転生者は外来種
僕は、転生者だ。
前世では……まあ、不幸な目にあい死んでしまった。
運よく女神さまに拾われて、転生することができた。
よかったよかった。
まあ、生まれ変わったんだから、今度こそは幸せな人生を送れるように頑張っていこう。
女神様いわく、人々を苦しめる魔王を倒してほしいとのことだった。
さらにはチートスキルもくれた。
僕のスキルは『レベル爆速アップ』
どんな弱いモンスターでも、倒せば倒すだけレベルが上がるというもの。
女神様は、弱いスライム出現エリアに僕を、降臨させてくれた。
赤やら青やらのスライムがゆっくり移動している。
倒してくれと言っているようなものだ。
「楽勝楽勝」
僕は、強くなるためとにかく一番弱そうなスライムを倒そうとした。
スライムめがけて剣を振り下ろす。
その瞬間、世界は、ひっくり返り、大地にはりつけにされる。
「自然保護区のモンスターを狩ろうとするはいい度胸だな?」
僕は、踏みつけにされた。
見上げると僕を踏みつけにしていたのは、麗しき女性だった。
太陽の光にキスされて、宝石にように輝く髪。
朝露に潤された花びらのような柔らかさと輝きを持った肌。
芸術の本に載っている彫刻のような完璧に調和のとれた肢体。
何より特徴的なのは、微風にひくつく長い耳。
どうみてもエルフ。
綺麗なお姉さんに踏みつけられて、変態だったらご褒美ですが、僕はあいにく普通の青年。
殺意のこもった視線を向けられて、
恐怖しかない。
ここならば、魔族に襲われずに、安全にレベルアップができるでしょうと言っていた女神様。
エルフに襲われたんですが!?
どうなってますか?
「馬鹿みたいに、繁殖しまくる人間は、この俺が間引きしてやんよ!」
「ぼ、僕は転生者で……」
「転生者? 外来種か絶対駆除してやんよ!」
悪化した⁉
転生者を外来種扱い?
どうなってるの?
「僕は女神の加護を……」
「女神だぁ? あのゴミクズは、いつか絶対、滅ぼしてやる!」
あの女神様、女神の加護ある勇者と名乗れば、きっと、みんな優しくしてくれますって言っていたのに。
きっと?
あ、絶対下界とか碌に見てないタイプの神様だ……。
無邪気にやさしそうな女神様だと思って、
何も考えず『世界を救います』と首肯したさっきの自分を呪いたい。
「とりあえずは、まずは女神の手下の貴様からだな。自らの罪を悔やみ死ぬといい」
「スライム殺すだけで⁉」
「スライムがどれだけ生態系維持に寄与してると思ってるんだ。人間なんかよりどれだけ大切だとおもってるんだ。問答無用だ!」
「いやいやいや、まだ未遂ですよ」
何とか逃れようとするが、この人重すぎる。
なんでこんな華奢な人がと思っていたら、エルフの肩口から、頭が三角形の蛇が顔を出した。
胴体は明らかに僕の腕より太い。
あきらかに毒蛇と思われる蛇が、僕の首を狙ってくる。
「この毒蛇の毒はな。血管に入り込むと、人間の細胞を破壊しながら、全身に毒が回り、激痛を伴いながら死に至る」
転生五分で、地獄並みの苦しみにあうなんて。
それなら素直に地獄に直行させてくれたらまだよかったのに。
なんで生き返らせたんだあの女神。
完全に無駄死にじゃないか。
まだスライム殺戮未遂だから、情状酌量の余地が欲しい。
「い、命だけは助けてください!」
僕は精一杯叫んだ。
ダメもとだけど、折角生き返った命だ。
まだ生きたい。
「ああ? 命だけだと? 命だけか。まあ、それならいいか。よし! 生物的に死んだら、命だけは助けてやる」
「はい! じゃあ、それで」
勢いで言ってしまったものの、
生物的に死ぬとは?
生物的に死んでも命は助かる?
世界最大の矛盾を浴びて、僕はクエッションの塊になった。
「あ、あのう。生物的に死ぬとはなんですか?」
「去勢してもらう」
「え?」
僕は女の子になった。
戯れた動物:毒蛇
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