8.祝祭2
少し加筆しました。6/24 22:15
赤や青、黄色、緑の淡い光が暗くなった広場を照らしている。
「ヘリオスほら。私たちが置いたやつ。きれいでしょ」
セレネが俺の顔をのぞき込む。
俺たちが置いた羊皮紙の筒の中に魔石を入れているらしい。取り出した魔獣の属性によって輝く色が違うそうだ。
魔石は貴重なので普段は灯りに使うことはないそうだが、1年に1度の祝祭では特別らしい。
「魔法師団の人たちが魔石に少し魔力を送り込んで光らせてるんだよ」
魔力を送り込みすぎても割れるので少ししか魔力を送り込めないけれどすぐに消えるので何度も見回りして魔力をこめているそうだ。
舞台にも魔石のランプが置かれだした。
「今からキロンおじいさまがお話をされます。魔防壁を維持する魔導士を除いて残りの魔導士の方々も舞台に上がりますよ」
アキレア王女が教えてくれた。
設置が終わるとローブにとんがり帽子の人たちが舞台に上がり始めた。宮廷魔導士たちだそうだ。
中央を開けて、左右に6人ずつの魔導士が並んだ。少し経ってゆっくりとキロン宮廷魔導士長が中央にやってきた。
左右の魔導士がいっせいに炎や雷のような魔法を上に放ち、空が光り、雲が見える。
後ろの観客たちから声が上がる。
中央の魔導士長が真上に光を放つと皆が静まり左右の魔導士が淡い光を放ち続ける。
キロン魔導士長はゆっくりと声に出す。
「大事なことだから子どもたちはしっかりと覚えなさい」
『最初の世界は黄金時代。
不老長寿だった最初の人間たちは、神の一柱から知識を賜った。
それに怒った神々と人間に知識を与えることに賛同した神々の間に争いが起こった。
巻き込まれ人々は全て消えていなくなった。
そして、神々の半分もお隠れになった』
『二番目の世界は、銀の時代。
不老長寿ではなくなったが飢えることもない時代だった。
しかし短い寿命が決められた人々は、子孫を残すことに貪欲になり淫蕩になった。
それで争いが起こり神々の怒りに触れて全てが遠くへ流された。
原初の神々も遠くへと消えた』
『三番目の世界は、土の時代。
残った神々から土によって人々は創造された。
しかし、今までの人々よりも明らかに劣った存在だった。
神の姿に似せてつくられた人々は怠惰で傲慢だった。
見かねた神々によって全てが消された。
土から人々をつくった神々が消えた』
『四番目の世界は、半神の時代。
食すものは、自ら手に入れないといけなくなった人々。
神々の力を受け継いだ英雄たちが導いて平和に暮らしていた。
けれど欲深い人々によって英雄たちが戻ってこられない遠くへと追いやられた。
争いが始まった。
怒った神々によって人々は光に焼かれた。
子が遠くへ消えた神々は嘆き悲しみ自らも消えた』
『五番目の世界は、鉄の時代。
人々の欲と争いに嘆いた大空の神によって光を奪われた。
凍え、植物が死に絶え、動物たちも死に絶え、人々も死んだ。
光を奪われた宙の神々もお隠れになった』
『私たちが生きる六番目の世界は、魔法の時代。
太陽神さまは、罪なき人々が死を繰り返すことに憐れんだ。
自らの体を燃やし尽くして生じた魔力で人々と動植物を創造した。
そして、太陽神さまは再生した。
この世界に唯一残った一柱の太陽神さまが私たちを見守ってくださっている』
淡い光を魔導士達は消した。
静寂がきて、羊皮紙にくるまれた魔石の光が淡く地面や広場の周りの木々を照らしている。
赤や青、黄色に緑の光が夜を照らし続け吸い込まれそうになる。