」
「もういいよ、この依頼は諦めることにする、早く帰って村長に報告しよう、少なくなるかもだけど報酬はもらえるらしいし」
シェニーが提案する。
「本当にいいの? 次の日にもう一回調査するっていう手もあるけど」
「いいや、この依頼は私たちでなんとかできる依頼じゃない、もっと上の討伐者か騎士団の案件よ、明らかにこの森の状況が異常過ぎる、森での下級魔族の大量発生の原因調査がなによ? 見たこともない上級魔族の出現、それに大量発生している下級魔族もいないし、これは想像よりも異常事態よ」
そうシェニーは言いながら来た道を引き返して行く。
「そういえばエリア、あの魔族の腕を半分に斬った力はなんなんだったんだ?」
エリアと肩を組んで歩いているネスが話しかける。
「それが、僕にもわからないんだ、あの時頭の中で声がして……そこからあまり覚えていないんだよ、だけど今回で自分の実力がよくわかった……もっと強くならないとあの魔人を倒すことができないってことがよく……」
「そうだね、もっと強くならないとねー」
肩を組んで歩いている二人の前をのうのうと歩くシェニーが言う。
「てめぇも手伝えよ!」
「手伝う必要なんてないじゃん、あなたたち二人で十分歩けてるんだから」
そう言いながら後ろを歩いている二人へと手を振る。
「あの魔族はそもそもなんだったんだろう」
「さぁな、ただ馬鹿みたいに強かった、それしかわからねぇ」
「もしかしたら新種発見で名前をつけれるかもよ」
「あんなのが世界中で発生してたなら絶望だな、突然変異ってことを祈るよ」
そんなこんな話をしているとお昼過ぎに村についた。村に帰っている途中も大量発生しているであろう下級魔族に遭遇することはなかった。
村に帰ると、村長は余りにも早い帰還に驚きつつ怪我をしていたエリアとネスをすぐに治療するように手配してくれた。
その間シェニーは森で起こったことを話し村長は寛大な心で依頼書の記載通りの報酬を支払おうとしたがシェニーの善意が働き半分でと話がついた。どうやらこの依頼は騎士団と高ランクの討伐者に依頼するらしい。
二日ほど休みエリアとネスは回復し、三人はヘルトに帰って行った。
その後依頼を受けたのは下級魔族の大量発生、未知の魔族の出現と依頼報酬に惹かれた高ランクの討伐者たちだった。その討伐者が森の調査に出たところ、帰ってくることは無かった。
それを聞きへルトの騎士団が森の調査に行ったところ、森になんの異常も見つけることができなかった。
ただ見つかったのは森の中に何者かによって作られた広場で普段森にはいないはずの生き物と討伐者たちが無惨に殺されている現場だけだった。
―異様な魔族を三人が討伐し終わった後の森―
「ペットちゃ〜ん、ご飯持ってきたよ〜」
そう言いながら半殺しにした生き物たちを大きな黒い手で掴んでいる全身を黒い何かで覆った黒髪の少女が森の広場を歩いていた。
「あれ? そういえばあの子の魔力を感じないや、もしかしてやられちゃった? えー悲しいなー、このご飯たちはどうしようかな」
そう悲しそうな声で独り言を言っていると村の方の森から討伐者たいの声がしてきた。
「あいつらがやったのかな? まぁどっちでもいいや、この悲しい気持ちをあの人たちに解っても〜らお」




