5話 吾輩はテイマー、武術家ではない。
ルカが気が付くと森の中だった。
バグかと思ったが目の前に【モンスターに見つからないように街へ行こう】
と文字が出現したためチュートリアルの続きなのだろうと考えなおした。
開始前にチュートリアルでレイスをテイムしていたことを思い出した。
「レイス召喚」
テイマーのスキル【召喚】を使用しレイスを呼び出すと、眼前には青白く燃えるようなオーラの塊が現れた。
そしてレイスは、スィーと木陰にスライド移動していく。
追いかけて触れてみると
「!!!???」
ドライアイスのような冷たさ、まともに触り続けることなど出来ない温度だった。
「つめたい!あなた冷たすぎです。」
「…」
何も言わないレイスだが、心なしかオーラに困った表情のような模様が見えるような気がする。
「チュートリアルでは考えずにテイムしてしまいましたが、果たしてあなたは強いのでしょうか」
『テイムモンスター:『レイス』のステータスを閲覧しますか』
「え、あ、はい。」
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名前:
種族:不死者
モンスター:レイス ♀
Lv.1
HP:5
MP:25
SP:5
筋力:0
耐久:0
器用:5
精神:50
理力:25
俊敏:5
信仰:0
ステータスポイント:50
スキルポイント:50
スキル:【不死】【神聖属性弱点】【陽光弱点】【光属性弱点】【浮遊】【ポルターガイスト】【憑依】【状態異常完全耐性】【月光強化】【闇属性耐性】【死霊属性耐性】
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「えと、スキルが私よりも多くないですか?」
「…」
何も言わないレイスだが、おろおろする様に右往左往している。
「なんだかかわいい…」
「!?」
呟きが聞こえたのか、レイスは青白い色から朱色のオーラに変化した。
しゃべらず表情もわからないが意外とコミュニケーションが取れそうだった。
「レイスちゃんの名前を決めないとですね。」
意外と可愛いため名前もしっかり考えようと思ったルカだったが、
「よし、貞子にしましょう。」
「!?」
ネーミングセンスがいささか欠けているのであった。
そんなちょっとしたイベントがあった後、街に向かおうとしたルカだったが
森を抜けた時に背後に貞子がいないことに気が付いた。
「え?」
見回すと森の切れ目で止まってしまっている。
「ん?あ!陽光弱点ですか!なるほど、どうしましょう。安パイは送還することですが、どうせなら一緒にいたいですし、憑依というのを行ったら問題ないのでしょうか」
結果から言えば問題なかった。
憑依先はルカ
ではなくルカの皮鎧だった。
「意外といけるものですね。この鎧は初期装備ですから弱いはずですが、貞子が憑依していると何か変わるのでしょうか。」
『装備を閲覧しますか?』
「はい。」
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頭:呪われた初心者の額あて 防御:10
胴:呪われた初心者の皮鎧 防御:10
腕:呪われた初心者の籠手 防御:10
脚:呪われた初心者の足甲 防御:10
武器:初心者テイマーの皮鞭
アクセサリー1:なし
アクセサリー2:なし
詳細
・呪われた初心者装備
合計防御力:40 +セットボーナス10 =50
この装備は呪われている
元は新品の初心者の皮鎧装備だったが、何かが憑りついたことによって呪われた。
知らずに装備してしまうと、装備者を締め付けながらエネルギーを吸収し殺す。
効果:【ポルターガイスト】【月光強化】【状態異常耐性】
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「えっと、初心者装備にしては強いですし、私が主人だったからかデメリットが存在しないじゃないですか。ですが、憑依は解除できるのでしょうか」
「…」
何となく出来ると言われた気がした。
ようやく街についたルカは、そのあしで観光を行うことにした。
チュートリアルでも見かけた噴水広場には人があふれている。
やはり新しいサーバーになったことで人が増えたのだろう。
「あの人込みに入るのは嫌なので少し遠回りして街を回りましょうか」
ルカは薬屋、武器屋、服屋と回り、現在は公園にいる。
市場で買ったサンドイッチをベンチで食べていると、老人に話しかけられた。
「そこの娘、お主は一週間ほど前に噴水前で独特な舞を行っていたな?」
「舞ですか?人違いでは?」
しかしルカには身に覚えがない。
「いいや違わない。あの時はたしかスーパーリンペイといったか?あの舞は見事であった。」
「ああ!あれは舞ではなく武術の型の1つです。」
「なんと!武術であったか!なるほど、では同業者じゃな。どれ、これからワシの道場に招待しよう。」
『【武術家 流派水龍拳の使い手ムサシの教え】
【ムサシの道場で手合わせ】
【奥義継承への試練】 が発生しました。』
「…え?」