賢者と呼ばれた怪盗K 〜 二度目のタイムスリップ先はあの時代の本能寺だった
パチパチと火花が飛び散り、キンッとかち合う金属音、火矢、そして怒号が飛び交っていた。
(また時を超えたのね……今度はどこ?)
私は、とある怪盗の末裔だ。魔力を秘めるという宝玉を狙ったときに失敗した。妖しい光に包まれ、時を超えてしまったのだ。
タイムスリップした先には科学はなく、魔術が発達していた。私は、賢者と呼ばれるようになった。
宝玉に触れたことで、そのエネルギーを吸収し、私は魔法使いになってしまっていたのだ。
私は、戻る方法を何年も探していた。
そんなある日、再びまた時を超えてしまったのだ。
この時代も争いが絶えないのか。だが……ここはもしかすると…。
「女、何者だ? どこの間者だ?」
私が振り向くとそこには、面長で鼻の高いイケメンが正座していた。なぜか白装束にちょんまげ頭。脇差を畳の上においている。
「もしかして貴方、織田信長?」
「ならばどうする?」
そう言うと、その男は立ち上がり、スッと長い刀を抜いた。
(これ、戦国時代確定!)
「ここって、本能寺?」
「奇妙なことを言う女だ。記憶でも失ったか?」
遠くで、お屋形様〜と叫ぶ声や、探せ探せと怒鳴る声が聞こえる。そして火がゴウゴウと音を立てて、燃え広がっていた。
「ちょっと、時を超えてしまったのよね。人生五十年っていう時代かしら?」
「ほう? わしはもう五十までは生きられぬがな」
「いまは1582年?」
「は? 天正十年だが?」
「あ、そっか元号を使うんだ」
「つくづく妙な女だな。亡者か何かか? わしの最期の邪魔だ。成敗してくれよう」
そう言うと男は刀を構えた。
私は魔法で彼の動きを一瞬だけ封じた。
「な? 何をした? 化け物め!」
「やーね。私は怪盗Kよ。賢者とも呼ばれていたわ」
「何をわけのわからぬことを!」
「そんなことより貴方、もっと広い世界を見てみたくない?」
「南蛮のことを言うておるのか?」
「ヨーロッパのこと? まぁそうね」
「もう遅い。わしは討たれるのを待つ身。だが、討たせてなどやるものか」
そう言うと、男は持っていた刀を投げ捨て、畳においていた脇差を手に取った。
「もしかして自殺する気?」
「自分の最期は、わし自身で決める」
さすがに目の前で、腹を切られるのはちょっと…。
「わかったわ。私が貴方を盗んであげる」
「は? 何を…」
「行き先は、オランダあたりでいい?」
私は、その男を連れ、燃え盛る寺からヨーロッパへとワープした。
そう、だから信長公の遺体は、本能寺で見つからなかったのだ。




