小話 豪酒の悩み(なろう限定話)
小話なので短めになってます。
いつもと変わらず調剤室で薬の調合をしていると、突然プラトンがやってきた。
「いきなりすまんな、嬢ちゃん。小耳に挟んだんだが、みかん酒がそろそろ飲み頃なんだって?」
「……」
どこからそれを。
確かに、2か月ほど前に漬け込んだみかん酒がそろそろ飲み頃だ。テルーナ王国に飲酒の年齢制限は特になく、完全に個人の判断に委ねられている。そのため、明日の夜にでもみかん酒を飲んでみようと思っていたところだ。
自分一人で楽しむために漬け込んでいたみかん酒なのでそれほど量も多くない。誰かにあげるつもりはなかったのだが……。
「実はな、健康のために酒の量を最近は減らしてるんだ。だが嬢ちゃんの作る酒ならなんかこう、体に良さそうだろ? 酒としてカウントしないってことで飲みに来た!」
言っていることがむちゃくちゃなことに気が付いているのだろうか。満面の笑みを向けるプラトンにソルティアはため息をついた。常に温度を一定に保っている棚から熟成させたみかん酒を取り出す。
「おお! うまそうだな」
グラスに2人分を注ぐ。透き通った黄色をしていてとても綺麗だ。プラトンは氷で、自分は炭酸水で割る。少し甘みを足すためにはちみつを少々加えた。
「みかん酒は喉風邪に有効なんです。食欲不振や吐き気、胸焼けにも効果的ですが、飲みすぎには注意してくださいね。お酒は適量であれば薬になりますが、多量に摂取すればただの毒ですから」
プラトンは聞いているのか聞いていないのかわからない顔でうんうんとみかん酒を楽しんでいる。すると、勢いよく扉が開いた。
「やっほ~! ソルティアちゃん! プラトンいるかしらぁ~ん?……あらぁ? あらあららぁ? 美味しそうなものはっけぇ~ん!」
「げっ」
特殊部隊員のビアンナがプラトンを探しにやってきた。プラトンはビアンナを見て嫌な顔をして小声で俺以上に酒に目がないんだ、と教えてくれた。
「んん~! 良い香り~! ソルティアちゃん、私にも何かちょうだぁ~い! できれば甘めのやつぅ~」
なかなかに図々しいな。
「はあ……じゃあ」
そう言ってソルティアはいちごが漬けてある瓶を取り出した。2週間前に漬け込んだもので、こちらもそろそろ飲み頃なのだ。
「いちご酒です。美容効果が期待できるのでビアンナ隊員には丁度いいかと。むくみやシミに効果的で、腸の動きも整えてくれるんですよ」
いちごの赤色が抜け出たいちご酒は甘い香りを放っている。紅茶の風味付けとして加えたり、アイスクリームやヨーグルトと一緒に食べるのもおすすめだ。
「甘くておいしいぃ~! んん~! さいこおぉ~!」
ソルティアはご満悦の2人を見ながら、早く帰ってくれないかなと思っていたのだった。
お読みいただきありがとうございます!
今回の話で第1章~西の王国テルーナ編~が終了となります。
次話からは第2章です!詳しくは活動報告をご覧ください。
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