プロローグ 少女、狂い咲く
辺りは血の海。
蒼い炎で身を焼かれる者、道端に転がる人の形をした黒炭の何か。
ここに正気を保っている者は誰一人としていない。
「あははははははははは!気持ちいい!最っ高の気分だわ!」
蒼い炎の中、銀色の瞳を輝かせて狂気に満ちた少女は笑う
うっとりと、ただ、ただ、狂ったように
しっとりと、ただ、ただ、涙を流して
―――莫大で危険な魔力を持った少女は見事に狂い咲く
その瞳に映るのは蒼。
「な、ぜ………なぜ! なぜだああああッ!? ルティッ!」
少女の名前を呼ぶ愛する者の声も、少女を壊した金色の瞳を持つ古の魔法使いの笑い声も、少女の耳には届かない。
狂ったように笑い続ける少女の頭上には、どんな奇跡でも起こしてしまう魔力の木“魔力樹”が浮かび上がっている。太い幹には少女のような形をした何かが眠る。
「ああ、会いたかったよ……」
それを恍惚とした瞳で見上げる古の魔法使い。
古の魔法使いの悲しき想いが、過去が、最後の時代を生きる魔法使いと人間を壊していく。
誰が哀れで残酷な古の魔法使いを止められるのか。
誰が孤独に生きる壊れた少女を救えるのか。殺せるのか。