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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その7~結婚式前日

作者: 天海樹

6月4日土曜日午後4時。

男は友人が昼間開いてくれたバチェラーパーティーの帰り道、

千鳥足で歩いていたところ何者かによって財布を奪われそうになり、

揉み合いになって殺された。


男は気がつくと自分の部屋にいた。

「死んだよな、オレ」

スマホを見ると日付は5月16日の午後4時32分だった。

「 えー!」

混乱した。

「過去に戻った?」

脳みそを振り絞ってみた。

「タ、タイムなんとかってやつ?」

しばらく考えてから、叫んだ。

「フザケんなよ!

 やっと大喧嘩を乗り越え結婚式前日までこぎ着けたのにー」

現在を変えたくないのに、なぜか過去に戻ってしまった男。

変えないように過ごすのはほぼ不可能。


男は大きくため息をついた。

「アレって、確かそれぞれ法則があったよな。

 きっかけとか、戻る日数とか」

考えてみてもサンプル1回じゃ参考にならない。

「もう一回死んでみるか…

 でもこれで死んだらただの自殺だよな…

 ま、レイと結婚できないくらいなら死んだほうがマシか」。


次に死んだあと気がつくと会社にいた。

5月17日午後5時10分だ。

「始めが約3週間前だろ…次が1日…わかるかー!」

しかし、男は死ぬことがきっかけということだけはわかった。

「こうなれば何度だって死んでやる。

 でも、人目がつくようだと大事になっちまうなぁ」

仕方なく深夜になるまで待った。

夜中2時を過ぎた頃、男はトラック目掛けて飛び込んだ。


辺りは真っ暗だった。

「時間帯は恐らく変わらないんだな」

近くのコンビニで日付を確認すると、

6月2日だった。

「おしーっ!」

思わず叫んだ。

「16日、17日、2日…午後4時、午後5時、午前2時…

 時間と日にち?? わかんねー!」

規則性が掴めない以上、

どうやったら戻れるかわからない。

どっと疲れが出てその場で動かなくなった。

午前5時を回っていた。


このまま過ごせばいずれ4日にはなるが、

「6月3日の大喧嘩、絶対乗り切る自信ねー。

 こうなれば戻れるまで死んで死んで死にまくるか!」

そう言って、次にきたダンプに飛び込んだ。

「さあ、どうよ」

駐車場からにコンビニ店内の時計を見ると、

6月4日午前5時55分だった。

「おっしゃー! もしかしたら時間と日にち?」

雄たけびを上げたその瞬間だった。

ウィーン!と大きなエンジン音とともに

車が勢いよくバックして、

あっという間に店のウインドウに突っ込んだ。

老人によるブレーキとアクセルの踏み間違いだった。

車の真後ろにいた男は即死。

午前6時を回っていた。

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