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モンスター観察記録 スライム

 僕は、目を覚ました。


 プスっ。


「いた」


 僕が腕をみると、また注射が刺さっている。


「よし」


 満足げに頷く、ミネルさん。


 何にもよくない。

 打たれたのは、女性ホルモンだろう。


 ミネルさんは、そのまま朝食を作りに行ってしまった。


 僕は鏡の前に立ってみる。


 髪はそこまで長くないが、目元がクリっとしていてボーイッシュな愛くるしさがあった。

 肌もなんだか滑らかでしっとりしてきて、腰回りの肉付きが良くなってきている。

 

 前世は、何の特徴もない普通の男の子だったのに、


「なんか超絶美少女になってきてるんですけど」


 胸に手を当ててみる。


 ぷにん。


「ああ、なんていい触り心地……」


 男の子のときに触りたかった……。


 もうだめだ。

 あまり興奮しなくなってきている。


「女の人の体に興奮したところで、子供はつくれないって、本能がわかってきてるんだろうなぁ」


 精神過渡期。

 とはいえ、完全な女の子になることもないんだろう。

 女としても、子供を作れることはないから……。


 ミネルさんが朝食を持ってきて、僕に伝えてくる。


「今日はクックラの手伝いしてきてくれ」


「クックラさん?」


 僕は、蜘蛛の恐怖で青ざめた。


「安心しろ。クックラはもう、命や体を失うようなことをさせることはないから」


「なにか寄生させたりしないですよね」


「もう先客がいるから無理だな」


 僕は手の甲に生えた葉っぱを見る。


「ああ、先客がいなかったら、可能性があったんですね……」


 だとしたら、アルラウネでまだましだったかもしれない。

 少なくともこの子は、お腹が少しすきやすいぐらいで、痛いとか、苦しいとかは全くない。


 今はまだ……。


「とにかく頼んだぞ」


「はい……」


◇ ◇ ◇


 クックラさんの家につくと、

 僕は、動きやすい長袖の木綿の服を渡された。


 クックラさんは言う。


「スライムの絵を描きたいから、取り押さえるのを手伝ってほしい」


「取り押さえるですか?」


「そう。蜘蛛の糸は溶かされてしまうからね」


「それって、僕の体が……」


「人の体は一切溶かせないから安心して」 


「よかった」


「あと、君の右手のアルラウネも大丈夫、基本、生きてれば溶かされないよ」


 それは溶けて欲しかった。


 ただ、本当に僕の体のことを考えてくれているらしい。


「ただ間違って、スライムの核を傷つけると、僕らがミネルに殺されちゃうから、武器じゃなくても、金属の類は、身につけられないよ」


「わかりました」


 それは転生五分で身にしみている。

 僕は、装備を全部置いていくことにした。


◇ ◇ ◇


 僕らは、スライムがたくさんいるエリアにきた。


 つまり、僕がミネルさんに殺されかけた場所である。

 こうやって、思い出が増えていくんだね。


 辛いね。


 僕が物思いにふけっていると、クックラさんが言った。


「じゃあ、一匹、手で押さえ込んでくれる」


「はい。わかりました」


 僕は緑のスライムをあターゲットにした。


 なにも大変なことはない。


 僕は、人畜無害のスライムが逃げないように、押さえ込んだ。


「いいよ。そのまま動かないでね」


 力もないし、ちょっとめり込んでしまうけど、ゼリーに手を突っ込んでいる気分。


「ひんやりして、気持ちいい」 


 力もいらないし、すごく楽な仕事だ。


 右手が嫌がる気配があった。


「ああ、ごめん」


 右手の葉っぱがなんだか怒っている。

 どうやら溶かされないとはいえ、スライムに突っ込まれるのは嫌だったらしい。


「ん?」


 右手を見てみると、服の袖が短くなってきている。

 木綿って、死んだ植物か。


 って、スライムの食べ物じゃん!


「クックラさん。服が食べられています」


「そうだよ。木綿だからね」


 この人、わかってて僕に服渡してる!? 


 僕は、スライムから左手を抜こうとする。


「ちょ、ちょっと、とれないんだけど」


 僕は逃げようとすると、いつの間にか、他のスライムもまわりこまれていた。


 スライムは、おいしいのか、服をどんどん溶かしていっている。


「これまずいって」


 僕は、女の子なりたてなので、まだブラとかつけていない。

 つけていても溶けてしまうかもしれない。


「クックラさん、僕裸になってしまいます」


「ああ、大丈夫だよ。僕は人に欲情したりしないから」


「ならなんで、描くてを止めて助けてくれないんですか」


「君の絵は売れそうだからね。人は嫌いだけど、人の作ったものは欲しい時があるからね」


 もうスライムが僕の体を全身を覆っていた。

 僕は必死になって、局部を手で隠す。


 クックラさんは、その様子を楽しそうに絵に描いていた。


「うわぁああああん」


 僕は確かに命も体も失わなかったが、人としての尊厳を失った。


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