命より大切なもの
僕は手術台の上で眠りから覚めました。
転生して、こちらの世界で目を覚ました時よりも、最悪の気分。
確かに命は助かった。
だけど、もしかしたら僕は命より大切なものを失ったのかもしれない。
僕は股間に手を当ててみました。
「ああああああ」
転生前も、転生後もあった自分の大切なものがありません。
どうしてこうなった。
普通、転生して女の子になるのなら、転生した時だよね⁉
なんで、転生したあとなんだよ。
転生した後で、去勢されるものではないと思う。
しかも、なんで手術でなんだ⁉
トランスジェンダーの人に差別意識は何もないけど。
僕は心男の子なんです……。
「おめでとうございます」
隣を見ると、さっきのエルフとは違うエルフが隣に立っていた。
「なにがおめでとうなんですか?」
「危険な手術でしたが、なんとか乗り切ることが来ましたね」
そっか僕そんな危険な手術乗り越えたんだ……。
「って全然必要ない手術でしたよね⁉」
「この手術を乗り越えなければ、殺されるところでしたよ」
「そうですね……」
柔和な微笑みを向けてくるエルフ、さっきのエルフと比べると天使のようだ。
「でも、もう僕は、男の子になることは……」
一瞬だけ見えた僕の大切な『あれ』が、きれいなエルフの手で大切そうに綺麗な箱の中に収納される。
「安心してください。あなたの大切な部分は私が大切に冷凍保存しておきますね」
「本当ですか」
「本当ですよ。ちなみに、元に戻す手術をできるのも私だけです。よく覚えておいてくださいね」
「それってどういう……」
「うふふふ」
なんだろう。
さっきまで天使の微笑みに見えたのに今は、悪魔の笑みに見える。
この人に何かあれば、僕は男の子には戻れないってことは……。
大切な『息子』を人質に取られた⁉
伝えたいことはもう終わりといわんばかりに、
僕の大切な『あれ』をもって出て行くエルフ。
もう絶対僕の『あれ』を、僕の股間に戻す気はなさそうだった。
あのエルフも、さっきのエルフの正真正銘の仲間なんだな。
僕が絶望でうなだれていると、
入れ替わりに、僕を捕らえたエルフが入ってきた。
ノーモーションで、僕の服の腕をつかむと何かを打ち込んでくる。
チク。
「痛い……なんですかこれ?」
どう見ても注射器が僕の腕に打ち込まれていた。
「女性ホルモンだ!」
「うわぁああ。僕は体も女性になっちゃうぅうううう」
「安心しろ、子供はどうせ産めない」
「まだ、産める方がいいのに」
「ふう。これで安心だな」
「僕は、心は男なのに」
「だからだ! 交配はできないとはいえ、人間は、自分と同じような体の特徴を持つ種族に興奮しまくる変態。いちもつがなくなったとはいえ、安心できない。お前が私の体に興奮しないような処置だ」
「そんなぁ」
「首輪して、檻に一生閉じ込めてもいいぞ。変更するか? それならいいぞ!命だけって話だったからな」
「だれだよ。命だけは助けてくれっていったのは……」
はい。僕です。
だけど……だけど……、
人としての尊厳も助けてほしかった。
僕がうなだれていると、首にものすごい圧迫感が襲い掛かってきた。
ガチャン!
苦しい……。
かろうじて、息はできる。
なんだろう。
僕は首を確認すると、何かが僕の首を絞めている。
どうみても飼い犬がするような首輪だった。
「首輪はしないんじゃ?」
「なに言ってるんだ。檻には入れないだけでペットなんだから首輪はいるだろう」
「ペット⁉」
「もし何かあれば、首輪から毒が撃ち込まれる」
「毒⁉」
「安心しろ、恐ろしく苦しいだけで死なないやつにしたからな!」
「嘘ですよね……」
「ちなみにこれが毒が撃ち込まれるスイッチだ」
真っ赤な真ん丸のスイッチ。
ものすごく押しやすそうだった。
「あ、間違って押したらすまんな」
「そんなぁ」
「大丈夫! 命だけは助けてやるぞ!」
「うわぁああああああああん」
僕は命だけは助かりました。
本当に命だけでした。
ついに始まったエルフとの共同生活。
夢みたいですね。
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